第49話 余熱#2

アマロックとの蜜月を思い出したせいで、何だか落ち着かない。

体は微妙に熱を帯び、いつまでもおさまらなかった。


意外だった。

あれだけひどい裏切りを受け、一生で二度とはない苦しみを与えられた相手だというのに。


『はぁ・・・』


両手で二の腕を掴み、自分自身の体を強く抱きしめた。

アマロックがそうしてくれたように。


けれど残念ながら、取り戻したかった感覚はそこになかった。


『どんな気持ちで・・・』


どんな思いで、このか弱くやわらかな体を抱いたのだろう。


自分自身を抱きしめながら、ごろりと寝返りを打った。

体の色々なところがシーツに擦れ、甘いような、焦がれるような感覚は強くなる一方だった。


『カレシほしい・・・』


本音はカレシが、よりも、カレシに付随する営為が欲しかったのだが、

それを認めるのはみだらに過ぎる気がして、誰にも聞かれない独り言であっても憚られた。

ともあれ、ここにきて初めて、アマリリスは他者の存在をとしていた。


あけすけな欲求の一方、今度は、思いやり深い魂のある人を探そう、と思った。

誰しもそう思うものだろうが、かつてアマロックとの断絶に苦しんだアマリリスにとって、その条件は切実だった。


そしてふと、この間食堂で、自分の噂話をしていたうちの一人を思い出した。

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