第24話 イレギュラー 2


 アリアリーシャはニヤリと笑った。

(向かってきている魔物の数を見てもビビってないアンジュは意外と頼りになるわね)

「あんた達は、私のお洋服になるのよ!」

 矢を放ったアンジュリーンが魔物に向かって言い放つと、アリアリーシャは苦笑いをした。

(ああ、そうだった。アンジュは新しい服が欲しいから狩に誘ったんだったわ。目的が有るから気力も上がる。まあ、アンジュらしいわ)

 近付いて来る魔物は一直線に向かっていた事もあり、二人の矢は確実に一匹一匹仕留めていたのを見ると安心する。

「レオン!」

「ざっと、二十匹ってとこかな」

「そう、意外に少なかったみたいね」

(さっきの魔物に呼ばれたなら、狂気に満ちて襲ってくるだけだから動きは単調になる。アンジュとカミューが半数近くまで減らしてもらえ、狂ったように襲ってくるなら連携もない。攻撃に時差も生じる。それなら、二人一組で対処したら大丈夫そうね。さっき、私が倒した魔物、アンジュ達の矢が着弾して直ぐに大きく口を開いていたわ。威嚇された矢に反応したの)

 アリアリーシャは、何か違和感を覚えたようだが、迫ってくる魔物を見てから岩の上のアンジュリーンを見た。

「アンジュ! 出来るだけ矢で減らすのよ。目の前にまで来たらカミューと連携して剣で対応! 近接戦闘なら剣の方が有利! あなたの剣のレベルなら弓以上の戦果が得られるはずよ!」

 アンジュリーンは、一瞬、ムッとしたような表情になるが直ぐに納得する。

「分かったわ。アリーシャの動きをみてから剣に切り替える! でも、その前に」

 答えながら弓を引くが狙いは少し変わった。

 アンジュリーンは、先頭を走る魔物から順に矢で射抜いていたが、魔物を分断するように中央から倒し始めると、カミュルイアンも連動し始めた。

 アリアリーシャは、迫ってくる魔物を確認すると、アンジュリーンとカミュルイアンは、先頭の魔物ではなく、中央の魔物の他に密集している魔物を狙い始め魔物と魔物の距離を広げていく。

「アンジュ達が上手く魔物を倒してくれているわ。私達は右の先頭から徐々に各個撃破するわよ」

 レィオーンパードに指示を出すとアンジュリーンを見上げた。

「アンジュ! こっちは右から狩っていく」

「分かったわ。矢で中央を分断してから、こっちは左を攻める」

「じゃあ、オイラはギリギリまで弓で応戦するけど、近くなったら剣で対応する。アンジュは高い場所だから、後方の魔物をチェックしつつ、少し先の魔物をギリギリまで数を減らして!」

 アンジュリーンとカミュルイアンも細かな連携を取ろうとしていたので、アリアリーシャは安心する。

「レオン! こっちも始めるわよ」

「分かった。一番右を最初にやるよ」

 それだけ言うとホバーボードを走らせて右側に迂回するように移動して右端の魔物に向かうと、アリアリーシャもレィオーンパードの後ろを走り出した。

 レィオーンパードがターゲットにした魔物も方向をレィオーンパードに向ける。

 その動きに合わせてアンジュリーンの矢は分断するように右へ移動させないように中央の魔物に矢を放ち減らす。

 単調な動きで向かってくる魔物にはアンジュリーンも矢を外す事なく走ってくる魔物に致命傷を与えていた。

 レィオーンパードは、ホバーボードを走らせ向かってくる魔物が飛び上がる瞬間自身の体を低くして逆手に持った剣を体を持ち上げつつ腕を上げ首をはねた。

 交差した後ろを魔物の首と胴体が放物線を描いていくと、次の魔物がレィオーンパードの首筋目掛けて飛んできていたのを体を低くしてやり過すと、着地した魔物は追いかけようとしたところを後ろから来たアリアリーシャに首をはねられた。

 アリアリーシャは、レィオーンパードに向かった次の魔物から死角になるように走っており、二匹目の魔物は躱されたレィオーンパードに気を取られ、次の攻撃に備えようと空中で回転していたため、後から来るアリアリーシャに気付いてなかった。

「数は多いけど、あの魔物の叫びに呼び込まれているから動きが単調ね!」

 確実に倒した事を確認しレィオーンパードを見ると、次の魔物に刃を入れるところだった。

 少し先行している事から走ってくる魔物はレィオーンパードに向かっている。

 レィオーンパードが次の魔物に狙いを定め向かうのを確認するとアリアリーシャも走り出す。

 レィオーンパードが自身に近い左側の魔物に狙いを付けると、右側の少し後から迫る魔物を見つけた。

 アリアリーシャは、レィオーンパードの動きに連動するように走り、距離を確認すると一気に方向を変えて右から迫る魔物に向かう。

 魔物はアリアリーシャが向かってくるのを認識すると、目標をレィオーンパードから変えた。

 アリアリーシャは、左手に持つ剣を腕に沿うように手首をかえし魔物より少し右側に方向を変えると、魔物は徐々に左に弧を描きながら走りるようになる。

(本当、単純だわ。狙いを付けた私だけを見て走っている)

 魔物は自身の間合いに入るとアリアリーシャの首を狙って飛び上がった。

 その動きに合わせるように左拳を突き出し魔物の開いた口の下に手首をかえして剣の刃を首に入れる。

(ちょっと、浅いか)

 切先が辛うじて骨に当たる感覚を感じつつ、魔物と交差すると次の魔物の位置を確認してから倒した魔物を確認する。

(即死とはいかなかったけど、致命傷は与えられたわ)

 魔物は、地面に横たわって首があらぬ方向に曲がって足掻いていた。

 時間の問題だと確認するとレィオーンパードと魔物の位置を確認し、次の獲物を探して走り出す。

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