第21話 第二の狩
聞き耳を立てたアリアリーシャは直ぐにレィオーンパードを見た。
「ちょっと、直ぐ側に二匹いるじゃないの」
二箇所を指差すと、レィオーンパードは言われた方向に目を向ける。
場所を確認できたと言うようにウンウンと頷く。
「そうだね。二匹同時になってしまいそうだけど、回り込む方向を考えながらだったら大丈夫かな」
そう言いながら、二匹の居場所周辺も確認するように見る。
「うーん、ひょっとすると、もう二匹居るかもしれない」
「えっ! そうなの?」
「うん。風の流れに違和感が有った。多分、全く動かず音を立てないようにしているんだと思う」
レィオーンパードに言われて、息を潜めて完全に止まっている魔物となれば音での判断は難しい。
そんな場合なら目の良いレィオーンパードの方が隠れている魔物を見つけやすい。
納得すると、素直に認めると言いたそうに肩の力を抜いた。
「そうね。私はわずかな動きを聞き分けるけど、完全に動きを止めてしまっていると聞き分ける事はできないから、目の良いレオンの方が正確に見つけられるわね」
素直に納得するアリアリーシャにレィオーンパードは、最初に引く魔物に目星をつける。
「それで、私の見つけられなかった二匹って、どの辺りなの?」
連携するなら自分の見つけた魔物の位置を知らせておく必要があるのに、知らせて無かった事に気がつく。
「ああ、あそことあそこかな。一番近い魔物から始めるけど、倒すまでは残りの魔物に気を付けるようにしよう」
レィオーンパードが、自分の見つけた魔物の位置を伝える。
「そうね」
位置を伝えられた場所を凝視すると、わずかな風で靡く草に微妙な違和感があるが、言われなければ見過ごしてしまうような違いに、改めてレィオーンパードの目の良さをアリアリーシャは実感させられると、悔しいというより仲間である事に感謝しているようだ。
「この辺りの魔物なら、私達一人でも倒せる魔物と言っても、それは一対一での話なの。複数の魔物となったら別物よ。同時に二つの敵を相手にしないというのは戦略の基本。いくら魔物は連携しないと言っても、同時に同じ獲物を襲う事はあり得るわ。魔物を追いかけていたら横から襲い掛かられるなんて事もある。それは絶対に避けないといけないから、お互い気を付けないといけないわね」
「そうだね」
二人は、見つけた魔物をお互いに見つつ、不安要素に対する対策を確認しあった。
「それじゃあ、囮に行ってくる」
「気をつけてくださいぃ」
お互いに確認した魔物の位置から移動経路も検討をつけたので実行に移ろうとする。
「ねえ、こっちの準備はできているのよ。レオンはいつになったら動き出すのよ!」
「ああ、もう始める」
「もう」
二人が魔物の位置を確認していた事に気が付いていなかったアンジュリーンが痺れを切らしたのを、レィオーンパードは面倒臭そうな表情をする。
アリアリーシャは、そんな二人の会話を聞きつつお互いの表情を確認して少しおかしいという表情をした。
「全くもう。でも、アンジュらしいわ」
空気を読まない態度にムッとするのではなく、仕方がないというように独り言を呟くアリアリーシャの声を聞いて、レィオーンパードはチラ見する。
「じゃあ、俺、行くから、姉さんも上手く回り込んでね」
「レオンも上手く引いてね」
レィオーンパードが、ゆっくりと動き出す。
しかし、確認した魔物の方向ではなく迂回するように離れた方向に移動すると、徐々に一番近い魔物の方に方向を変えていく。
その様子を見つつ岩の横に立つカミュイアンの隣に移動する。
「なるほど、あの辺りで引っ掛けようとしているのね。それなら」
レィオーンパードの動きから魔物の動き出すだろう位置を予想し、自分の行動を予測するように視線を動かす。
「レオンは一番近い魔物に向かっているわ。横から引っ掛けるつもりよ」
そう言って魔物の潜んでいるだろう位置を示すと、二人はいつでも弓を引けるように矢を添え直ぐに構えられるようにする。
レィオーンパードは、狙いを付けた魔物に近づいていくと、ホバーボードを走り出す方向に向けると横滑りするようにして移動を始めた。
目的の場所に近付いていくと、地面に伏せていた魔物が走り出してレィオーンパードに向かっていく。
その瞬間、ホバーボードを横滑りから通常の方向に走らせる。
「加速なら、この方向が一番早いんだ。思った通りの位置で飛び出してくれて、ありがとう」
加速が始まると縮まった距離が一気に広がるので、途中で魔物の走る速度に合わせ、三人の待つ岩の方に向かうと岩から約20メートルを保ちながら回り始めた。
「そろそろ出るわよ」
「分かったわ。後ろに付いたら牽制する」
アリアリーシャは走り出す。
魔物の後ろに向かって走り出し、視界から隠れたと思えると方向を変えて魔物の走ったラインに乗る。
その瞬間、魔物に向かって矢が放たれた。
狙いは魔物の走る手前に着弾させて怯んだところを後ろから来たアリアリーシャが止めを刺す予定だった。
一射は、魔物の手前に着弾したが、もう一射は魔物の胸に的中して転がった。
その魔物にアリアリーシャが剣を入れようとしたところで止めると岩の方を見る。
「ちょっとぉ、私の止めはいらないじゃないのぉ!」
足元の魔物は、体から黒い炎をあげていた。
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