アンジュリーンはカワイイを好む  パワードスーツ ガイファント外伝

逢明日いずな

第1話 3台目のパワードスーツ


 ギルドの高等学校を卒業したアンジュリーン、カミュルイアン、アリアリーシャ、レィオーンパードの4人はギルドからDランクに登録された。

 そして、主席で卒業したジューネスティーンと次席のシュレイノリアはCランクに登録された。

 他の同級生達は、それぞれの道に進み活動を始めていた。

 冒険者になった者、軍にスカウトされて入隊した者も、その道に進んで活動していたが、ジューネスティーン達は冒険者として活動する予定でいたが直ぐに活動は始めずジュエルイアンの勧めでエルメアーナの鍛冶屋兼住居に居候する事になった。

 エルメアーナの住居は、ジュエルイアンが用意していた事もあり、店舗も工房も広く作られ、住居として使う2階の部屋数も多かった。

 エルメアーナとアイカユラの二人には多すぎる部屋数だった事もあり、ジューネスティーン達6人が居候しても十分だった。

 そして、ジューネスティーンは、自身が使う3台目のパワードスーツの制作に入ろうとしていたが問題があった。


 エルメアーナの鍛冶屋兼住居では、工房の隅に置かれたテーブルに、ジューネスティーンの3台目のパワードスーツについて議論を交わしていた。

 ギルドに提出した2台目のパワードスーツの問題点について、駆動用の魔法紋担当であるシュレイノリアと、組立製造の中心となるエルメアーナが参加して対策を議論していた。

「2台目のギルドへ提供したパワードスーツは、実際に動作確認をしたけど、ちょっと重すぎだったから、思ったような動きがなぁ。エルメアーナは、何か軽い金属材料を知らないか?」

「うーん、鉄以外だと、銅か錫ってところだ。どれも、そう大差は無いぞ。銅合金として使うにしても、強度が取れるとは思えない。それ以外となると、貴金属になってしまうし、魔物と戦うには実用的じゃないだろうから、結局、今の材料が一番良いって事になりそうだなぁ」

 ジューネスティーンとエルメアーナは、2台目のパワードスーツの問題点として材料が重い事によって組み上がったパワードスーツが思った以上の性能を出してない事を検討していた。

 材料を軽量化する事によって問題点を解決しようと考えていたが、都合の良い材料が見つからない。

「ふん、私の魔法紋によって、人以上の力を出せているじゃないか。そんなものは魔法紋を強力にしたら済むだろう」

 シュレイノリアは、自身の魔法紋によってパワードスーツを動かせるようにしていたので、二人の会話は面白く無かったようだ。

「いや、シュレの魔法紋を強力にするのも良いが、より性能をアップするなら、軽量化にした方がいい。魔法紋の出力を上げて無理矢理速度を上げるだけっていうのも何だか芸がないと思うんだ。もっと、軽量化したら動きも良くなるなら、シュレの魔法紋を有効に使える事になるはずなんだ」

「動力系が強化されると、それに伴って各部の補強も必要になるから、補強する事になったら、また、重量が増えてしまうからね。魔法紋の強化より軽量で強度が保てるようにした方が戦闘には向いてる。だから、素材から見直しをかけようと思った。シュレだって納得してたじゃないか」

 エルメアーナが説明するとジューネスティーンが補足したので、シュレイノリアは面白くなさそうな表情になった。

「俺は盾役として、目の前で魔物を抑える必要があるから、咄嗟の動きが鈍いのは面白くないし、強度も必要になる。だから、今の強度を維持して軽量化をしたいんだ。レオンやアリーシャ姉さんのヒットアンドウェイにしても、俺が魔物を抑えているから成り立つ作戦になるんだ」

 その説明にもシュレイノリアは、理解していた事でもあり更に面白くないというように頬を膨らませた。

「レオンもアリーシャ姉さんも、ホバーボードを使うといっても簡単な防具だけで戦う事になるから、反撃を受けない為にも俺のパワードスーツの性能は大事なんだ」

 シュレイノリアは、ジューネスティーンの説明が正論過ぎるので、何か言い返そうと思ったようだが黙ったまま面白くなさそうにしていた。

「なあ、ジュネス。やっぱり、鉄で作らないか? ベアリングの時の焼き入れの技術を使えば硬さは増すから、案外板厚を薄くできたりするんじゃないのか? 部品も筒状に作るとか、それに後加工で小さな穴を開けたりとか、溝を掘ったりとかして軽量化するしかないんじゃないか」

 エルメアーナの提案を聞いてジューネスティーンも理解はできたようだが納得はしていなかった。

「ああ、その通りなんだけどねぇ。何だか、鉄の半分位の金属が何か有ったような気がするんだ」

 ジューネスティーンはボヤくように言いながら両手を頭の後ろで組むと、椅子の背もたれに体重をあずけて天井を見た。

 すると、工房の扉が開くとアンジュリーンが入ってきた。

「ねえ、ジュネス。暇すぎる! 私、3人を連れてギルド支部に行ってくるわ」

 元気そうに言うが、問題の解決が見えないジューネスティーンは黙って聞いているだけだった。

「討伐の依頼が有れば受けるし、無ければ適当に魔物を狩ってコアを売るつもりよ」

「ああ、そうだね。4人で行ってくるといいよ。あまり、危険な魔物には手を出さないようにね」

 ジューネスティーンは気のない答え方をしたので、面白くなさそうな表情をした。

「ジュネスは、私達の事を子供扱いしてない? 帝国周辺ならともかく、この周辺の魔物だったら大した事も無いわ。時間潰し程度のつもりだから危険な事はしないわよ」

 少し怒ったような表情をすると工房を出ていってしまった。

「ジュネス。アンジュは、欲しい服が有るから色違いで揃えたいらしい」

「ああ、少し足りないから魔物を狩って稼ごうって事か」

 シュレイノリアが言うとジューネスティーンは、何でアンジュリーンが積極的に狩りに行こうとしたのか理解した。

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