休題
いや、それより――私は思った疑問を口にする。
「あの……その的当てっていうのは的に何をぶつけるんですか? 鼻から出たうどんですか? それとも賞味期限の切れたハミガキ粉ですか?」
「いえ、流石にその二つは用意するのが難しいので代わりに魔法をぶつけてもらいます」
と真っ直ぐな瞳で答える竹中。に対しドク口。
「いや……なんか用意するのが難しくなかったらその二つにするみたいな口振りは何なんですかね? どう考えたって魔法学校の的当てなら魔法をぶつけるに決まってるでしょう?」
「まあ確かにそうなんですけど……でも魔法をぶつける的の方は鼻から出たそばですよ?」
「うどんじゃなくてそばだったら簡単に用意出来るって事ですかっ!?」
と鼻からスパゲッティが出てきそうな勢いで驚くドク口だが、こいつの場合ラーメンを食ってても鼻からスパゲッティを出しそうだから困る。いや、良く考えれば別に賞味期限が切れていなければ困りはしないか……。
それはそれとして私は。
「なるほど。なら面白そうなので的当ては見学しに行きますけど、私はテストはパスさせてもらいます」
『パス?』
揃って頭に疑問符を浮かべるドク口と竹中に私は一つ頷き。
「はい。つまり魔法学校には入学しないという事です」
「ぇぇぇえええっ! ノ、ノレさん入学しないんですかっ? な、なんで?」
そんなに驚く事かドク口? まあいい。
「いやまあ昨日今日と過ごして私に魔法は必要ないかな……と。働かないし、部屋からあまり出る予定のない私からすればコレ腐さえあれば十分で酢マホまではいらない。コレ腐ならライセンスも必要ない……という判断です」
「なるほど。適切な判断ですね?」
と微笑みかけてくる竹中だが、ドク口は何かが不服らしく。
「え〜……異世界の魔法学園で的当てですよ? 普通入学する場面じゃないですか……」
「いやだからドク口さんは入学すれば良いじゃないですか。私はしないというだけの話です。それに的当てが面白そうなのは十分理解しているので見学だけはすると言っているのです」
そう――こういうのは高みの見物が一番面白い。勝ち組の負け犬である私には最もお似合いのポジションだ。
――という話を総合すると。
「なので私は普通のスマフォだけ買えば良いかなと……まあ、今のところ連絡をとる相手も竹中さんくらいしかいないから急いで今日買う必要もないんでしょうけど」
と物凄い遠回りをした気がするが、話がようやくここに帰結する――が。
「いやいやいや、私もいるじゃないですか……」
溜息交じりにヤレヤレといった感じで呟いたのはドク口だが。
「えっ?」
「エッ?」
「ゑっ?」
「ヱッ?」
「㋓ッ?」
「㋽ッ?」
「え゛っ?」
私は思わずドク口を二度見した。
「な、なんでそんなワザとらしく七度見もするんですかっ!?」
失礼。どうやら二度見のつもりが実際には七度見していたらしい。これからは「七色の二度見」という特技を特技欄に加えておくとしよう。
しかしそんな話はどうでもいいとして。
「いや、だっておかしくないですか? なんで私が自分を殺しに来た死神と連絡先を交換しなきゃいけないんですか? 普通自分を殺しに来た死神と連絡先交換なんて素っ裸で死神と名刺交換するよりも自殺行為ですよ?」
「それ素っ裸になっただけでなんの比較にもなってないんですけどっ!! 『死神と連絡先交換なんてただの自殺行為ですよ?』だけでいいじゃないですか!」
ゑ゛っ? そうなのっ? 裸かどうかって結構死活問題じゃない? 生存確率を上げるためにはラッキースケベが起きる最低条件の素っ裸の方が良くない?
「……」
私はアゴに手を当て考える。
いや、でもそうか……考えようによっては死神を放置しておくより、いつでも連絡がついて動向を探れる方が安全なのか? 特にこの世界だと……。そう考えれば服を着たままでもドク口と連絡先を交換しておくのもありか。
と考えた私は一つ頷き。
「そうですね。やっぱり気が変わりました。スマフォを買ったらドク口さんとも連絡先は交換しましょう」
「切り替えはやっ! 今の短時間で何があったんですか!」
――というような事があったので我々はこの一服の後、スマフォを買うために携帯ショップへと向かうのであった。
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