説明

 大変遺憾ではあるものの――


「とにかく両手を頭の後ろに! そのままうつ伏せになれっ!」


 あちらさん方は待ってくれず、これを言ったのは私と王様男のやりとりを見兼ねたか、私の正面に立ち王様男の盾となっているSPのリーダーとおぼしき人物の母親と思しき人物。

 別に銃を私に向けている訳でもなく、王様男を守るSPの壁に一緒に並んでいる訳でもなく、ただただ傍らから指示を出しているだけのオバチャン。


 しかし抵抗する気など微塵もない私はその指示に素直に従い。まずは両手を頭の後ろで組むと、ゆっくりと両膝を着き――

「あの~仰向けじゃダメですかね?」

 と言ってみるが。

『ダメに決まっているだろうっ!』

 王様男からSPまで全員から言われてしまった。


 ケチ臭いなぁ……と思いつつ私がうつ伏せになろうと金玉から床に伏せていると。

「なっ! き、貴様は魔王かっ!?」

 王様男が突飛とっぴな事を言い出す。

「魔王?」

 いやいや、私は魔王なんかじゃなくてどこにでもいる普通のフリーター。服を着るか着ないかも自由な人フリーター

 ……と言おうかな~と思って上目遣いで王様男を見てみれば、向こうは私になんか目もくれていない。それどころかSP達も王様男も、全員が全員同じところを見つめていて私など眼中にないといった感じだった。


 では、どこを見ているのか? と思い、釣られて私も顔だけをそちらに向ければ――そこは先程まで私が立っていた位置からほんの少し後ろ……。そこにドク口がガイコツのクセして呆けた面して立ち尽くしていた。

 ――ところに王様男の叱責が飛ぶ。

「お、おのれ魔王! どうやって勇者召喚ガチャに紛れ込みおった!」

 ん? 勇者召喚ガチャ? いや、それよりドク口が見えているのか? そして私のイマジナリーフレンドである一郎、二郎、サブ郎、メイン郎は一体いつから見えなくなっていた?

 私が情報を整理しようとしている中で、話は向こうだけで勝手に進み――。王様男はドク口に向かい人差し指を突き付け。

「SP達よ! 照準を魔王に! ワシが合図した時は躊躇なく撃て! マホの準備も怠るな!」

『了解!』

 この掛け声で私に向けられていた銃口が一斉にドク口へと向いた。――が。


 スマホ? 何故スマホを……? いやしかしSP達は全員内ポケットやらズボンのポケットからスマホらしき物を素早く取り出し、手に持ったまま銃を構えている。

 あれになんの意味があるのか私にはわからないが――

「ちょ、ちょっと待って下さい。私は魔王なんかじゃなくて死神です!」

 これを言ったのは胸の前で大きく手の平を広げたドク口本人である。

『死神っ!?』

 事情を知らない王様男達が揃って声を上げるが……。


 アホだな。なんの弁明にもなっていないぞ死神。彼等からすれば、この場における魔王と死神の違いなんてニシローランドゴリラとヒガシローランドゴリラくらいの違いしかないだろう?


 ――という事に一瞬遅れて気が付いたかドク口は。

「わぁぁ! ちょっと待って撃たないで下さい! 私はこのように無抵抗です。話し合いで解決しましょう」

 と言いながらヘッドスライディングで私の隣へと滑り込み、私と全く同じポーズをとっていた。


 ――ので。

「いや、ドク口さん。あなた私以外の人には見えないんじゃなかったんですか?」

 私的に、別にこれは聞かれてマズイ会話ではないので普通のトーンで隣のガイコツ女に話しかけてみれば。

「ほ、本来ならそうなんですが、どういうワケか私の神通力が使えなくなっているんです。ホラ、あの方達に銃を向けられた時、ノレさんにも使った金縛りをかけたはずなのに皆さん普通にスマホを取り出してたんで……理由はわかりませんが不可視、金縛り、どっちの神通力も使えなかったので恐らく全ての神通力が使えなくなっていると思います」

 だから無抵抗で地面に伏せたのか。しかし神通力……まあ死神も神様だからあの超常的なパワーは神通力と呼んでいいのか。――と考えていると髑髏は続ける。

「なので今の私はあなたを殺すだけの力もない。ただの巨乳美少女だと思って下さい!」

 いや、ただの白骨死体にしか見えないんですよ地面に転がってると。やっぱこいつ死神とは思えんな……。

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