後書き
扉の前で王様と女性がこちらへと振り返り――口を開いたのは女性の方で。
「では勇者殿。陛下と一緒に先に中に入っていて頂けますか? 私は誰かに飲み物や観賞用のソーセージでも持ってこさせますので」
「観賞用!? ソーセージなのに観賞用ッ!?」
ドク口がない目ん玉を丸くして驚いているが、私は静かに目礼を一つ。
「楽しみにしておきます」
「楽しみなのっ!」
え? お前は楽しみじゃないの観賞用ソーセージ? 映画を観るより楽しいだろうに? その気になれば4時間から6時間は眺めていられるぞ?
……とまあ、そんな茶番を経て部屋の中に入ると。まー想像通りの造りとなっていた。基本的に置いてある家具は全て高そうなアンティーク。そしてそれらによって部屋には重厚な空気がもたらされている。で、そんな部屋のど真ん中にある真っ白いテーブルクロスを掛けられた長テーブルなんて、ドラマや映画で金持ちや権力者、青春を全て捨ててインスタにもやしの画像を投稿する女子高生が会食しているシーンぐらいでしか見た事がない。……と思ったが、よくよく考えたら普通に3桁回数は見た事があったな私は。
まぁ、そんなテーブルのお誕生日席に王様がまずは腰を下ろし。
「好きなところに座ってくれ」
と言われたので私は王様に向かって。
「そこをどいてくれ……」
とキザったらしく言ってみたらドク口に後頭部を
「アィタッ! な、何ですかドク口さん……あ、もしやドク口さんもあのイスを狙っていたんですか?」
「違いますよ。分を
えぇっ! 世界で私ほど分際を弁えているロリコンはそうはいないぞ? 何せ私は決して幼女を性愛対象としては見ないくらい分を弁えているロリコンだからな!
……なので、とりあえず私はドク口に「はいはい」と返事をしていると、指示が終わったのか女性が颯爽と戻ってきて王様に続く上座に座る。なのでその流れで私は女性の対面に座り、そして私の下座にドク口が腰を下ろした。
私達が腰を下ろし終えたのを確認すると、ここでも先に口を開いたのは女性だった。
「さて何から話しましょうか……? あ、いや。まずは話を潤滑にするために自己紹介をするべきでしたね」
あ~そういえば自己紹介もまだだったか。……と考えていると。
「ならば、まずは我々から名乗るべきだろう……」
と脇から言ってきたのは王様で、王様は私とドク口の方へと体を少し向け。
「紹介が遅くなった。ワシの名はトノサマ。トノサマ・ウコンモレソンだ。既に察しているとは思うが一応この国を治めている王だ」
ト、トランプの
っというツッコミは流石に本物の王様には出来るけど内心に留めつつ、ついでに漏れそうなウンコも留めつつ。
「あの〜この国って言ってましたが……ここってどこなんですかね?」
なんとなく返事の内容は予想出来ていたので恐る恐る訊ねてみたが、トノサマはケロってした表情で。
「ん? ここはナーロッパだが?」
「ナーロッパっ!」
死神が声を上げる。……がどこだっ! 中南米辺りにある国か?
「因みに隣国にはナージャマイカとナー東京があるぞ」
「ナージャマイカにナー東京ッ!? ナーの意味よ!」
死神がなんか言っているが――。やはり中南米で合っていたようだな? ナージャマイカにナー東京。そしてナーン極にエジプトナといえば全て中南米にある国だからナー。
という冗談を心の中で唱えていると、例のエルフっぽい甘納豆の香りのする女性。
「勇者殿達が驚くのも無理はありませんね。まあ、もうお気付きかもしれませんが、お察しの通りここは勇者殿達からしたら異世界に当たります。そして私達からすれば、異世界の勇者をこの世界に召喚した……という事です」
あー……やっぱり異世界だったか。ずっと考えないようにして現実逃避していたが、面と向かって言われたら認めざるを得ない……か。というより、そもそもとして瞬間移動よりそちらの方が合点がいく事が多かったからな……。
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