第44話 鬼ごっこ
『なんで俺が狙われているんだよ!』
「そういうルールだから!大人しく捕まって!」
俺は今、水着姿の五人に追いかけ回されている。理由は単純。そういうゲームだからだ。
折角だからなにか競えるようなゲームをしようと、ジュリアによって提案されたことが運の尽き。
あれよあれよと話が進んでいくにつれ、ゲームの内容は、守護者二人と三人に分かれて俺を捕まえた方が勝ちというものに決定した。
「湖の中心に逃げるのは禁止だから!」
そうジュリアに釘を刺されて開始された。
まあ、俺は浮遊しているので湖の中心。つまり深い所に逃げてしまえば、そりゃあ誰も俺を捕まえることはできない。ゲームバランスを保つための措置として、俺は浅い場所や地面以外の場所で浮遊するのは禁止となった。
俺としても楽しいゲームだが、なんとなーく俺が標的にされているのが納得できない。
「ローゼ!そっちから捕らえろ!」
「分かったわ」
エリク、ローゼの二人組が俺を捕まえようと挟み撃ちをしてくる。しかし、黙って捕まる俺でもなく。
『魔法の使用が禁止されていないのなら、いくらでもやりようはある』
そうして俺は、水属性の魔法を使用し周囲に荒ぶる水の障壁を作り出した。
「おい!魔法はルール違反じゃねぇか!?」
そんなこと言われてもな。別にルールに魔法禁止なんて無かったし。
「レイ!今から魔法禁止!」
すぐさまジュリアに魔法禁止令を発令されてしまったので泣く泣く俺は魔法の使用を止めた。
「魔法を使ったレイさんを捕えられるのなんてリリアさんか統括くらいしか思いつきませんしね……」
というウィル。
「レイが本気を出したらリベラート並みだって言うし」
ノアも若干遠い目をしながらウィルの発言に同意していた。
『えー魔法禁止ー?』
「グダグダ言わない!レイが魔法を使ったらどっちが早く捕まえられるかじゃなくてどうやってレイを倒すかってなっちゃうんだし」
まあ確かに。この面子なら俺負けないしな。リリアとリベラートがいたら分かんない。
そういう訳で、ノア班と幹部班に分かれて俺を捕えようと躍起になっているわけであるが、まあ当然ながら能力は使用禁止だ。魔法も。それを許可してしまうとウィルの独壇場となってしまうからな。
水の上という若干動きづらい制約をものともしない皆であるが、やはり幹部の二人の動きはピカイチだった。
「ウィル!なんとかあの二人の動きを封じて!」
「いや、二人同時はかなり厳しいんですが……」
ジュリアによって無茶振りされたウィルが困惑しながら返す。だが、言われた通り幹部二人を足止めしようと二人の前に立った。
「あら、私とやりあう?」
「お手柔らかにお願いします」
そう言って真剣な眼差しでローゼと向き合っているウィル。エリクはと言うと、あっさりウィルの手から逃れている。まあウィル一人じゃきついわな。
というか、俺としては水着姿のローゼ相手に色々と目を奪われないで戦えているウィルに脱帽する。元男としてあれはかなりの凶器だと思うんだがね。
「くっそ、さっさと捕まりやがれ!」
死角から攻めてきたエリクだが、俺だって別に目を背けていたわけではない。エリクが視界外に抜けた時に、来る方向だって予測していた。エリクの体当たりをあっさりと躱す。
「ウィル!エリクが来てるんだけど!」
「そんなことを言われてもどうしようもありませんって……」
ウィルとローゼが肉弾戦を繰り広げているが、能力を使用していないとやはり実力は幹部であるローゼに分があるのか、ウィルは押されている。
ってかそんなに激しく動いても大丈夫なの?と思ったが、中々ガードが堅いらしい。まあ全年齢向けのゲームだからね。水着姿で戦うゲームキャラとか昨今珍しくもなんともないし。
というか強いなローゼ。純粋な身体能力での肉弾戦となるとヒーラーであるローゼは弱そうだというバイアスが掛かっていたのだが、やはり幹部らしい。一手一手ウィルの守りを崩すような攻めをしている。あれは受ける側からすれば嫌そうだ。
そんなウィルとローゼの戦闘を見ているが、俺だって結構大変なのだ。誰にも捕まらないように立ち回るのは。単純に考えて、五人の人間を意識する必要がある。俺は誰にも捕まらないようにしなくてはいけないのだから、追いかけてくる側よりも考えることが多いのだ。
「なんでレイは単純な身体能力も優れてるのさ……!」
そうジュリアに愚痴を吐かれる。ノアとジュリアが共同で攻めてきているが、その全てを俺は空中で体を捻ることによって躱し続けている。
『なんでって、そりゃ魔物は魔力の塊なんだから人間よりも身体能力が優れているのは当たり前だろ。というか俺は聖気も操れるんだからな』
魔力による身体強化や聖気による身体強化などが当たり前となっている守護者たちは忘れがちだが、魔力の塊である魔物の身体能力のポテンシャルはかなりのものである。とは言え、やはり強化上限は存在するので聖気を併用している俺だから可能な芸当であることもまた事実かもしれない。
「なにそれずるい!」
『ずるいと言われてもなぁ~』
少しばかり苛立ったのか、ジュリアは俺を捕えようとするのを止めて、ノアの下へと向かった。何をしているのか分からないが、まあ作戦でも立てているのだろう。
まあ、俺が捕まるとしたら上目遣いのノアにお願いされるくらいしか――
「レイ……お願い、捕まって?」
ないはずである。
クリティカルヒット。コテンと首を傾けながら上目遣いで俺に向かってお願いしてくるノアを前に俺が冷静でいられるわけはなく、俺は素直にノアに捕まるのだった。
「おい!あまりにチョロすぎやしねぇか!?」
「私も魅力で勝負すれば……いや、あれはノアちゃんだからこそね」
なんだかんだでウィルを下したローゼがエリクの隣に来ていた。ウィルは大の字で地面に倒れている。
幹部組は一人は納得できずに声を荒げ、一人は自らの体を見て別のアプローチをすれば良かったかと反省するもすぐに意味がないことに気づいた。まあ?俺はローゼの上目遣いには屈しないし?ノアだから特別だし?
「はぁ、なんか拍子抜けだわ」
そうぼやいたエリクによって、この試合は幕を閉じたのであった。
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