第18話 第二ポイントの掃討


 アリアリーシャの小言が一段落して、三人は歩き出すと少し前でアンジュリーンがムッとした表情で腕を組んで仁王立ちをしていた。

「ねえ! 三人とも、早く来なさいよ。先行している私が囮みたいじゃないの!」

 アリアリーシャはしまったという表情をするが、カミュルイアンとレィオーンパードは、今度はアンジュリーンに小言を言われるのかと嫌そうな表情になった。

「囮は前衛遊撃のレオンかアリーシャでしょ! 私は弓の訓練も兼ねているんだから、一人一人役目を守ってくれないと困るわ!」

 両手を腰に当てるとムッとした表情で言うのを、アリアリーシャは気まずそうに見るのをアンジュリーンは不思議そうにするだけで、直ぐにレィオーンパードに視線を向けた。

「ねえ、買取価格の高そうな魔物って、この辺りなの?」

(さっきの話は聞かれてなかったみたいね。まあ、先頭を歩いて、私達と少し間も空いていたわ。前方の警戒をしていたから聞こえてなかったみたいね。まあ、一つの事に集中し過ぎぽいところがあるから、後ろで喋っていた私達の話は聞こえてなかったのか。聞かれていたら、きっと、食ってかかられたでしょうね)

 アリアリーシャは、アンジュリーンの表情と話した事を聞いて表情が戻ってきた。

「あ、ああ、もう少し先かな」

 慌てて周囲を見渡すと右手で方向を示した。

「あの岩の先の辺りになるよ」

 レィオーンパードは、200メートル程先にある岩を示した。

 アリアリーシャとカミュルイアンは、その方向に視線を向けると、アンジュリーンは、体を捻って岩を確認し位置が分かると三人に向き直ると、アリアリーシャは耳をたてた。

「じゃあ、あの岩を中心に、さっきの要領で狩るわよ」

 そう言うと動き出そうと振り返り一歩踏み出す。

「待ってくださいぃ、アンジュ」

 踏み出した状態で踵を中心に回転させて向き直る。

「まだ、何かあるの?」

「あそこの近くにぃ数匹の魔物が居ますぅ」

 アンジュリーンは最初の陣地にした岩にも魔物が隠れている事を思い出したという表情をする。

「アンジュ、さっきも岩の隙間から魔物が出てきたでしょ。忘れたの?」

 レィオーンパードが、指摘するとムッとした。

「わ、忘れてないわよ! レオン! さっさと、岩周辺の魔物を処理するわよ。こっちに引っ張ってきなさい!」

 そう言って、次の岩の方を向くと自身の弓の準備を始める。

 カミュルイアンもアンジュリーンの横、5メートル程離れた位置に移動して同じように弓の準備を始めた。

「カミューは、本当に優しいわねぇ」

 何も言われなくても、アンジュリーンをフォローするように動いた事に感心したようにアリアリーシャがボヤくと、それを聞いていたレィオーンパードはアリアリーシャの表情を伺うように見てからカミュルイアンを見る。

 顎に人差し指を当てて空を見ると、何かを閃いた様子でアリアリーシャを見た。

「それじゃあ、姉さん。俺、行くから。また、ナビ、頼むよ」

 そう言うとホバーボードをゆっくり進め始める。

 レィオーンパードが動き出すと、アリアリーシャも歩いてアンジュリーンとカミュルイアンの間に陣取った。

 万一、魔物の討伐に失敗して、囮になっているレィオーンパードから二人に狙いを変えてきた時は自分が対応する事を考え、どちらに向かってきても問題無いようにと配慮する。


 三人の準備が終わる頃にレィオーンパードは、次の陣地にする為の岩の付近に向かっていた。

 今まで陣地にした岩も隙間に魔物が隠れていたり、周囲にも魔物が潜んでいた事もあり、その岩周辺の魔物を狩って安全を確保する為、レィオーンパードは、風によって靡く草の動きを確認する。

 魔物が隠れている場所は、魔物の体によって微妙に風の流れに変化があり靡く草の方向が違ってくる。

 ゆっくり次の陣地にしようと考えている岩の方に移動しつつ、その動きの違う草を確認していると目つきが変わり何箇所かに視線を送った。

(あそこ、それに、あそことあそこか)

 周囲の風の流れを確認し草の中に隠れている魔物に見当を付けると一番近い魔物の方に向かいながらホバーボードを後ろ向きにしてゆっくり近付いていく。

 その場所から飛び出す瞬間を待ちながら進む。

 魔物は自身の間合いに入ると一気に飛び出して走り出し襲ってくるが、ホバーボードの加速なら、魔物が走り出した瞬間に逆方向に加速させれば追い付かれる事は無い為、結果として魔物は追い掛けるだけになる。

 そのタイミングを測るように後進して進むと、伏せていた魔物が飛び出してきた。

「よし、掛かった!」

 レィオーンパードは、魔物が動き出す瞬間にホバーボードを最大加速で来た道を戻る。

 逆加速に掛かる分だけ間合いを詰められるが、直ぐにホバーボードに乗るレィオーンパードの速度が勝り間隔が開く。

 自分の思った距離になると魔物の速度に合わせて間隔を保つように速度を落とす。

 全速力で魔物が追い掛けてくるのを、間隔を一定に保ちつつ三人の待つ右側に向かって一直線に進むと、斜めに向かっているレィオーンパードの横を二本の矢が通過し後ろの魔物に向かって一直線に飛んでいった。

 アリアリーシャが両手を丸く頭の上で合わせると、レィオーンパードは後ろを振り返り、二本の矢が魔物に命中している事を確認すると、速度を落として倒した魔物の所に戻る。

 そこには胴体に一本、首にもう一本、矢が刺さって息絶えた魔物が黒い魔素を炎のようにあげていた。

 レィオーンパードも三人に向かって腕で大きな丸を描くように両手を頭の上に作った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る