第31話 方針は決まった

 ※まえがき

 3話に少し修正を加えました。とはいえ、物語に直接関係するものではありません。要素としては大事なものかもしれませんが。気になる方は読み返して頂ければ。(2024/4/23)


 では、引き続き本編をお楽しみください。


 ────────────────


『あー……話の腰を折って悪いんだが、他の区域の守護者にこのことを伝えたりしないのか?』


 流石にユニーク個体四体に道化師は南部だけで対応するのは厳しいのではないかとも思う。万が一を考えて増援を頼んだ方がいいのではないかと、俺は思った。


「それに関しては色々と理由はある。一つは、レイを安易に使えなくなるってこと。南部の守護者達に君の存在を公表しても、他の区域の守護者たちがどう思うかは、保証できないからね」


 まあ、それは分かる。というか、リベラートは俺が南部で受け入れられるってことを確信してるっぽいな。


 そんなことを思いながら次の言葉を待つ。


「二つ目は、俺たち境界守護者は他区域との連絡を簡単には取れないということが挙げられるね。最低でも統括の地位にいる人間が、領主に納得出来る説明をして、了承されないと他区域との接触はできないんだ」

『……なぜ?』


 そういえば、原作において他区域の境界守護者が登場したことは無かったから、この情報は初耳だった。


「単純に武力としての危険性だね。東西南北の守護者たちが容易に意思疎通ができて、ひとつに纏まろうものなら、対抗出来る戦力は領内に存在しない。だから、俺たち四区域の守護者には接触が禁じられているんだ。もし、一区域の守護者たちが反乱を企てても、他区域の守護者たちがそれに同調するとは限らない。俺たちがそういう行動を取るとなったら、他区域の守護者を警戒する必要が出てくるんだ」

『つまり、相互監視状態にあると?』

「そこまで酷い関係性じゃない筈だけど、意思疎通が取れないというのはそれだけで行動に制限が付くものだということは確かかな」


 うーむ。ままならないものだな。確かに領主目線で考えるとこの采配は悪くないと思う。だが、今みたいな強大な敵を前にしたらやや不安が残るが。


「今の状況を領主に伝えれば増援は可能だと思うよ?でも、手続きが面倒なのと時間がかかる。いつ襲ってこられるか分からない今の状況でそんなことに時間を使うなら、レイを使った方がいい」


 なるほどね。色々な要素を天秤にかけた結果がこの結論だということか。まあ納得だな。


 俺の疑問が解消されたということで、話はまた少し変わる。


「まあこんな危険因子が近くにいるってことだから、すぐにでも襲ってきてもおかしくないって言ったばかりなんだけど、戦力の増強とかコンビネーションの取り方とかを練習しておくのも悪くはないと思ってね。ノアやウィルと言った新人も数名入ってきている事だし、やろうか、戦術訓練」


 戦術訓練。いつだったかリリアがノアの実力向上のためにリベラートに提案しようとしていたものだ。

 原作でもゲームシステムとして戦術訓練は実装されていた。ストーリー上で使用することもあったが、どちらかと言うとエンドコンテンツとしての側面が強い。


 プレイアブルキャラ。まあ原作主人公だな、彼もしくは彼女を使って、南部の守護者たちと戦うことができると言うコンテンツ。

 ゲーム上で享受できる恩恵は、特定のレベル帯の守護者に勝利することで、新たなスキルを獲得出来ると言うものだ。


 この戦術訓練は前世ではRTAとしても使われたことがあった。リベラート打倒RTAとか。


 まあこれはあくまでゲームとしての側面だ。ここは現実だから、何時でもプレイヤーの自由で行うなんてことはもちろんできない。


「いいんじゃない?まあ、敵がすぐそこまで迫ってるってことを除けばだけど」


 リリアは賛同するが、少し苦言も呈している。それもそうだ。もっと警戒態勢に入っておいて然るべきなのではないかと思うのは当たり前だ。


 だがその問題は直ぐに解決することになる。


「戦術訓練中は、俺と幹部の半数で境界を警戒すればいい。確かに呑気に思うかもしれないけど、非常時の立ち回り方を教える訓練もしたいしね」

『ノアやウィル以外にも新人っているのか』

「いるよ。今年は豊作なんだ。まあ、育て方に難がありすぎるんだけどね……」


 ああ……。まあ、それに関してはちょっとね。能力に覚醒させるのに魔界に放り出すっていうのはね……。


「そういうことで、新人の教育を進めたいと言う理由もあるんだ。相手は強力だからね」


 付け焼き刃だろうが少しでも実力つけて欲しいという意図があるのか。訓練中に襲われて、疲労の中戦闘することになったらやばくないかとは思うが、そんなことを考え出したらキリがない。ここは運が味方するかどうかだろう。


 それに、リベラート含む幹部の半数が境界を警備していたら、相手も迂闊に攻められないだろうし。


「異論がある人はいるかな?」


 リベラートがそう聞くが、誰も異論は無いようだった。


 戦術訓練を監督する幹部が半数。警戒する幹部が半数。


「じゃあ、レイの存在を明かして、一段落ついたら戦術訓練といこうか。じゃあ、今日のところはこれで解散!」


 リベラートの一言によってこの会議は終了と相成った。俺もいつも通り布に包まり、ノアの背に乗る。

 あと少しでこの移動方法からおさらばするとなると、嬉しいが少し愛着が湧いてしまっているから、少々物悲しさを感じてしまう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る