第45話 選んでよかった
思っていたよりもずっと優しいアマロックの抱擁に、アマリリスは安心した。
もっと、手足もばらばらにされて、
体を食い千切られるような、そんな体験かと思っていた。
しかしアマロックは丁寧に彼女の髪を撫で、
冗談を言って笑わせたり、からかって拗ねさせたり、
そんなことをしながら、長い時間をかけ、まるで生まれたての雛を取り上げるかのように、
大切に大切にアマリリスを扱ってくれる。
体にはほんの微かに、切ないような疼きがあったが、
それすらもアマリリスには幸福だった。
アマロックを選んでよかった。
もう欲しいものは何もない、
今この瞬間に死んでしまっても、後悔することは何ひとつないだろう。
少しうとうとして目を覚ますと、アマロックもやはり軽く目を閉じ、
アマリリスの体を斜めに横切って渡された腕が、
何とはなしに脇腹から腰の辺りを撫でていた。
アマリリスは微笑んで、その腕を抱えてアマロックを引き寄せ、
自分の体の上に覆い被せるようにして抱き締めた。
空はぽっかりと青く、白い雲の固まりが通りすぎていった。
頭の上の方に見える枝に、胸の赤いあとりがとまり、
小さな子供が笑うような声で、楽しい歌を歌っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます