第45話 領地開拓
「肉体労働って、肉体的な疲労だけじゃなくて精神的にもきついものがあるよね」
ノース領南部境界を守護している英雄の一人であるノアがこんなことを言い出した。現在、俺たちは道化師フィーネによって使役された魔物を壊滅させ、比較的安全となった領地を自らのものにしようと開拓を行っている。
いつものように、領内の権力者にバレないように行う必要がある作業であるが、まあよっぽどのことがない限り権力者が境界に訪れることなんてないので安心していいだろう。
『具体的には?』
「終わりが見えないっていう途方もない感じが嫌」
領地を広げるにあたって作成している城壁。というよりも簡易的な防壁であるが、まあ広大な土地を囲む壁を作るというのは途方もない時間がかかるものである。
「人員が少なすぎるっていうのも問題だよね」
『魔法があるからまだマシだと思うぞ』
魔法はそう便利なものではない。それは王国の血管が作成された話を聞いたときに話題に上がっていたことだ。魔法で生み出した物体は魔力を流さなくなると崩れてしまう。だから、魔法でちゃちゃっと永続する壁を作ることは不可能だという話だ。
とは言え、既に存在する物質を操ってしまえば、魔力を流さなくても物質自体が崩れたり、無くなったりすることはない。とは言え、魔力を流さなくなると物理法則には従うようになるので、ちゃんと計算して構造を立てなければいけないという注意は必要だ。
『そもそも、魔法でそんな大規模な壁を作るのって魔力と技術の両方が求められる高度な魔法なんだぞ?俺やリベラートがいるからこれだけ楽に作業できていると言ってもいい』
「ありがとうレイ~」
やや心が籠っていないように感じるが、まあいいだろう。
領地を覆う城壁を魔法で作るなんてことをするならば、少なくとも先の侵攻戦でリベラートが見せた極大魔法以上の魔力消費と、継続的な魔力供給が必要になる。
壁を作ったはい終わり。で魔力供給を切ってしまうのは、さながら積み上げたジェ〇ガを床に落とすみたいに、乱暴な行為であるのだ。だから、ちゃんと壁として完成するまで、魔力を流し続ける必要がある。見た目だけ完成させたのではダメなのだ。
『俺が一気に城壁作ったら魔力切れで死ぬな』
「そんなに?」
『そんなに』
どれだけ魔核から魔素を吸収できるとは言え、一度に大量の魔力を消費してしまったら吸収する速度が消費する速度に追い付かなくて自爆する。
「私、ちゃんと仕事するよ」
『頼むよ?』
ノアの仕事は資材の運搬や周囲の警備だ。魔物が少なくなったとはいえ、いないわけではない。
念による資材の運搬はかなり便利で重宝されている。守護者たちには各々能力があるからこのわずかな人数でも領地開拓が進んでいるのだ。
俺やリベラートが交代でゆっくりと防壁を作っている隣では、守護者たちも人力で防壁を築いている。俺やリベラートの補助だったり、一から作っていたりと様々だ。
「こういう時、アタシの能力は役に立たなくて困るわ」
「あら、それを言うなら私もあまりお役には立てないわよ?」
「嫌味かお前ら」
コツコツと作業しながらそんな会話をしているリリアとローゼとエリク。
……まあ、確かにここで一番役に立たない能力はエリクだろうけど。
ツバキは持ち前の視野の広さを生かして現場監督と作業を兼任していたりするし、アリベルトは持ち前の能力を駆使して現場を駆けている。
「あたしの能力も使い物にならないんだけど、あの人たち殴って良いかな?」
そう言うのはジュリアである。まあ幻覚が役に立つ作業現場とかないだろうな。
「大体、リリアの能力は全てにおいて活躍できるでしょ。事故を未然に防ぐことだってできる。何が『アタシの能力は役に立たない』よ嫌味以外の何物でもないわ」
『荒れておる』
度重なる肉体労働で沸点が低くなっているのだろうか。
「レイ、回復して」
『すまんが俺も疲れてるんだ。聖気と魔力は別物とは言え、演算機関は同一だから精神力がちょっと』
「えぇ~~」
『文字起こすのだって億劫なんだぞ』
いいのか、俺何も喋らなくなるぞ。
その気になれば能力で演算機関ごと回復することだってできるのだが、そんな気力が湧かない。あれだ、限界まで眠い時の感覚。起きようとすら思えないけど、なんか気合で起きてるみたいな。それの能力や魔法版である。
「そろそろ交代の時間かな」
『ああ、助かるよ』
休憩を終えたリベラートが近寄ってきたので、今行っている作業だけ終わらせて、俺も休憩に入ることにする。
『俺も仮眠しよっかな』
「レイって寝れるの?」
『寝れない!』
「えぇ……」
いやまあ気持ちだけね。気持ちだけ寝ていたいなって思って。だからさ、ノア。そんなやばいやつを見るような目で見ないでね。
「レイがおかしくなったら私泣くから」
『おかしくなんてなりません』
俺誓う。おかしくなんてならない。絶対。
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