第47話 晩稲の花々

それにしても、

ラフレシア人って意外とオクテなんだな。


もちろん人によるのだろう。

彼女たちは何やかやお嬢様育ちなのだ。


ウィスタリアは何といっても田舎で、開放的という訳ではなく、むしろ保守的な風土の国だったと思うが、

何というか、ここ都会に比べて人生が早く、単純だった。

アマリリスたち、女の子同士で街に出掛けてこっそり男と逢うような、ちょこっとワルの入った女の子達は、

当時先を競うように、男友達と体の関係を持ちたがった。


保守的で窮屈な風土への反動、

そして今にして思えば、周囲がどんどん初体験を済ませてゆくことのプレッシャーが大きかったたようだ。

ヒルプシムがその典型だった。


アマリリスは、身持ちが堅いというより、臆病でマイペースだったということだろう。

興味がないわけではなかったが、結局、ウィスタリア時代のカレシには体を許さなかった。


15歳で初等学校を卒業すると、遅からず家庭に取り込まれてゆく娘がほとんどのウィスタリアと違い、

マグノリアでは、女学校に通う娘もいれば、仕立屋で働く娘も、図書館に勤める娘もいる。

そして結婚したり、ホテルの給仕に転職したり、中には大学に進む者もいる。


多様で、複雑に入り組んだ、無駄も多い人生だ。

故に”マグノリア人”の人生は進みが遅い。

アマリリスと同年代か年上の彼女たちが今経験している人生は、ウィスタリアなら3,4年前のステージだろう。


それはたぶん良いことだ。

ヒルプシムもいつだったか、周囲のプレッシャーに負けるような形で、安易に男に身を許したことを悔いるようなことを言っていたことがある。

一生残る相手との思い出がそれでは切ない。

ウィスタリアの伝統的な風土が正しいとも思わないけど、軽率よりは、オクテで慎重なくらいでちょうどいいのだ。


あたしも、アマロックまで取っておいてよかった、と思う。

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