第27話 反省会


 レィオーンパードは、魔物の数を見誤った事について、アリアリーシャは指摘するので凹んでいた。

 それを見ていたアンジュリーンとカミュルイアンが擁護したが、アリアリーシャの正論に押し切られてしまい反論できず黙ってしまう。

「レオン。あなた、ジュネスとシュレが居なくなった時の事って考えた事ある?」

「えっ!」

 優しく問うアリアリーシャの言葉を聞いて俯いていたが、驚いた様子でアリアリーシャを見る。

 アリアリーシャは、やっぱりというように息を大きく吐く。

「考えた事、無かったわね」

「う、うん」

 レィオーンパードが転移してきたのは、ジューネスティーン達が転移してから4年後になる。

 転移した時、ジューネスティーンとシュレイノリアは冒険者として活動しており、ギルド支部周辺の魔物を狩りながらパワードスーツの基礎設計を行なっていた。

 そんな中、新たな転移者として現れたレィオーンパードの世話は二人が行っている。

 言葉を教えてもらい、生活に関する常識も、冒険者としての基礎も、何もかもを二人から教えてももらい、ギルドの高等学校にも二人が資金を出してくれて入学しているので、居る事が当たり前だと思っており、居なくなるなんて事は全く考えていなかった。

「あのね。私達は、常に命のやり取りを行なっているの。それは、私達だけが命を奪う一方的な事ではなく、相手も命を狙ってくるのだから、可能性は低いかもしれないけど奪われる事もあるかもしれないの。不測の事態が起こる事だってあるのよ。それを常に頭に入れておかないと、気が付いた時には取り返しのつかない事になっているなんて、当たり前なのよ」

 今まで考えてもいなかった事を言われて青い表情をする。

 自分が危機的な状況でも、必ず二人が助けてくれると思っていたが、言われてみて納得するように考え込む。

「ジュネス達は、レオンの事を良く考えて行動してきていたわ。それは学校での生活を見ても明らかなのよ。それが悪いとは言わないけど、それがいつまでも続くと考えてはダメなの。それが甘えなのよ」

 言葉は丁寧だったが内容は辛辣だ。

 レィオーンパードは、考えてもいなかった事を指摘され黙り込んでいる。

 アンジュリーンもカミュルイアンもアリアリーシャの言葉の意味は理解しており、今度は擁護するつもりもなく黙って聞いていた。

 アリアリーシャは、三人の様子を見て少し言い過ぎたと反省したようだ。

「レオン、ごめん。言い過ぎたわ」

 レィオーンパードと二人の様子を見て雰囲気を悪くし過ぎた事を少し後悔しているように言う。

「でもね。常に心の奥に、今の事は置いておくの。それが有るか無いかリスクの取り方が変わってくるの。そういう事が有るかもしれないと思えば無駄なリスクも回避できるようになるわ。あなたにとって、ジュネスもシュレも大事な人でしょ」

「うん」

「それは、二人も同じように思っているはずなのは、同じファミリーネームを使っている事からも分かるわ。きっと、二人は可愛い弟だと思っているのよ。常にリスクの事を考えていたら、魔物の数の見積もりだって、いい加減な数字にならないはずなの」

「……」

 致命的なミスにはならなかったが、魔物の数を大きく見誤った事はパーティー全体の危機につながる可能性が高い。

 お互いに一個体ずつと対戦できるように配慮できたから損害は無かったが、同時に複数の魔物を相手にする事になれば、弱い魔物といえど損傷する可能性が跳ね上がる為、怪我による戦力低下も考慮する必要が出る。

 十数匹に飛び掛かられれば命は奪われ絶命するのを待つしかない。

 そんな話は学校の授業、同級生の話、冒険者の噂話などで聞いていたが、レィオーンパードには現実味が無かったが、アリアリーシャに指摘されると今後起こる可能性が有ると感じ情報の重要性を認識していた。

「だ、大丈夫だよ。レオンは転移してから6年しか経ってないんだ。経験値が足りないだけだから、これから少しずつ理解していくはずさ。次は正確な数字を掴んでくれるよ」

 黙って考え込んでいたレィオーンパードをフォローするようにカミュルイアンが答える。

「6年か」

 アンジュリーンが昔を思い出したようだ。

「そうね。私達なんか転移して6年じゃあ、冒険者になりたいと言っても、身長が足りないとか、力が無さすぎるとか言われてたわ」

 成長の遅いエルフとしたら、転移して現れた時は亜人の二人よりも子供の状態で現れる。

 人の5歳程の子供の状態で転移したエルフの二人であり、その後も成長が遅く、34年経った今ではレィオーンパードと見た目の若さは変わらない。

 二人の転移6年後は、身長も小さく体力も無く、小さな子供時代が長かった事から冒険者になる事も出来ずにいて、ギルド支部の保護下に置かれて冒険者になる事も出来ずに過ごしていた。

 その時の事を思い出し感慨深い表情になる。

「そりゃ、そうだよ。あの時なんて、今のレオンの半分程度だったんだから」

 そんなアンジュリーンを宥めるように言うのを見たアリアリーシャは、エルフの二人の会話を聞いて当時の様子を想像すると、冒険者としての経験が無かった事を理解したようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る