第19話 アリアリーシャの戦略
次の陣地にするための岩の周囲に居た魔物は、レィオーンパードが囮となってカミュルイアンとアンジュリーンが弓矢で無事討伐することができた。
レィオーンパードが岩の周りを遠巻きに周回し岩の隙間に魔物が潜んでないか確認していると、三人は岩に向かって歩いていくが、アリアリーシャは浮かない表情を浮かべていた。
(まあ、これが本来の目的なのだから、二人の弓の精度がどんどん上がってきているから今までと同じ戦略で構わないとは思うのだけど、本当にこのままで良いのかしら)
少し二人から遅れつつアリアリーシャは二人の後ろ姿を見て考えながら歩いていた。
(単調な攻撃が決まってしまうだけだと、ただの狩りだけになってしまう。これから先、この国に生息するより強い魔物と戦うとなったら、これで良いの? ……。あー、こんな時ジュネスなら、どんな戦略を立てるのかしら)
何かを探し求めるように、前を歩く二人のエルフと岩の周りを回っているレィオーンパードを見る。
(そうか、これまでの狩りについて反省すれば良いのよ。失敗した時でも成功した時でも、その行動を思い出して、良かった点と悪かった点を考え修正していくだったわ)
何かを思いついたというように前を歩く二人を見た。
(最初から考えてみると、アンジュの弓の精度は良くなかったのは、動く魔物の速度を計算できてなかったから、その様子を見てカミューは牽制して魔物を止めたりしてたわ。アンジュの不器用な部分は、カミューも分かっているから牽制してアンジュの矢を当て易くしてあげてたけど、慣れたと思ったら今のように自分も普通に狙って当てていたわ)
アリアリーシャは前の二人を比較するように見る。
(アンジュも移動する標的に対しても慣れてきたみたいだし、カミューもアンジュの動きに合わせて牽制するか当てるのかを考えながら狙いをつけていたわ。斜めに移動してくる的になら当てられると思ったから、カミューも魔物に当ててきたのか。……。きっと、あれが、同じ年数を生きてきた事による阿吽の呼吸なのでしょうけど、アンジュは理解できているのかしら?)
少し笑みを浮かべると、何かに閃いたようだ。
(そうか。この後は、最初に失敗した時のように岩の周りを回らせて、アンジュの矢の精度が良くなっているのか確認していった方が良いのか。でも、当てられれば良いけど、また、外してしまったら、自信が無くなってしまいそうだわ。そうなると、また、同じように斜めに走らせる? でも、同じ事をしたら、流石のアンジュでも気がつくわよね。そうなってしまったら心が折れないかしら)
気になる様子でアンジュリーンの後ろ姿を見る。
アンジュリーンは、得意気にカミュルイアンに何か話しており、カミュルイアンは困った表情で話に合わせて時々苦笑いを浮かべていた。
(そういえば、カミューは最初から矢で倒そうとはしてなかったのは、難しい横への動きに対して狙う事が難しいから牽制して動きを鈍らせる事に徹していたって事なの?)
考え事をしつつ歩いている事と、歩幅の小さいアリアリーシャは徐々に二人との間が開いていく。
身長が小さい分、足の長さも短い事から普通に歩いたら遅れてしまうので、いつもはメンバーに合わせるように歩幅を大きくするなり、少し早足になるなりして周りに合わせていたが、今は自身の歩幅で歩いていた。
(そうか。それなら、矢で魔物を倒させなければ良いのか。これはパーティー戦なのよ。それに、私は今まで戦果をあげてなかったし、囮と矢による攻撃だけで完結させず、もう一つ攻撃の方法を考えれば良いって事じゃない。矢で仕留めるのではなく、次の攻撃で仕留める為に使う矢にさせれば、アンジュも納得できるはず。まあ、その結果、魔物に矢が当たって仕留めてしまったとしても問題は無い。戦術の延長線上に矢が魔物に当たったとなるだけなのよ)
ウンウンと頷いてアンジュリーンを見続けている。
(いずれにせよ、横に移動する魔物を矢で狙うなんて簡単に当たるわけがないのだから、それを行わせるより、牽制に徹しさせて動きに合わせて狙う位置の感覚を味わってもらえば、徐々に精度も上がるはずよ)
そして、何か思いついたようだ。
(そういえば、私は今まで魔物と戦っていないのだから。うん、それなら、二人に横に動く魔物を牽制させて止まった所を私が止めを刺す戦法にすれば良いのか。なら、レオンに円を描くように追いかけさせた魔物の後ろを追いかけるようにして、二人に矢で牽制して動きが鈍った所を、私が後ろから急所を突くという戦法なら、……。いけるかもしれない)
納得すると軽く走り出して、カミュルイアンと並んで歩くアンジュリーンの横に来た。
「ちょっとぉ、今度は趣向を変えてみたいのですがぁ、聞いてもらえませんか?」
アリアリーシャは、笑顔で二人に言う。
「何よ」
「アンジュ、その言い方は棘があるよ」
「戦い方の提案でしょ。ちゃんと聞きたいと思っただけなのに、棘があるってどういう事!」
「あ、いや、聞く気があるのか気になっただけさ」
「失礼ねぇ! 私だって作戦は、ちゃんと聞くわよ!」
「ありがとうございますぅ。二人とも聞いてくれると分かったからぁ、大丈夫ですぅ」
二人の会話にアリアリーシャが慌てて入る。
「これまではぁ、私の出番が有りませんでしたからぁ、次は私も出たいんですぅ」
「そうね。ほとんど私達だけで終わってたわね」
「うん、良いんじゃないかな」
二人の同意が取れたので、アリアリーシャは、今まで考えていた内容を説明し始めた。
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