前述
――という事で閑話休題。
この隙に私はお茶を一口啜り、
「まあ、とどのつまり私とドク口さんは何の意味もなくこの世界に召喚されたって事で良いんですよね?」
「端的に言えばそうなるな」
さっすが王様。
「じゃあ、もう別に元の世界に帰っても問題ないって事ですよね?」
――そう。これが都合が良い理由である。召喚する事自体が目的だったのならば、もういつでも帰っても良い訳で、私はその上で「私だけ帰る」「ドク口だけ追い返す」「二人ともこっちの世界に残る」「二人で海に向かってバカヤローと旧ツイッターでつぶやく」のどれか好きなものを選択し、死神の脅威からもおさらばしようと考えていたのだ。
そしてそんな私の質問に対しての竹中の答えは。
「ええ、もう帰って頂いても問題はないです。ただ、帰る方法がないのが唯一の問題です」
……。
……。
…………。
『なぁにィ!!』
空気の流れる音が聞こえるかと思うほどの静寂の後に、私とドク口が同時に叫んだ。
おいおい、それだと二人ともこっちの世界に残って本当に海に向かってバカヤローってつぶやく未来しか見えないのだが?
「ちょっと待って下さい。私は仕事があるんで帰れないと困るんですけど!」
いやいや、今はそんなつまらない心配をしている場合じゃないだろうドク口? それよりも私の心配をしろ、そしてもっと私を甘やかせ。
……と大声で叫びたいがとりあえず仕方あるまい。と考えた私は口を開く。
「あの……最悪の場合、私は帰れなくても良いのでドク口さんだけでも帰れる方法はないんですか?」
「え……ノ、ノレさん?」
表情を見なくても困惑しているのがわかる声色のドク口だが――。いや、まあ髑髏だから表情はないのだが、とりあえず私はドク口を無視して被せる。
「あのホント私は帰れなくてもいいのでドク口さんだけは……なんとかしてドク口さんだけでも……いや、ぶっちゃけドク口さんだけ帰らせてくれませんか?」
「なんか最後本音出てませんっ!?」
しまった。ノレうっかり☆彡
……なんて内心でテヘペロしている場合ではない。――というところで竹中が眉をハの字に曲げて両腕を組む。
「う~ん……実はいうと帰る方法がない訳ではなく、その技術が確立していないというのが正確なところなんですよね」
というと?
「というと?」
ドク口の疑問に竹中が続けて答える。
「えっとですね、今回私が発明した魔法は勇者召喚ガチャで、その名の通り異世界から勇者をガチャ形式で召喚する魔法です。つまり――わかり易く説明すると、ここに箱があってその中にピンポン玉が100個入っているとしましょう。そして箱の中を見ないで手を突っ込み、無作為にピンポン玉を一つ取り出します……これがガチャの形式であり、このピンポン玉がノレ殿とドク口さんを表しているのはご理解頂けますね?」
「モチロンです」
というドク口の言葉に続いて私も隣で無言で頷く。
「じゃあ、このピンポン玉を箱の中を見ないでお尻で元の位置に戻す……ノレ殿、ドク口さん出来ますか?」
「出来るワケないでしょっ! なんでわざわざお尻でやるんですかっ」
と零しているドク口だが。なるほど、これはわかり易い。それこそケツは関係なしに魔法でもなければ不可能に近い。
「つまり今回はピンポン玉を引っ張り出す技術、魔法は確立出来たものの、元に戻す
という私の言葉に竹中。
「そうですね。可愛く言えば『ついやっちゃったんだ♪』で、厨二病っぽく言えば『血の暴走』ですね」
「いや血の問題じゃなくてただの暴走ですよね? もう少しあとさき考えて実験して下さいよ」
まあ、ドク口からしたらそうかもしれんが、私はそれにより命を救われてるからな……今回ばかりは竹中とトノサマが暴走をしてくれて助かった。
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