第28話 反省会 2
転移してきたエルフは、人や亜人よりも小さい子供である事から、生きて保護される事は珍しい。
エルフの10歳なら人や亜人の5歳と変わらない。
そんな小さな子供が転移後に助かる可能性は低い。
また、その後の成長も遅い事から、二人とレィオーンパードを見比べると見た目年齢の差はほとんどない。
アリアリーシャは、二人のエルフの成長を考えていた。
「そうよね。34年前の転移から6年後なら、私よりも背が低かったのか。その時に二人と出会えていたら、私の方が背が高い時があったって事なのね。私は、4・5年したら、この身長で止まってしまたわ。みんなが羨ましいわよ」
成人の平均身長が100センチ程度と言われているウサギの亜人の中で、アリアリーシャは130センチと大柄な部類に入るがメンバーの中では一番小さい。
エルフの16歳なら人や亜人の7歳程度と同じと考えれば、今の自分より小さいだろう事は理解できるので、アリアリーシャは止まってしまった身長の事を考え寂しい表情になる。
(100センチを超えても成長が止まらなかった時は喜んだわ。このまま、レオン達位まで伸びるんじゃないかと期待したのに、130センチで止まってしまった時はショックだったわ)
アリアリーシャが気にしている身長の話を自ら行ったのを見たアンジュリーンとカミュルイアンは、掛ける言葉をお互いに相手に望むように視線を合わせると、アンジュリーンは、少し凄みを聞かせて顎を振り、いかにもカミュルイアンに声を掛けさせようとすると、レィオーンパードがアリアリーシャに近寄った。
「あ、あの、姉さん。ありがとう。俺、にいちゃん達二人が、いつも一緒だったから、これからも一緒だと思ってた。でも、死なない人なんて存在しないんだから、これからは、常に気に掛けるようにする」
アリアリーシャは、自分の言った言葉には辛辣な内容も含まれていた事を考えると少し後悔していたのだが、お礼を言われた事によって救われた様子でレィオーンパードを見ると、悪くなった雰囲気が変わる。
エルフの二人も気が楽になったようだ。
「そういうのは気持ちの問題なのよね。私もカミューが居なかったら、学校にも入れなかったかもしれないわ」
「オイラも、アンジュが居なかったら、今は無かった。だから、ありがとう」
お礼を言ってくるとは思わなかったのか、驚いた様子でカミュルイアンを見る。
「な、なによ」
カミュルイアンは、アンジュリーンの素直な反応に少し照れてしまった様子をするとレィオーンパードを見た。
「レオン。今の気持ちが有れば、これからはジュネスとシュレも守れるはずさ。レオンだって最年少で入学したのに一年の時から上位にランクされていたんだ。気持ちの部分も追加されれば無敵さ」
自分の気持ちを誤魔化すように言うが、レィオーンパードは気付かず言われた事を素直に聞く。
「そ、そうなのかっなぁ」
少し照れた様子をすると、視線をアリアリーシャに移す。
「姉さん。ありがとう」
厳しい事を言ってくれた事を理解し、もう一度感謝を述べると、アリアリーシャの表情にも笑顔が戻る。
「う、ううん」
「姉さんのお陰で目が覚めたよ。言われなかったら、これからも同じだっただろうし、気がついた時には取り返しの付かない事になったかもしれない。だから、言ってくれて、ありがとう」
「そう言ってくれると助かるわ」
アリアリーシャは、言い過ぎてしまったと思っていたが、レィオーンパードは、自分の中には言われた通りだった事を素直に受け入れていた。
「レオン。オイラもだけど、人は自分の事を客観的に見る事ができないから、本当の事だとしても言われて聞き入れる耳があるのは凄い事なんだ。6年で今の話を素直に聞き入れられるなら、体も心も強くなれるはずだよ」
「そうね。レオンは、ジュネスとシュレが居て、最初から二人を見て育ったのだから、環境としては恵まれていたと言えるわ。私とカミューなんて二人だけだったから、お互いに手探りだったのよ」
「そうだね。ギルドの高等学校に入るまで、お金を貯めるのに苦労したよ」
「あら、私なんか一人だったから、本当にきつかったわ。何でも自分で考えて決めていかないといけなかったのよ。私からしたらアンジュとカミューも恵まれていると思えるわよ」
「でも、一人だったから覚えられた事も多かったんじゃないのかなぁ。オイラ達よりも経験した内容は濃かったんじゃないかと思う。気付かなかった事も見えていたから、レオンに的確な指摘もできたんじゃない。ジュネスもリーダーとして凄いと思うけど、アリーシャにもリーダーの素質が有ると思う。オイラ達とは二つも三つも上のレベルで話をしていると思ったよ。きっと、ソロが多かったのだから、周囲への警戒を怠らなかった事からパーティーでも周りの動きにも対応できているのかもしれないね」
カミュルイアンの話を聞いて、アンジュリーンは面白くなさそうな表情をする。
「何よ。一緒にしないで欲しいわ」
小さい声でボヤいたので周りには聞こえなかった。
「そうねぇ。些細な音を聞いて魔物の位置を把握していたから、音の判別には自信があるわ。風に靡く音にも木や草が出す音でも近くに魔物が居ると微妙な違いが有るのよ。それを聞き分けていたからなのかしら」
思い出すような表情をする。
「そう言えば、レオンが剣を構える時とか、不安そうな時、自信のある時、服の擦れる音にも違いがあるから、微妙な変化にも敏感なのかしら」
「えっ! そんな事も分かっていたの」
「まあ、パーティーの中で一番歳下なのもあるから、注意していたというのもあるわね」
「まあ、レオンだからね。やんちゃが過ぎると思う事は、オイラも感じるよ」
二人の話を聞いてレィオーンパードは嫌そうな表情をした。
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