第45話 選んでよかった

思っていたよりもずっと優しいアマロックの抱擁に、アマリリスは安心した。


もっと、手足もばらばらにされて、

体を食い千切られるような、そんな体験かと思っていた。


しかしアマロックは丁寧に彼女の髪を撫で、

冗談を言って笑わせたり、からかって拗ねさせたり、

そんなことをしながら、長い時間をかけ、まるで生まれたての雛を取り上げるかのように、

大切に大切にアマリリスを扱ってくれる。


体にはほんの微かに、切ないような疼きがあったが、

それすらもアマリリスには幸福だった。


アマロックを選んでよかった。

もう欲しいものは何もない、

今この瞬間に死んでしまっても、後悔することは何ひとつないだろう。



少しうとうとして目を覚ますと、アマロックもやはり軽く目を閉じ、

アマリリスの体を斜めに横切って渡された腕が、

何とはなしに脇腹から腰の辺りを撫でていた。


アマリリスは微笑んで、その腕を抱えてアマロックを引き寄せ、

自分の体の上に覆い被せるようにして抱き締めた。


空はぽっかりと青く、白い雲の固まりが通りすぎていった。

頭の上の方に見える枝に、胸の赤いあとりがとまり、

小さな子供が笑うような声で、楽しい歌を歌っていた。

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