都市生活者たち

第7話 屋根裏部屋のアマリリス

都会はそこに住むものに、様々なことを要求する。

年頃になった少年と少女も、姉と弟も、それぞれ別の部屋をあてがわれなければならない。


アマリリス自身は床はともかく、本気でソファーを常の寝床としても構わなかったのだが、

どうやら、そういうわけにもいかないらしい。


ファーベルもヘリアンサスも、自分の部屋を彼女に譲ろうとしたが、当然アマリリスは固辞し、

それではと3階西側の屋根裏のような部屋を居室に選択した。


物置のように使われていた小さな部屋は、

がらくたを片付け、隅の方で畳まれていた簡易ベッドを広げると、それだけでいっぱいになった。


「こんな穴倉みたいなとこ・・・

わたしの部屋にもう一つベッドを入れてもいいよ?」


「大丈夫よ。

荷物これだけだもん。」


アマリリスは部屋にもともと置いてある長持の上に、トワトワトから運んできたズックのダッフルバッグを載せた。

それすらもほとんど中身が入っていないようだった。


実際彼女はこの小さなスペースが気に入った。


アマリリスがあぐらをかいて座っているベッドと、長持、ファーベルが座っている木のイスと、小さな机。

ベッドの頭の位置には、小さな本棚もある。

他に必要と思うものは何もなかった。



「でも、ヘリアンが働いているなんて、驚いたなぁ。

ああいう格好してると、あの子もカッコよく見えるもんね。」


わざとらしくならないような間を狙って、アマリリスは切り出した。

昨日の様子からも、ファーベルとヘリアンサスが良好な関係であり続けているのは確かに思えたから、ヘリアンサスの話になればファーベルは喜ぶだろうし、

弟と、この可愛らしい少女が、単なる好意以上のどのような関係にあるのか探りたいという、若干よこしまな思惑もあった。


だから、投げかけに対するファーベルの返事は何とも物足りなかった。


「そうね。。必要とされてるのが嬉しい、って。

お役所で。」

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