第13話 不意打ち
レィオーンパードは、アンジュリーンの外した矢を取りに行く。
ゆっくりとホバーボードを進ませるのは、周囲を警戒しつつ万一見つけてない魔物に襲われない為でもある。
ゆっくり走らせ矢に近付いていくと、横風に僅かに煽られ軽く横に振られた。
「おっと」
レィオーンパードは風に揺られたが、バランスを崩す程ではなく直ぐに体勢を戻す。
「レオン!」
アリアリーシャが声を上げると、レィオーンパードの風下の方から魔物が飛び出すと一気にレィオーンパードに向かって走り出した。
「随分と遠くなのに、よくレオンの事が分かったわ、ねっ!」
アンジュリーンはボヤきながら弓を構えて狙いを付けていると、岩の上からカミュルイアンの矢が放たれた。
その矢は、魔物の走る先の方に刺さると魔物は止まり、矢の放たれた方に顔を向ける。
すると、アンジュリーンの矢が魔物の眉間に向かって放たれた。
しかし、魔物までの距離が有った事と、矢の放たれた方を見ていた事から、横にステップして躱されてしまいアンジュリーンを威嚇した。
「ちっ! 距離があるせいで躱された!」
しかし、その隙をつくようにレィオーンパードがホバーボードで魔物と交差すると魔物の首が飛んだ。
レィオーンパードは、カミュルイアンの矢が地面に刺さると同時に反転しており、魔物に向かってホバーボードを走らせていた。
魔物は矢の来た方向に顔を向けており、その時アンジュリーンの矢が放たれたのを確認し回避行動を取っていたのでレィオーンパードが迫っている事に気付かずにいた。
その隙にレィオーンパードは剣を抜いて魔物の横を通過する際に魔物の首を斬り裂いたのだ。
「レオン! 次よ!」
魔物に躱されたアンジュリーンの矢は別の魔物が隠れている近くに着弾しており、その魔物が飛び出してレィオーンパードを狙って走り出していた。
「このまま引く! さっきの要領でいく!」
レィオーンパードは叫ぶと、魔物に追いかけさせて真っ直ぐにアンジュリーン達の少し左側を通過するラインを取った。
魔物は一直線にレィオーンパードを追いかける。
カミュルイアンとアンジュリーンは弓を構える。
「アンジュ! 先に牽制するから、その後に仕留めて!」
カミュルイアンが言うと直ぐに矢を放つ。
その矢は魔物の前に着弾する。
一瞬、魔物が走るのを止めると同時にアンジュリーンが矢を放ち、その矢は魔物の眉間を撃ち抜いた。
「すごいですぅ。三人の連携でアッという間に二匹の魔物を倒しましたぁ」
三人に拍手を送っていた。
「いやー、何も相談していないのにぃ、あんな難しそうな連携をしてしまうなんてぇ、歴戦の勇者みたいですぅ」
横にいるカミュルイアンは、少し胡散臭そうにアリアリーシャを見るが、アンジュリーンはドヤ顔をしていた。
「ふん、私の矢で、また、一匹仕留めたわ! 最初の魔物だってギリギリ躱されたけど、あのお陰でレオンの接近を悟らせなかったのよ」
その様子をアリアリーシャは残念そうに見るが、アンジュリーンはニヤニヤしながら褒めてもらう言葉を待っているようだ。
「何よ。あれだって、カミューの牽制が有ったからでしょ。アンジュの矢が確実に当たるようにしてくれたのに、理解できないなんて、本当に残念エルフね」
小声でボヤいたのでアンジュリーンには聞こえていなかった。
「アリーシャ。レオンが回収しているから、魔物が隠れてないか探索して」
カミュルイアンは、アリアリーシャのボヤきは聞こえていたが、レィオーンパードの様子を伺ったまま警戒を解いていなかった。
今のように遠くから飛び出してくる可能性もあるので、矢と魔物のコアの回収のフォローを行なっている。
「大丈夫よ。ちゃんと聞き耳は立てているわ」
レィオーンパードのフォローに入っていたカミュルイアンは、いつでも矢を放てるようにして念のため伝えたが、アリアリーシャも警戒は怠っていなかったと分かると安心してレィオーンパードの周囲を警戒する。
「でも、何であんな場所から魔物が飛び出して来たのよ! 普通なら、もっと近付いてからじゃないの? あんなの狩られて下さいって言っているようなものじゃない」
アンジュリーンは、二人が声を掛けてこないので仕方なく話を切り替えるが、レィオーンパードの周囲の異常を確認しようと聞き耳を立てていたアリアリーシャは険しい表情になった。
「アンジュ! 静かにして。魔物が襲う前に風が流れたでしょ。レオンの匂いが魔物に流れていったのよ」
アンジュリーンはムッとするが、言っている事が正しい事も有り黙り込むと、レィオーンパードの方に視線を向け矢筒から矢を抜いて弓に当てると、カミュルイアンと同じように、いつでも狙いを付けられるようにした。
「さっき、大丈夫だって言ってたのに。警戒し過ぎじゃないの」
聞こえない程度の小声で呟いた。
「アンジュ! 黙って!」
聞こえないと思っていたのにアリアリーシャには聞こえていた。
その注意を聞くとアンジュリーンは、ムッとした様子で歯を見せていた。
しかし、二人に倣っていつでも弓を引けるように構えている。
レィオーンパードは、三人の様子も知らず周囲を警戒しつつ使われた矢と魔物のコアを回収し無事に戻ってくる。
「アンジュ。コアと矢は回収したよ」
そう言って手渡すと岩の上のカミュルイアンにも矢を渡した。
「この調子ならぁ、結構稼げそうですねぇ。アンジュの服も買えるだけのコアが集まりそうですぅ」
「そうね。じゃあ、続けて魔物を狩るわよ。次の魔物を探して!」
アリアリーシャの言葉がアンジュリーンには嫌味に聞こえたのか面白くなさそうに答えた。
「そうね。時間は有限だから一匹でも多く狩りましょう」
カミュルイアンとレィオーンパードは目を合わせると、ヤレヤレといった表情をし狩を続けた。
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