第3話 別れちゃった。

廊下のほうでばたばたと騒がしい音がして、衝立の後ろから若い男が飛び込んできた。


離れていたのは1年に満たない月日だったというのに、アマリリスは一瞬、相手が誰だかわからなかった。


ヘリアンサス。


真っ白いシャツに黒いベストという服装のせいもあったが、

骨格の発達し始めたその表情は驚くほど大人びて、精悍とさえ言える雰囲気を作り出していた。


少し遅れて後ろから顔を覗かせたファーベルが全然変わっていない、

むしろトワトワトの時よりも幼くなって見えるのと、余りに対照的だった。


「おねえちゃん!」


想定外の変わりように、たじろいでいたところへ投げつけられたアンバランスな声に、

アマリリスはくすりとして言った。


「ヘリアンサス。

あんたどうしたのよ、随分カッコよくなっちゃって。」


ヘリアンサスはせわしく口を動かした。

言葉がでてこないのだ。


「元気ー?

ファーベルは変わらないね。」


「え、、うん、元気?元気元気。

、あのさ・・・」


アマリリスは微笑んで、小首をかしげた。

ファーベルは、悲痛とも言える困惑を浮かべている。


やっと二人が言わんとしていることを察した。


「別れちゃった。」


精一杯、語尾にハートマークをつけ、弱々しくVサインを作った。

胸が少し痛んだ。


ヘリアンサスの顔がパッと明るくなるのを見て、アマリリスはむしろほっとしていた。

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