概要
死神の大鎌が振り下ろされると同時。周囲が真っ白に輝き出す。景色が見えなくなるどころか、目の前の死神でさえ真っ白い光に包まれ姿が見えなくなる……それほどの
――何が起きた?
正直わからない。しかしそれも一瞬の出来事で、最初は間違いなく周囲は白く輝いていたはずだが、気が付くと光は白い煙へと変わっていた。
なので私はガリを食うためにだけに高級寿司屋に入る陽キャと死神の事を警戒しつつ、動かずに煙が晴れるのを待っていると――
――自分の身に何が起きたのかを理解した。無論、全容ではないが一つだけはっきりとわかった事がある。そしてそれとは別にもう一つ、死神の眼光が届かなくなったからなのか体が動く事にここで気が付いた。
因みに気が付いた理由はくしゃみをした勢いでオナラが出てしまい、そのオナラの勢いで再びくしゃみが出た従姉妹の事を思い出した勢いでオナラが出たからである。涙は心の汗、オナラも心の汗とは良く言ったものだ。
そんな事を考えている内に煙が薄くなり、ようやく周囲が薄っすらと見え始めた頃。
「よくぞ参られた! お待ちしておりましたぞ勇者殿――」
と死神とは明らかに別。野太い声と共に、肩で風を切りながら私の方に近付いて来る人影があった。――が。
「――どぉのぉっ!?」
という情けない叫びと共にその人物の動きが止まった。恐らく煙の中に佇む私の姿を目にしたからだろう。そして私の方からもようやくその人物の全体像が見えた。
驚く事にそこに居たのは、如何にもな中世ヨーロッパの王様を彷彿とさせる男性。トランプの
この頃になると煙と私の羞恥心も殆ど消え、ようやく周りの景色が確認出来る。私は眼球だけを動かし周囲を確認するが――ここは一体何処なんだ? さっきまで居た横断歩道とは全然別、というより明らかな屋内。ヨーロッパの王様のような男性が居るだけあって西洋のお城……パっと見だけで言えば玉座の間のような、或いは無駄に豪華にしてしまった脱衣所のような雰囲気だが――死神は何をしたんだ? こんな瞬間移動のような真似、死神でなければ出来ないだろうが――
と思考を巡らせていると恰幅の良い王様のような男性は、
「お、おのれ曲者っ!? 者共っ! こやつをひっ捕らえろ!」
いきなりなご挨拶である。しかし――
『はっ!』
という複数の返事と同時。両手でハンドガンを構えた如何にもSPですと言わんばかりの黒スーツ姿のゴツイ男達が、私と王様風な男性の間に割って入り壁となる。全員が全員、私に銃口を向けるので私は素早く両手を上げ無抵抗の意思表示をし。
「待って下さい。私は変態ですけど怪しい者ではありません! ご覧の通り丸腰です!」
私としては誠意をもって事実を述べただけだが、その熱意は王様男に伝わらなかったか。
「無法者がっ! 丸腰なのは見ればわかるっ。というより丸腰どころか
え? でも手を上げないと撃たれそうだし……ねぇ? いやそれよりも、もっと弁明しなければ……と私は口を開く。
「違います誤解です! これは
「世間一般ではそれはコスチュームプレイではなく別のプレイ扱いだろう……」
おっと、そうか。しかし別のプレイだと思ったという事は、私が普段から自宅と仕事場で裸族だという事は悟られなかった……こちらが
そして私が光に包まれた時、何が起きたのか全容は掴めなかったが、唯一はっきりとわかったのがコレ。何か不思議な力によって私はすっぽんぽんにされてしまったのだ。おかげで私の意思とは無関係且つ、大変不本意な形で
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