第15話 ルイネレーヌとそのパーティー
ナギシアンは、ルイネレーヌがギルドの高等学校で行われた武闘大会に潜り込んだ時の事を思い出したようだ。
「ああ、あれですか。上手く付き添いに紛れ込んだやつですね。護衛役で側に控えていたフォルツエとウィリオーミが、あの騎士団長が所構わず触りまくるから、かなりイラついたと後でぼやいてましたよ。男を骨抜きにするのは構いませんが、程々にしておかないと、後々大変な事になってしまうかもしれませんよ」
ルイネレーヌは気にする様子も無い。
「女の武器に溺れる男なんて、ろくな男じゃない。あの騎士団長なんてベットの上で、こっちが聞かなくても国の重要な秘密をペラペラ喋ってくれたさ。とんだ腑抜けだったよ」
「そうですね。何度も腰の物を抜いて差し上げたのでしょうから、そりゃ、腑抜けにもなるでしょうね」
ルイネレーヌは、いつもの事と割り切った様子だったが、ナギシアンは面白くなさそうに答えたので、ルイネレーヌはナギシアンの顔を見る。
「何だ、焼いているのか?」
そう言うと、体を擦り動かして横に密着させた。
「あの時だって、お前達も楽しませてあげただろう。あんな腑抜けとやった後は、お前達に上書きしてもらわないと、こっちの感覚が鈍ってしまうから儀式のようなものだ」
すると、ルイネレーヌは、ニヤニヤしながらナギシアンの体の下に自分の手を潜り込ませた。
「何ならここでしてもいいんだよ」
ルイネレーヌが、モゾモゾとナギシアンを弄り始めた。
「姫様、こんな場所ではダメですよ。向こうのメンバー達の事もありますから、宿に戻った後に、全員でお相手させていただきます」
ナギシアンは、少し恥ずかしそうに言う。
「そんな事より、あのメンバーの四人が別行動をしていて、大丈夫なんですか?」
節操の無いルイネレーヌを何とかしようと話題を別の方向に向けると、動かす手を止めて四人の方を見る。
「ああ、問題無いだろう。この辺りの魔物だったら、あいつら一人でも確実に倒す位平気なはずだ。発熱してフラフラで不意打ちでも喰らわないと怪我も負うことは無いだろうな。あのパーティーは、今年の卒業生の中ではずば抜けた戦闘力を持っていたから、きっと、あそこに居る四人と歴代の首席が対戦してもかなうとは思えないな」
ナギシアンもギルドの高等学校で歴代の首席卒業した者の経歴は噂に聞き及んでおり、どの首席も様々な戦果を残していた。
その事を考えると目の前で狩をしている四人を感心した様子で見る。
「そんな実力を持っているメンバーなんですね」
話をしている中、また、狩が始まるのを見たルイネレーヌが一点に集中した。
「それより、あの板は何なんだ! 人が乗って動いているぞ。しかも魔物に追いかけられても平気で囮をして、追い付かれる様子も無い。あの乗り物は何なんだ」
魔物の走る速度と同調するように板の上に乗って移動するヒョウの亜人を見て興奮気味に言うが、ナギシアンは冷めた様子で聞いている。
「何でしょうね」
何やら嫌な予感を感じているようだ。
「風魔法を使っているのは確かなのか?」
「ええ、多分、風魔法によって走っていると思いますが、何で浮いているのかまでは理解できません。人を風だけで浮かすなら、もっと地面の草が揺れるはずなんですが、その形跡が無いんです」
ナギシアンは自身でも風魔法を使う事から、同じような方法を取った場合の事を考えていた。
今まで見入っていたのは、その理由が思い浮かばなかった事から思案を巡らせていたようだ。
「そんなものはどうでもいい。それより、あれ、欲しいな」
それを聞いてナギシアンは嫌そうな表情をした。
「頼んだらどうです。お金さえ出せば売ってくれるかもしれませんよ。それより、よくギルドが黙っていますよね。あんな珍しい道具を放置しておくなんて。ギルドは、依頼を仲介したり、魔物のコアを買い取るだけじゃなく、ギルドの作る便利な魔道具を販売してますからね。あれを放置しておくとは思えないのですけど」
ギルドは、魔道具の販売でも利益を得ている。
この世界の大半の魔道具はギルドが販売しており、個人や商会がオリジナルの魔道具を販売する事は珍しい。
ギルドは、大陸の国に支部を置き、様々な情報を集めており、気になる魔道具などを見つければ、必ず声をかけてギルドで優遇する事で販売権を得ていた。
二人が見た事も無い宙を浮く板をギルドが放置しておく事の方が不思議な事に思えるのだ。
すると、ルイネレーヌは、ニヤリとした。
「そうだな。その手があったか。ギルドなら良い伝手があった。フフフ」
ナギシアンは嫌そうな表情をするとルイネレーヌを見た。
「また、ですかぁ。そんな事をせずとも、彼らに交渉して売ってもらった方が良いと思いますよ」
ナギシアンは、ルイネレーヌの考えている事が理解できたらしく、別の方法を提案してきたが、そんなナギシアンをルイネレーヌはいやらしそうな目で見た。
「何だ。焼いているのか?」
「いえ、そう言うわけではありません。ご趣味の一環でしょうから、どんな男と寝ようと私は何も言いません」
「大丈夫だ、使った後は綺麗にしてくるし、帰った後はお前達に上塗りしてもらう」
それを聞いてナギシアンは少し顔を赤くして困ったような表情をすると直ぐに青い顔になった。
(誰かとした後って、めちゃくちゃ激しいんだよなぁ。一人相手にしてきたんだから満足してくれればいいのに。全員食うんだからなぁ、この人は)
「何だ、ナギシアン。何なら今からここでしてもいいんだぞ」
「な、何言っているんですか! こんな街道沿いの丘の上で、昼間っからなんてしませんよ」
「そうなのか? 私は人に見られていた方が燃えるんだがなぁ」
「そんな事より、あっちの板をよく見ておかなくていいんですか?」
聞かれるとエルメアーナはクルリと転がって仰向けになった。
「もう、構わない。入手先の目処はたった」
空を見上げながら、考えをまとまったと余裕の笑みを浮かべると、その表情を見たナギシアンは困ったような表情をする。
仕方無さそうに、また、四人の狩を眺め始めた。
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