第2話 誘うアンジュリーン
工房に居たジューネスティーンに行き先を告げたアンジュリーンは2階のカミュルイアンの部屋に行くと、ノックもせずにドアを開けた。
「カミュー、ギルドに行くわよ。良い依頼が有れば受けるし、無ければ王都の外で魔物を狩るわよ!」
ベットに寝転んでいたカミュルイアンはびっくりして上体を起こした。
「何よ、何で今時分から寝ているの!」
「いや、ちょっと、考え事をしてた」
慌てて言い訳をするカミュルイアンをアンジュリーンは蔑むような目で見る。
「あんた、食べた後直ぐに横になると太るわよ」
「ち、違うよ。ジュネスがパワードスーツを完成させるまで、何をしなきゃいけないのか考えていたんだよ。ただ、過ごすだけじゃなくて、それまでに僕のできる事が何かないか考えていたんだ」
「ふーん」
アンジュリーンは、カミュルイアンの言葉を疑っているような表情をしていた。
「ねえ、それなら、私に付き合いなさい。魔物を狩る感覚を忘れないようにするのよ」
そう言うと顎をシャクって、ついて来いという態度をしたので、カミュルイアンはベットから降りて自身の装備の用意を始めた。
「レオンとアリーシャも誘って、4人で行動するわよ。ジュネスとシュレはエルメアーナと一緒に話をしてたから、そのままにしておくわ」
アンジュリーンが話している間にカミュルイアンは、革の胸当てを付け始めた。
「なあ、レオンとアリーシャも誘うのか?」
「当たり前でしょ。魔物を狩るなら二人より四人の方がいいわ」
腰にベルトを付けて、ジューネスティーンから貰った剣を腰に差すとアンジュリーンを見た。
「あの二人はホバーボードの練習を裏庭でしているけど、それでも誘うのか?」
アンジュリーンは、言われて気がついたという表情をした。
「レオンは、テストの時から乗っていたけど、アリーシャは最近だから、レオンが見て練習しているんだ。練習の邪魔じゃないのかなぁ?」
言われてアンジュリーンは気がついたようだ。
アンジュリーンとしたら、目的の服を買おうと思ってお金を稼ごうと考えていただけだったので、レィオーンパードとアリアリーシャの課題が気付かずにいた。
「二人を誘うのは良いけど、無理に誘わないでね」
「わ、分かっているわよ。だけど、裏庭で練習するより、王都の外の方が広いから、あっちで練習した方が実戦的だと思うわ」
弓と矢筒を手に取るとアンジュリーンの側に近寄った。
「そうだね。二人に良い提案ができそうだね」
アンジュリーンは、反論されると思ったのか、少し驚いたようにカミュルイアンを見た。
「裏庭に行って、二人に聞いてみようよ」
カミュルイアンは、アンジュリーンの考えている事が理解できているというように言った。
「そ、そうね。行くわよ!」
図星を突かれて、少しオドオドした様子で答えると部屋を出ていくので、カミュルイアンは仕方なさそうな表情をして後に続いた。
裏庭ではアリアリーシャがホバーボードに乗って、ゆっくりと滑るように乗っていた。
「スピードを出すのも良いけど、ゆっくりの方がバランスを取りにくいんだ。ここは狭いからゆっくり走る練習には都合が良いよ」
ホバーボードは、地面から20センチ程の高さをゆっくりと動いていたが、そこに乗るアリアリーシャは、広げた両手をパタパタと上下に振りながら進んでいた。
「姉さん、良い感じだよ。それじゃあ、そのスピードを維持して8の字に動いてみて。ゆっくりだよ」
アリアリーシャは年下のレィオーンパードが言う通りにホバーボードを動かしていた。
レィオーンパードは、ジューネスティーンが作り、シュレイノリアが魔法紋を描いて地面を浮いて移動できるホバーボードの開発段階からテストパイロットを行っていた。
初めての乗り物の開発段階では制御できずに何度も転んだり放り出されたりしてしまい生傷が絶えなかった事から逃げ出したりしていたが、いつの間にかシュレイノリアから逃げられなくなり隠れても見つかってしまい、渋々開発に付き合うようになっていた。
そのお陰で、アリアリーシャが慣れるのに段階的に性能抑制を解除していき、レィオーンパードのように酷い転がり方をする事はなく徐々に慣れる事ができた。
そして、今は性能抑制を解除して性能を最大限まで使えるようになっている。
その最大性能を発揮できる状況で出力を抑えながら動かせるようにして自在に操れるように練習していた。
「魔物との戦闘に使うから、色々な動きを身につけておくと良いよ」
レィオーンパードが、アリアリーシャにホバーボードの動きを指示すると、それに合わせるように動かしていた。
真剣な様子のアリアリーシャは、レィオーンパードに応える事なく真剣な様子で言われるがままホバーボードを動かしていると、そんな二人の元にカミュルイアンを引き連れたアンジュリーンがレィオーンパードの横に来た。
「アリーシャもホバーボードに上手く乗れるようになったわね」
「うん、シュレが段階的に性能を上げられるようにしたから良かったよ」
「そうよね。最初に出来たホバーボードには、あんたも手こずっていたものね」
アンジュリーンの言葉に、レィオーンパードは面白くなさそうな表情になった。
「あれは、シュレが、姿勢制御も考えずに設計したからだよ。前にしか進まなかったり、ブレーキをと思ったらピタリと止まるから、そのまま放り出されたり、姿勢制御を付けてくれたのは良いけど、曲がろうとしたら直角に曲がるしで、あんな暴れ馬に乗せられていたんだから、生きていたのが不思議な位だよ」
「でも、レオンだったからシュレも色々な魔法紋を試せたんじゃないのかしら。あんたの反射神経の良さを信用していたもの」
二人はアリアリーシャを見ながら話していたが、最後の言葉を聞いたレィオーンパードは意外そうな表情をしてアンジュリーンを見ると、少し嬉しそうな表情をしてからアリアリーシャの様子を確認した。
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