第17話 レィオーンパードの嘘
レィオーンパードがアリアリーシャの横に行くと速度を合わせ、少し前を歩くアンジュリーンの後を二人で追うように移動する。
アリアリーシャは、身長130センチと小柄であり、身長165センチのレィオーンパードはホバーボードに乗っていたので、いつもより高い位置を見上げていた。
レィオーンパードとしても、勝ち気なアンジュリーンの性格は少し苦手意識を持っていた事と、前衛で一緒に遊撃を担当する事もあり、亜人である事と柔らかい口調で接してくれるアリアリーシャには、カミュルイアンの次に好感を持っていた。
その為なのか無意識にアリアリーシャの横に並んだようだ。
隣を自分と同じ速度で移動するレィオーンパードを見るアリアリーシャは、少し面白くない表情をするが直ぐに笑顔になった。
「まぁ、レオン。それだとぉ、ジュネスと身長がぁ、大して変わらないですねぇ」
「え、そお。にいちゃんと同じ位かあ。もう少ししたら、この位の身長になるのかなぁ」
嬉しそうに答えながら周囲の様子を確認する。
それを見ると、アリアリーシャは反対を向いて顔を顰めるが、直ぐに表情を戻してレィオーンパードを見た。
「ねぇ、レオン。さっきぃ、あっちの方にぃ買取価格の高い魔物が居たと言ってたわねぇ。何で知っているのよ!」
最初は優しい口調で聞いていたが、最後は口調がキツく言うと、レィオーンパードはギクリとした。
威圧された事と、買取価格の高い魔物の場所を知っている事を言われて困った表情になる。
「えっ! ああ、うん」
その表情と、しどろもどろになって答えに詰まると、アリアリーシャは何かを確信したようだ。
「あんた。ホバーボードを時々持ち出していたけど、この辺りで走り回っていたから、この辺りの魔物に詳しかったって事でしょ!」
「そ、そんな事、ない、よ。ちょっと、小耳に挟んだ、だけ、だよ」
「誰に聞いたのよ!」
間髪入れずに聞かれて、レィオーンパードは慌て出した。
「え、ああ、そのー、誰だっけ」
アリアリーシャは、ガッカリする。
「そこで、ギルド支部で誰かが話しているのを聞いた位の事を言えないなら、レオンが見て知っていたって事よ。上っ面の嘘なんて直ぐにバレてしまうの。遊びたいのは分かるけど、一人で走り回ったら危険でしょ」
いつもの語尾を伸ばす口調ではなく威圧するような口調だった事もあり、レィオーンパードは怯んでしまい言い訳を考える余裕がなくなったようだ。
「大丈夫だよ。この辺の魔物の速さも分かっているし攻撃パターンも知っているから問題無いよ」
アリアリーシャはため息を吐いた。
「そう、だから最初の魔物も簡単に倒せたって事ね」
「そうなんだよ。あいつら、こっちの急所だと思って、首を狙って飛び上がってくるんだ」
それを聞いてアリアリーシャは完全に納得し、レィオーンパードをジロリと睨んだ。
「その魔物を狩って一人で換金して、そのお金でお店で何か食べていたのね」
レィオーンパードは、自分の今までの行動を見透かされていた事に戸惑ってしまった。
「そうだったんだね。最近、レオンが一人でお店に入っているけど、どうしたんだろうって思っていたけど、この辺りで魔物を狩って稼いでいたのか」
追いついてきたカミュルイアンが言うと、レィオーンパードは自分が口を滑らしてしまった事に気がつき、口を手で覆い隠すが言った事を思い出すと諦めたようだ。
「もう、本当に仕方がないわねぇ」
アリアリーシャはため息を吐く。
「ホバーボードは、ジュネスとシュレが考えた物なの。だから、あなたと私の二つしか存在しないのよ。それを他人に見られたらどうするのよ」
「だ、大丈夫だよ。ここは、街道からは丘が有るから見えてないよ。それに、狩をしている人がいたら、ホバーボードは使わなかったから見られてないよ。ほらぁ」
そう言うと街道と並行にある小高い丘を指差す。
「どうかしらね」
アリアリーシャが納得してくれないと思うと、レィオーンパードは反省気味になる。
カミュルイアンは、それが可哀想だと思ったようだ。
「レオンは、目も良いから、遠くに居る人なら見つけられるはずさ。きっと、大丈夫だったんじゃないかな」
カミュルイアンの弁護を聞くとアリアリーシャは軽く睨むように見た。
「カミューたらぁ。こういう時はしっかり言わないとダメなのよ。何でも許していたらアンジュみたいになってしまうでしょ。あなたがもっとしっかりしていたらアンジュも可愛く育ったのよ!」
その言葉を聞き申し訳なさそうに黙ってしまった。
「カミューは、おとなしいから、アンジュは自分がしっかりしなきゃってなったんじゃないかしら。自信がないから方針を決められないでいたからアンジュが決める。その結果、強気な性格になってしまった。慎重なのは大事だけど、慎重過ぎて結論を出せないのは問題なのよ」
「ね、姉さん。カミューだって、分かっている事だから、それ位にしないと」
レィオーンパードは庇ってくれたカミュルイアンに申し訳ないと思って口を出すとアリアリーシャは睨みつけた。
「元はと言えば、レオンが内緒でホバーボードを使っていたからでしょ。あんたが余計な事をするから、言いたく無い事まで言わなきゃいけなくなったんでしょ!」
「ごめんなさい」
「まったくもう」
レィオーンパードが謝るとアリアリーシャも気まずそうな表情になる。
「カミュー、ごめんね。言い過ぎたわ」
「うん。でも、いいんだ。本当の事だから」
「カミューは、優しいし、気遣いもできるわ。気遣って言わない事は、美徳でもあるけど、時には害にもなるの。相手の気持ちを考えて傷付かないようにするのも良いけど、行き過ぎはダメ。良い方向に向ける為には時には苦言を呈さないと、取り返しのつかない事になってしまうのよ。だから自分の考えている事も、ちゃんと伝えてあげて。きっと、分かってくれるはずだから」
「うん。心がけるよ」
「きっと、カミューの言葉が一番伝わるはず。だから、頑張ってね」
笑顔で言い、レィオーンパードの方を向き直ると表情がキリッとなる。
「あんたは、戻ったら、ジュネス達を含めて話し合いよ。今まで何をしたのかを全部話してもらうわ。この後、考えられる可能性と、その対策を考えるからね!」
「えっ! まだ、見られているって決まってないだろう」
「何言っているの! 予め想定してあるから対応も早くなる! 何事もことが起こる前に何通りかの対策を考えておくべきなの! 戦いは始まる前に、どれだけ準備したかによって決まる。戦略の基礎でしょ! 学校で勉強した事、覚えてないの!」
レィオーンパードは、更に落ち込んだ。
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