詳細

 とはいえ、疑問はまだあるので私はそのまま続ける。

「じゃあドク口さんの神通力が使えなくなったのって正確にはいつなんです? それとこの瞬間移動みたいなのはドク口さんの仕業じゃないんですか? あと人間の7割は水で出来ているって言いますけど、アンパンマンの7割はカレーで出来ているって本当ですか?」

 矢継ぎ早に質問してみたが、死神は至って冷静に。

「いえいえ、これは私の仕業じゃないです。真っ白い光に包まれた後、どうも気絶していたっぽくて……? そして気が付いて立ち上がったら丁度ノレさんが地面に伏せるところで……以降はさっき言った通り神通力が使えなくなっていました」

 なるほど。アンパンマンの話は無視か……という事は実際は7割じゃなくて6割くらいがカレーで、残りの4割もカレーという事か……。そして今の話からして私の体が動くようになったタイミング辺りから神通力が使えなくなった、つまり瞬間移動が起きた時にと考えるのが妥当。で、王様男達からしたら私が伏せた途端、後ろから魔王ならぬ死神ならぬ巨乳美少女の白骨死体が現れた……と。じゃあ。

「じゃあここがどこなのかは……?」

「モチロン知りません。寧ろ私が知りたいです。ところで私からも質問いいですか?」

「なんでしょう?」

「どうしてスッポンポンなのです? 目のやり場に困るのですが?」

「寧ろ私が知りたいです」

 というか前にも言ったがお前、目ねぇだろ。


 まぁ、しかしそうなるとここがどこなのかは王様男達に訊くしかないが、素直に答えてもらえる状況じゃない……よな?

 と思い再び王様男やSP達を見上げれば。

「陛下、如何なさいますか? 今のところこやつらに不穏な動きはございませんが?」

 SPの1人が私達から視線と射線を切らずに王様男に訊ねるが――。


 今、陛下って言ってたな? って事は王様男は本当に王様とか皇帝とか、果物の王様という事か。……といっても、結局それがわかったところでここがどこなのかは皆目見当がつかないが……。


 としていると私達を見下ろしたままで、その王様。

「う~む。確かに今のところ従順ではあるが……本当にこやつらは勇者なのか? そもそも勇者召喚ガチャは1度につき1人のはずでは?」

 と首を捻り頭に疑問符を浮かべている王様だが――そこへ。


「御心配には及びません陛下。そっちの剥き出しの骨は巻き込まれただけのバグだとは思いますが、そちらの剥き出しのセクハラは間違いなく勇者殿です」

 ――女性の声だった。


 王様が振り返り、私達もそちらに顔を向ければ――。王様が歩いてきた位置より更に奥。いつからそこに居たのか全然気づかなかったが、全く以て今どきっぽくない服装をした女性がこちらに歩み寄って来ていた。いや、服装が今どきっぽくないというよりかは、浮き世離れしていると言うか人間離れしているというか……良く言えば美しい、悪く言えば妖艶、もっと悪く言えば臭そう。そんなエルフっぽい女性だった。


「何故そう言い切れる? こんな変態が本当に勇者なの……いや勇者殿なのか?」

 王様の疑問は尤もだ。どうもさっきから私の事を勇者かどうかで揉めている感じだが一体なんなのだ? 勇者召喚ガチャ……確かにそれが現実ならばあの瞬間移動も理解は出来る。しかし私はどこにでもいる普通のフリーター。10年連続で世界選抜に選出される程の生粋のフリーターであって勇者な訳がない。

 ……と思っていたが女性は徐に頷き。

「間違いありません。何故なら勇者召喚ガチャをした際、本当に勇者殿が召喚されたかどうかわかるように、勇者殿はすっぽんぽんになるように私が細工しておきました」

 こいつ天才かっ!? 勇者かどうかは兎も角、これで私がフルアーマーフルチンになった理由がようやくわかった。要はラッキースケベだった訳だな! だがしかし……

「だがしかし。そうなると私は本当に彼等にとって勇者なのか……?」

 私が思わず零していると、それを聞いたか隣からガイコツ。

「可能性は高いと思いますよ。何せノレさんは死神の描いたシナリオを乗り越える運命力を持っていた訳ですから……そこが評価されて勇者として召喚されたのかもしれません」

 なるほど。一理あるな。私自身は何もしていないのに選ばれたのが実に私らしい。

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