第4話 残念なアンジュリーン


 アリアリーシャは、アンジュリーンが狩に誘った理由が、新しい服を買いたいからだと言わせ、その理由が、自身の体型に対するコンプレックスらしいと理解したようだ。

 それが、どうも自分の体型がグラマラスに変わった事が原因らしい事も分かったようにアリアリーシャは顔を下に向けて自身の胸を見た。

(同じにジュネスのトレーニングに付き合っていたけど、あの筋力を付ける方法だけをしていると、脂肪は落ちるのよねぇ。アンジュは、小食だったからトレーニングに使ったエネルギー以上に食事をしてなかったせいで体脂肪が無いし、それに身長だって少しだけど伸びているみたいなんだから余計に胸だって付きにくいでしょ)

 仕方なさそうな表情でアンジュリーンを見ると、アンジュリーンは恥ずかしそうに頬を赤くしてソッポを向いていた。

(私は、20代後半ともなったら、この130センチの身長が伸びる事は無いでしょうから、結果として上に伸びるんじゃなくて横に付いてしまったのよ! 10代の時間が長いエルフなんて得でしかないわ)

 一瞬、鋭い視線をアンジュリーンに送るが気づかれる前に表情を戻した。

(まあ、私は年齢的な事もあるから変な所に付かないようにぃ、ちゃんと、欲しい場所に付くようにってしていた。ん?)

 アリアリーシャは何かを思い出すような表情をした。

(アンジュも知っているはずよね。私が空いた時間にくびれを作るようにとか、豊胸のトレーニングをしていたのを見てスルーしてたじゃないの)

 アリアリーシャは、一瞬、ジロリと睨むような目で見たが、その様子はアンジュリーンには見えてなかった。

(私は転移から19年、アンジュは転移してきて34年なのよね。人や亜人だったら44歳って、かなり落ち着いた感じだけど、アンジュは見た目通りって事は、過ごした時間より見た目と内面の年齢は変わらないのかもしれないわね。ん? そういえばヒュェルリーンは108歳だけど、見た目は私と変わらないわ。見た目年齢は私の29歳と変わらないのかぁ。あと、10年してもあの人は今と同じ見た目ですものね)

 アリアリーシャは、羨ましそうな表情をした。

(長寿のエルフと亜人の私を比べたらいけないわね。そう、私の方が寿命が短いのだから、私はアンジュの3倍は人生を楽しんだり仕事をしたり充実させなくちゃいけないのよ! その為には体型維持が必須! 若いから手入れを怠っていたら直ぐに崩れてしまうもの。重力に負けてなんていられないわ)

 何かに納得するような表情をするとアンジュリーンを見た。

「そうね。私も買いたい物も有るから、魔物を狩って稼いでおきたいわ」

 その答えにアンジュリーンは意外そうな表情をした。

 アンジュリーンとしたら、アリアリーシャが賛成してくれるか気になっていたが、あっさりと賛成してくれた事を喜んだ。

 すると、アンジュリーンの目の前に立つと顔を見上げた。

「アンジュは、見た目の可愛いさを追求するけど、私は、内面を気にするのよ」

 ニヤリとしてアンジュリーンに話した。

(ふん、若さを長く保てるからって体の手入れを疎かにして外見だけを飾る事にしか興味がないなんて、お子ちゃまね)

 何かを含むような表情で見上げるので、アンジュリーンはドキッとした。

「な、なに、よ」

「いつまで経ってもお子ちゃまの精神のアンジュには分からない事よ」

 勝ち誇った表情をすると、ホバーボードを抱えて庭から家に入って行ったので、アンジュリーンは気になるように見送った。

 それを残りの3人も見ていた。

 黙って二人の会話を聞いていたレィオーンパードがチラリとアンジュリーンの表情を確認する。

(あれって、外観だけを気にするアンジュの事をガキだって言ってたんだよな。分かっている気配はないけど、理解した時、何かトバッチリを受けるかもしれない。この場はカミューに任せておいた方が良さそうだ)

 そして、カミュルイアンを見た。

「そ、そうだね。じゃあ、狩の準備をしなくちゃね」

 アンジュリーンと一緒に居たらマズイと思ったようにレィオーンパードもアリアリーシャの後を追って家の中に入って行ったので、アンジュリーンはカミュルイアンを睨むように見た。

「ねえ、今のアリーシャって、何だか意味有り気だったけど、何の事だか分かる?」

 話を振られたカミュルイアンは、困ったような表情をした。

「い、いや、な、何の事、だろう、ね」

 カミカミで答えたにも関わらず、アンジュリーンはカミュルイアンにも分からなかったのかと諦めたような表情をした。

「でも、良かったじゃないか。狩りに行く人数が4人になったんだから。前衛の遊撃が二人増えたんだから、きっと、稼げるはずさ」

「それも、そうね」

 アンジュリーンが納得するとカミュルイアンはホッとした。

(アンジュは、アリーシャの下着を愚痴っているじゃん。際どいとか、隠れてないとか、上に上手く持ち上げられているとか、男のオイラに愚痴るような内容じゃない事だって言ってるでしょ。あの話から、どうして理解できないのか。本当にアンジュって分かってないのかなぁ)

 そして、ガッカリした。

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