第93話 在マグノリア・ウィスタリア人融和作業部会#1
”すぐそこ”とは言い方というもので、
コニファーの機関銃トークに相槌を打ちながら、駅前から坂を登って、10分近く歩いた。
まぁいっか、帰りは下り坂になるわけだし。
連れて行かれたのは、高台に建つ5階建て、要塞みたいにものものしい、古いビル。
ウィスタリア人親睦なんちゃら会の本部、にしては、え?でかくない??
と思ったが、ビルのエントランス脇には、ほとんど目立たない地味な銅板で、全く違う団体の銘が掛けられていた。
”汎世果報探尋社”
ラフレシア語にしても馴染みのない
なんじゃこりゃ。
ガタガタ振動して不安なエレベーターで4階まで上がると、
エレベーターホールの先は、鈍重なビルらしく柱が多く、見通しの悪い大部屋を、
通路に沿って並べたスチール製ロッカーで仕切り、いくつものブースに仕立てている空間。
低めのロッカーの上が各ブースの受付カウンターのような扱いになっていて、
一見してウィスタリア人には見えない、ていうかムータン系の人だよね?というおばちゃんが、職員と何か話してる。
いよいよ、なんじゃここは。
「部ッ長ーー!
新規加入者さま1名、お連れしましたッ!」
コニファーが、居酒屋の店員のような声を張り上げてブースの一つに入っていく。
「コニちゃん。
あなたまた、無理筋通して引っ張って来たんと違うの?
ごめんなさいね、、って、あらん?」
ブース内に、2島で配置されたデスクの頭の位置、つまり偉い人の席から立ち上がった、
ショートカットの若い女性は、愛嬌のあるタレ目でしげしげとアマリリスを眺めた。
「”誕生日の彼女”さんやないの。
え~~、
「は?何て??
すみません、、どっかでお会いしましたっけ?」
人好きのする笑顔の魅力、だがアマリリスとは違い、人に鮮烈な印象を残すわけではないネメシア、
概して記憶の弱いアマリリスが、山猫軒でルピナスの相客として会釈しただけの相手を覚えていなくても、無理のないことだった。
「いいのいいの、こっちのハナシ❤
今日はどうしたん、、ってそっか、コニーちゃんに捕まったんよね。
へぇー、ウィスタリアからお越しだったんだぁ。
ゆっくりしてってね、その前にコニちゃん?ちょっといらっしゃい。」
ネメシアは一転、てきぱきとした口調でコニファーを呼びつけ、
デスクの前に立たせて念押しをした。
作業部会の活動実績の紹介に留め、強引な(=本人から希望の申し出が無い限り)入会の勧誘は行わないこと。
社の活動方針に関するご質問には独断でご回答せず、自分の判断を仰ぐこと。
はい、社是その一唱和ッ!の号令のもとに、
”私たちは、自発の希求に基づき、
なる念仏を唱えさせ、よろしい。と解放した。
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