感想

 っと考えながら私は口を開く。

「いや、それは竹中さんが開発した勇者召喚ガチャだった場合の話で、別にそうじゃなくても誰かが向こうの世界でドク口さんを召喚する魔法とか使えばOKって事ですよね?」

「ん……え?」

「ドク口さん。確か先輩が居るって言ってたじゃないですか? って事はドク口さんが魔法が使えなくなっていても、ドク口さんが居なくなった事に気が付いたその先輩とかが呼び戻してくれるんじゃないですか?」

「あーっ!! そっか、そうですよ! 今すぐとはいかないかもしれませんけど、先輩なら2年もかからず気付いてくれるはずです! それに異世界転生は死神の業務にもあるので、先輩ならピンポイントでピンポン玉を元の位置に戻すなんて朝飯前ですから、引っ張り出す方の召喚魔法なんて息をするように出来ますよ!」

 いや死神だから息してねーだろ……っというツッコミを入れてやろうかと思ったが。

「ほぉ〜そちらの世界では既に召喚魔法も還元魔法もちゃんと確立しているのですね? という事はおじさんを常温保存する魔法もあったりするんですかね?」

 と興味深いといった感じで質問をする竹中だが。なるほど召喚魔法の反対は還元魔法か、確かにその辺りが妥当か……と考えているとドク口。

「いや、おじさんは普段常温で生活されてると思うんですが? 逆に冷凍おじさんとか冷蔵おじって見た事ないんですけど……いや、そんな話より召喚魔法も還元魔法も少し時間さえあれば私でも出来ますって話です……お尻じゃなければ」

 あ、そうか。さっきドク口はピンポン玉を戻すなんて出来ないと言っていたが、あれは尻では無理だが魔法を使えば普通に出来るという意味だったのか。

 ……と私が考えてる横で、アバラ骨しかない巨乳の胸を撫で下ろしているドク口だが、もしその時がきたらドク口の存在だけに気付いて、ドク口だけを呼び戻してくれと願う私だった。


 ――で。


「では、自己紹介に一通りの経緯は話し終えたので、ここからはこれからについて話そう」

 と話を仕切り直したのはトノサマだった。


 ――ここだな。


 そう。今の私にとってこれこそが死活問題……うんこをした後に尻を拭くか拭かないか、それくらいの大きな問題だった。無論、拭かなかった場合のみ大問題な訳だが、今はそんな事は大した問題ではない。今一番大事なのは一時的にこの世界に留まるドク口とは違い、私の場合はこの世界と一生ものの付き合いになる可能性がある。なので戸籍も身分証もトイレットペーパーもウォシュレットも……そもそも便器もない私がどうやってこの世界で尻を拭……あ、いやその話はもう終わっていた。そうじゃなくてどうやって衣食住を確保するのか……だった。普通に考えれば不可能に近い問題だが、一国の王の力があればどうとにでもなる問題か……と考えつつトノサマの声に耳を傾ける。


「言うまでもないが、勇者殿とドク口殿はこの世界に来たばかりで無一文。そして呼び出した以上、我々は最初から勇者殿の生活は保障するつもりだったのでその辺りは心配しなくて良い。まあ、二人だったのは想定外だが食客が一人増えただけで困窮するほどウチは財政難ではないので安心してくれ」

 流石は王様だな。まあ、元の世界に送り帰す魔法が確立していないのなら当然の措置か。後は私が元の世界に帰るのを拒否した場合、ちゃんと一生面倒をみてくれるかだが――

 竹中はああ言っていたが、そもそもとして元の世界に帰る魔法が本当に確立するのか保証もない訳だから、最悪私を一生面倒みる覚悟はあったとみて間違いない……か。

 ――と予測しているとトノサマが続ける。

「差し当たってノレ殿とドク口殿には寮に入ってもらおうと思う」

『寮?』

 私とドク口が揃って頭に疑問符を浮かべていると横から竹中。

「はい。実は私は趣味で宮廷魔術師をしていると言いましたが、道楽で魔法学校の理事長もやっているのです」

 趣味で宮廷魔術師、道楽で魔法学校の理事長……こいつこのままだと性癖でナーロッパまんじゅうとか売り出しそうだな?

「で、まあ宮廷魔術師が理事長をしている魔法学校というだけあって人気も高く、国内外から生徒がやってくるので寮も充実している、そして何かあった時ように空き部屋も複数用意してあるという訳です」

「なるほど。で、その空き部屋に私とドク口さんが住めば良いと……」

 と私が言うと。

「そういう事だ。勿論、家賃などはとらん。自分の家だと思って好きに使って構わないそうだ」

 と今度はトノサマが返事をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る