第21話 女子の宿業

ヒメってば最近、仕事終わるなりどっか行方をくらませてぇ、けしからんゾ☆

たまにはコッチにもつきあぇ❣


という同僚女子たちに連行されて、アマリリスは今日はドーム屋根の見える繁華街にやってきた。

お目当ては、行きつけのお店の新作のタルト、そしてそれ以上に女子の大好物、

うわさ話、誰それへの批評、恋バナといったおしゃべり。


長い間、魔族とオオカミの間で過ごしたあとだと、

人間の他者に対する飽くなき好奇心、探究心、お互いや、この場にいない第三者や、会ったことのない有名人などに対してすら、

多様で豊富でとりとめもない話題を繰り出し続けられることに驚嘆する。


・・・いや、大昔ウィスタリアの時にもこんなことあったな。

あたしって案外、他人に無関心な人なのかも。

ようやくそれに気づいたアマリリスは、もうトワトワトじゃないんだから、

都市の住人としてそれじゃいかんよねと、意識して彼女たちの会話に耳を傾けた。


そのうちの1人、プリムの愛称で呼ばれるプリムローズには最近、「いいカンジ」の異性が現れたらしい。

美人というわけではないが、小作りでおっとりした顔だちは、オコジョみたいな可愛らしさがある。


わかる、わかるよカレシ[候補]さん。

異性への嗜好も多様化する都会、全員が全員、あたしみたいな超絶美少女志向とは限らない。

ファーベルとか、出すとこに出したら(どこに??)とんでもない高値がつきそう。(だから何の値段!?)


プリムとカレシ[候補]の、聞いているうちにどこかむず痒くなるような、

他の女の子たちはきゃぁきゃぁ騒いでる、胸キュンにしてもどかしいやり取りを聞く限り、

彼女と彼がお互いに好意を持っていることは明白に思える。


だったらさっさと付き合っちゃえよぉ、てかもう付き合ってるってことでよくない??

と思うところだが、そういうものではないらしい。

好意を言葉にして伝える、「告白」されることが恋愛関係の成立には不可欠なのだという。

そしてプリムが待ち望んでいるにも関わらず、彼がなかなか告白してくれないことが目下の気がかりであり、

小さくはない不安や悩みにも感じているようだ。


だったら自分から告白すりゃいいじゃん、と言いかけて、

アマリリスは切ないような胸の痛みに口を噤んだ。

そうだよね、、思ってても、どうしても言えない、ってことだってあるよね。。。


「でっ、ヒメのほうはどうなの??」


「・・・は?あたしが何て??」


思いもよらないタイミングでこちらに矛先が向いてきた。


業後の集まりに顔を出さなくなったのを、彼女たちはアマリリスが恋人を得て、

彼との関係にかまけきっているせいだと確信していたらしい。

架空の人物を笑って打ち消し、大学の講義を聞いていたのだと答えると、


「・・・それって何の修行?」


「ごまかすにしてももうちょっとリアルなウソを」


なんて言って食い下がってきて、納得させるのにずいぶん苦労した。


ヒメなら、その気になったらカレシの5人や10人すぐ集まりそうなのに、

なんてったってヒメだし。」


「う~~ん、なんかあんまピンとくる男いなくてさ、マグノリア。」


「うわー、ヒメならではの上から発言?」


「まったく、言い寄らせておいて片っ端からフッてくんだもんねぇw」

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