第43話 水中に魔物ってマジでいないのね

 良きかな。実に良きかな。歳若い男女が互いにじゃれあっている姿を見るというのは実に良き。


「おおいゴラァ!能力を使うのは反則だろうが!」

「ふふふ。勝てばよかろうなのよ!」


 まあ若干二名ほど殺伐とした雰囲気でじゃれあっていると言うより殺しあっているがね。


「あの二人凄いわね〜」


 そう言って何がとは言わんが揺らしているローゼを横目に見ながら、俺もあの二人の戦いを見る。


 事の発端は、水をかけてイタズラをしていたジュリアにムキになって反撃したエリクだったのだが、思った以上に強く反撃したため、逆に苛立ったジュリアによって……以下無限ループ。


 そんなこんなで守護者としての身体能力を最大限発揮し、先のパレード戦と同等では無いのかと思うほどの本気で水を掛け合っている。


「死にさらせぇ!」

「誰が死ぬかばーか!」


 ……元気がありそうで何よりだと思うよ。うん。

 エリクが放った水しぶき、当たったら痛いじゃ済まなそうなんだよなぁ……。


「すごいね、あの二人」


 遠い目をしていた俺の横に、ワンピーススタイルの水着を着用したノアがやってきた。


『うん。すごいけど、張り合うところが幼稚』

「それは……」


 そうしてしばしの沈黙が訪れる。

 あまりに静かだったため、俺はノアの方に目を向けると、彼女はもじもじとして顔を赤らめながら、ようやく俺の方に体を向けた。


「……あ、あのさ……どう、かな……」


 そう言って己の体をアピールしながら問うて来るノア。


『もちろん似合っているとも!』

「そ、そう……?」

『ああ!まるで女神でも現れたのかと』

「それ以上は言わなくていい」


 全て言う、というか書き終える前にノアに遮られてしまった。まあ褒めたおかげで照れて俯くノアを見れたので余は満足だ。


 そんな俺らのやり取りを、横で「あらあら」とか言いながら笑顔で見ているのがローゼである。言っておくがこれは恋愛感情によるものでは無いぞ?……無いはずだぞ?逆に俺とノアが恋仲だったら引くし。


 前提として、彼女は推しであるからな。


「仲が良さそうでなりよりね〜」


 そんなローゼによる茶々によって余計に恥ずかしそうにしているノア。


 実際、ワンピーススタイルの水着は実に彼女に似合っている。守護者となってまともな食生活を送るようになって多少マシにはなったものの、やはり同年代の女子にしては華奢な部類に入る。だが、そのボディラインを際立たせつつも比較的露出が少な目なことによって清楚な印象を与えている。


 ノア自身の顔つきや雰囲気ともかなりマッチしているコーデだと思う。


 そういうことを語りたかったのだが、ノア本人に止められてしまったので仕方がない。


「そういえば、レイって泳げるの?」


 唐突にノアによって投げつけられる疑問。

 ……確かに俺も分からないな。まあ泳げるのではないだろうか。


『どうなんだろ』

「ちょっと試してみてよ」

『分かった』


 ということで、俺は水中に潜ってみることにしたのだが。


『……む、むむむ?』


 なんというか、俺自身の浮力が強くて水中に潜ることが出来ない。顔をつけるくらいはできるのだが、体全体を水中へと潜らせることが出来ないのだ。


『呼吸は必要ないから無限に顔を付けておくことはできる』

「それってなにか役に立つの?」

『……ちょっと傷つくからやめてね』


 俺だって潜れるなら潜りたかったよ。でも叶わぬ願いなんだよ。


『というか、水中に魔物って一匹たりともいないのね』

「あ、そういえばそうだね。なんでなんだろう」

『幹部としてはどう思う?』


 俺は素直に横にいたローゼにも意見を貰う。


「えーと……私にも分かりかねるわね。なぜ水中には魔物が居ないのか。確かに不思議よね」


 まあそう分かるものでもないのか。


『安全に水遊びができることを喜んだ方がいいかもな』

「水遊びね〜」


 ノアがそう言いながら遠い目をする。まあ言いたいことは分かる。


「テメェ!逃げんな!」

「プププ。必死じゃーん!」


 向こうで戯れているエリクとジュリアに目を向ける。

 あの二人は未だに戦っているらしい。まあ楽しそうだからいいか。

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