第5話 四人の狩


 アリアリーシャとレィオーンパードの準備が整うと、四人はギルド支部に向かおうとすると、レィオーンパードはホバーボードを抱えていた。

「あんた、それ持っていくの?」

「うん。実際に魔物と戦う時の事も考えて使ってみようと思うんだ」

 アンジュリーンは納得するとアリアリーシャを見た。

「え、私はぁ、まだぁ、……。もう少し慣れてからにしますぅ」

「そうね。慣れないホバーボードを使うより、いつもの戦闘スタイルの方が効率が良さそうよね」

 練習を始めたアリアリーシャは、まだ、ぎこちない乗り方だった事を考えたら納得できたようだ。

「アンジュ。時間も遅くなっているから、早くギルド支部へ行った方がいいよ。この時間に残っているのは、強い魔物の討伐とか、非戦闘の依頼じゃないか」

「そうだったわ。さっさと行くわよ」

 アンジュリーンの変わり身の速さに三人は顔を見合わせ、お互いに言いたい事は分かっているというようにヤレヤレといった表情をした。

「ねえ、今からギルドに行って依頼なんて有るの?」

「無理だろうね」

「無理ですぅ」

 レィオーンパードは疑問を口にすると、二人は同じ回答をした。

 三人とも今から依頼を受けられるとは思っていないがアンジュリーンに意見を言う事を躊躇ったのだ。

「そんな事、俺でも分かるのに、一番歳上のアンジュには分からないのかなぁ」

「レオンの言うとおりですぅ」

「ごめんね」

 二人が少し不貞腐れたように言うとカミュルイアンは申し訳なさそうに言う。

「ねえ、三人とも、急ぐわよ。早くしないと依頼が無くなってしまうわ」

 その言葉に三人は慌てて後を追った。


 王都のギルド支部に入るとアンジュリーンはスタスタと受付カウンターに向かい、その後を三人が付いて行った。

 受付カウンターには受付嬢達が事務処理を行なっていた。

 アンジュリーンはいつもの受付嬢の前に行く。

「ねえ、何か討伐の依頼は無いかしら? 討伐じゃなくても割りの良い依頼でも構わないのだけど」

 受付嬢は事務処理を途中で止めて顔を上げると申し訳なさそうな表情をアンジュリーンに向けた。

「大変申し訳ありませんが、もう、残っている依頼はございません」

「あら、そう。ありがとう」

 アンジュリーンはあっけらかんと答えると後ろに居た三人を見る。

「依頼は無理みたいだわ。どこかの狩場に向かうわよ」

 それを聞いて、三人は当たり前だろうという表情で聞きつつ、アンジュリーンの後ろにいる受付嬢の表情を確認していた。

 その表情には、三人を労るような様子で視線を向けていた。

「それじゃぁ、北のぉ林でぇ、ピョンピョン跳ねるぅ魔物にしましょうかぁ」

「いいんじゃないかなぁ」

 カミュルイアンがアリアリーシャに同意する。

「林はなぁ」

 そう言って抱えているホバーボードを見た。

「こいつを使ってみたいから、俺は東の平原の方がありがたいんだけど」

「そうね。レオンはホバーボードで魔物を狩る練習をしたかったのなら、東の平原で決まりね」

 アリアリーシャとカミュルイアンは、驚いた表情でアンジュリーンを見た。

「さ、狩場も決まったから、さっさと行くわよ」

 そう言うと出口に向かったので、三人はため息を吐いて後を追うと、その様子を残念そうに声をかけられた受付嬢が見送った。

「ねえ、ちょっと、あの四人って、ジューネスティーンのパーティーの人じゃないの?」

 隣に居た受付嬢がアンジュリーンに声を掛けられた受付嬢に聞いた。

「ええ、そうよ」

 その答えを聞いて残念そうにする。

「ねえ、ギルマスがボヤいていたの忘れたの?」

「?」

 その反応にため息を吐く。

「本部から、ジューネスティーンの居場所を探せって指令が来たけど、学校を卒業した後、活動してないから居場所が分からないのに、ギルド本部から連絡を取れって言われて困っていたでしょ」

「そうだったわね。でも、今の四人じゃないわ」

 答えを聞いてイラッとした表情をする。

「あのね。ジューネスティーンを探しているのだから、そのパーティーメンバーなら居場所を知っているかもしれないし、場合によっては同じ場所に住んでいる事だって考えられるでしょ!」

 言われて、やっと気が付き慌てて入口の方を見るが四人の姿は無かった。

 困った様子で同僚の方を見る。

「ど、どうしよう」

 慌てた様子で聞き返すと、やりきれないという表情をする。

「あのね。さっき、あの四人は狩に行くって言ったのよ。何の依頼も無く狩に行く冒険者が、動物を狩ってくるなんて事は無いの。狩るのは魔物でしょ! 魔物だったらコアを売りに来るわ。その時に確認すれば良いでしょ」

 言われて、気が付くと落ち着いた。

「そうか。戻った時に確認すれば良いのよね」

 アンジュリーンと話していた受付嬢は安心していたが、話し掛けた受付嬢は不思議そうな表情をしていた。

「そういえば、あのヒョウの亜人は、変な盾を持っていなかった? 細長かったし、あの体型で盾役なの? ちょっと大きな魔物と対戦したら吹っ飛ばされてしまいそうだったわ」

「あそこの盾役はリーダーのジューネスティーンだったはず、彼は遊撃担当だったと思います」

「じゃあ、なんで、あんな変な盾を持っていたの?」

「さー、何ででしょう」

 話し掛けた受付嬢は、残念そうな表情をした。

 これ以上話をしても無駄だと思ったのか、苦笑いをすると自身の事務処理の続きを始めたので、アンジュリーンと話をした受付嬢も事務処理に戻った。

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