考察
「薄々感付いてはいましたが。やはりそうだったんですね……それなら私の神通力が使えなくなったのも納得です」
と言い出したのはドク口だった。
「どういう事ですか?」
私は死神の方へと振り返り素直な疑問を口にする。すると死神は人差し指を頬に当てると
「う~ん。細かくちゃんと説明するのは難しいですが、ざっくり簡単に説明すると――私達の世界とこの世界では神通力や魔法といった超常現象の因果や法則、或いは
なるほど。感覚的だが理屈はわかる。イメトレで私のブラジャーだけがオークションで落札されないのと同じ理屈だな? だがしかし――
「けどそうなると日本語が通じるのはおかしくないですか? 魔法や神通力は法則や理論が違うのに言語は同じって理屈に合わないと思いますが?」
私としてはドク口に言った台詞だったが、これに答えたのは別人で。
「あ、それは理屈云々じゃなくてここが日本だから日本語が通じるのです」
「はぁ?」
エルフっぽい女性の一言に思わず
「先程の国の話の補足ですが、ここは日本という惑星のナーロッパという一国です。そしてこの惑星で話される言語は全て日本語だという事です」
「……なるほど」
そうきたか。いや、しかし良く良く考えればそうか……いくら異世界の勇者を召喚するとはいえ、あまりに文明や文化がかけ離れている者を呼ぶ、或いは物理的に距離が離れすぎている者を呼ぶのは相当なパワーとフェロモンが必要であり。また、あまりに生態系などが違ければ呼んだ瞬間に死んだり消滅したり、お土産を要求してきたりするかもしれない。そう考えれば必然的に距離も近く且つ文化や文明も似た異世界が選ばれるのは必然。つまりここは異世界といえどお隣さんくらい――次元の壁一枚、うっすい壁一枚の公衆トイレのお隣さん同士くらいの位置関係なのだろう。しかし根本的には別の便器、別世界なので目には見えない力の根源は全く別のところにある……といったところか。
と自分を納得させていると。
「ステータスオープン!」
うおっ! 死神がなんか急に言い出した。
「あ〜やっぱりステータス開かないですね……」
と死神が頬をポリポリと掻いているが、いやゲームじゃあるまいしそんな事出来る訳…………んっ! お前そんなゲームみたいな事出来たの? とか考えていると。
「アイテムボックス!」
「大賢者!」
「
「
「
「
「
「
……。
……。
…………。
「う~んやっぱりダメですね? 私が元の世界で使えたスキル、魔法、神通力の類は何一つ発動しませんでした……」
いや
しかし滑稽だな。普通は異世界転生や異世界転移をした場合、なんの努力もしないでチートスキルが手に入るはずなのに、こいつの場合はなんの努力もしないでチートスキルがなくなってやんの。プククッ……
と私は内心で失笑しながらも、ただの好奇心からドク口に訊ねてみる。
「因みに――途中までは、まぁなんとなく想像がつくんですが最後の4つ。無能、ハズレ、失格紋、ゴミって具体的にはどんな魔法やスキルなんですか?」
「え? あ、えっとですね……まず無能スキルはどんな相手でも無能にしてしまうスキルで、ようは超強力なデバフスキルです」
ほぅ? 無能スキルという割には有能なスキルだな? と私はアゴを一撫でする。
「次にハズレスキルは相手の攻撃が一切当たらなくなる、攻撃が全てハズレるようになるスキル――というか、攻撃だけじゃなくて罰ゲームとか不幸みたいな当たりたくないものは全てハズレるように出来るスキルです。つまりこっちは超強力なバフって事ですね」
なるほど。ハズレスキルという割には大当たりのスキルだな。っと私は一つ頷く。
「そして次の失格紋ですが、これはこの紋章を付けられた相手は必ず他人に落ちこぼれ、劣等種、下級職みたいな評価を受けますが、それは評価だけで実は優秀……という
つまり無能スキルと組み合わせると強い自分を妄想してるだけのイキリ無能を量産出来る訳だな? いらんけど。
「で、最後のゴミスキルですけど。これはイキリ無能を生ゴミを見るかのような蔑んだ目で見る事が可能になります」
それスキルいらんだろう? っと私はドク口に生ゴミを見るかのような視線を送った……生ゴミというか骨だが。
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