第16話 脳筋
少し遅れましたが、なんとレビューを書いていただきました!
本当にありがとうございます!
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『ここが!新しく仲間になったというやつの!ハウスか!』
なんとも暑苦しくむさくるしい声が一階から聞こえてきた。目の前ではリリアが何もしていないというのに疲労で頭を抱えている。
根明は強いって言ったばかりなのだが、まさかこれほどのものが来るとは思わなかった。いや、根明と言うか太陽だね。第一印象で語るのなら。
あとさ。ノックくらいしようよ。リベラートも言ってたよ?ノックはしろって。
白昼堂々人の家に乗り込んでくるのはそれはもう犯罪なのよ。
声だけで判断するのなら活発な男の子って感じだろうか。
まだ姿すら見ていない何某かにそんなことを思いつつ、目の前で頭を抱えている常識人を見る。
「はあ……。この声はルオね。めんどくさいのが来たわ」
ルオか。聞いたことはあるが、如何せん記憶が摩耗しているからパッと思い出せない。こんなに濃いキャラしてるんだがなぁ……。
己の記憶力のなさに少しばかりしょんぼりしていると、なんだか暑苦しいルオ少年によるスピーチが始まった。
『ふむ。君が新しく仲間になったという子か。名は何というのだ?』
『ノアだけど……』
『ノアか!覚えたぞ。して、ノア。君はどれほどパワーがあるんだ?』
パ、パワー?
俺が頭の上にクエスチョンを大量に浮かべていると、痺れを切らしたリリアが部屋から出て行った。
『ルオ!アンタねえ、常識を弁えなさいよ。なんで何の断りもなく人ん家に入ってるのよ。それに女子の家に!アンタ男でしょうが!』
至極真っ当な言い分だった。
何故勝手に異性の家に上がってくるのだろうか。もし俺が一階にいたら大惨事じゃ済まなかったと思うんだけど。
『おお!リリアではないか!何故ここにいるんだ?』
『話聞いてんの?そんなことよりアンタの行動について色々と言っておきたいことがあるのよ』
『まあそう細かいことは気にするな』
『気にするわ!』
なんというか。話が通じない自由人って感じだ。下手したら不思議ちゃんに片足突っ込んでいるような気がしなくもないが、ただの脳筋って印象の方が勝っている。
『やっほーリリアちゃん。っていうかいたんだね』
『やっほージュリア。うんまあ、アンタたちが来る前からいたわね』
『えっそうなんだ。それなら言ってよー』
怒り心頭のリリア相手にジュリアが話しかけた。
『ノアよ。君はどれほどのパワーがあるのだ?ん?』
『……パワーって何?』
『パワーはパワーだ。それ以上でもそれ以下でもない』
『よくわかんないけど、力なら特段強いわけではないかな』
『そうか。だがそれだけでは分からんな。やはり、一度真正面からぶつかった方が良いか……』
うーんなんか物騒な話してる?
『良くないわよ。そんなに戦いたいんだったらリベラートにお願いすればいいじゃない』
『それはダメだ。俺はノアのパワーを測りたいのだ』
『いっつも思うけど、アンタの行動原理ってなんなの……』
『パワーかパワーじゃないか』
『意味わかんない……』
うーん。ああいうタイプと話すにはとりあえずノリだけ合わせておいてあとは雰囲気で会話をするか、ハナから諦めて流すかの二択になってくる。
ギャルっぽい雰囲気はしているが根が真面目なリリアとはすこぶる相性が悪いのだろう。
『まーまーいいじゃん。ルオのこれは今に始まったことじゃないんだし、それよりもノア。ルオと戦ってみる気はある?』
『戦う……?』
『そ。守護者になったあたしたちは常に魔物との戦いを強制させる。昨日なったばかりのノアとは言え、今どれくらい戦えるのかを知っておいた方がいいでしょ?』
『うーん。確かにそうかもしれないけど』
『安心しろ。ちゃんと手加減はするさ』
そういう問題なのだろうか。
ルオと呼ばれている人物とそんな会話をしている面々だが、ルオの言動はどうやらいつもこうらしく、他の人たちは諦観している。
俺が彼らの目の前に行けないことが少々悔やまれるな。
『ちょっと待って』
そう言ってノアは二階に上がってくる。
『アンタたちはここにいなさい』
そう言ってリリアも一緒に上がってきた。
リリアが来てしまってもいいのだろうか。彼らを見張っていた方が良いのでは?なんて思ったけど未来視があるのだし別に構わないのか。
俺が隠れていた部屋に二人がやってきた。
部屋にやってきたノアは開口一番で俺に意見を求めて来る。
「レイ、聞いてたでしょ?どう思う?」
どう思うって言われてもな。
ああいう手合いは要望を聞いてしまった方が一番手っ取り早いと思う。
とりあえず頷いておく。
「私が戦うのに賛成ってこと?」
まあそうだな。
ルオの意図が何であれ、今のノアの実力を知っておくというのは悪いことではないだろう。というかリリアがさっき戦術訓練がどうのこうのって言ってたから早いか遅いかの違いでしかない。あとは個人戦か団体戦かってところか。
「そうね。アタシとしてもノアの実力は把握しておきたい。どんな能力なのか。どの程度の状況判断能力があるのかとかね」
そういうことだ。ルオはまあ戦いたいだけなのだろうが、ノアにもメリットはある。初の実戦形式になるだろうが、戦闘経験は積んでおいた方が良いだろう。
「分かった。戦いはよく分からないけどやってみる」
「それがいいわ。ルオ相手なら手加減する必要はないし、今の自分に何が出来るか把握するって意味も込めてやってみな」
そうだね。
「場所は訓練場がいいかしら。あ、レイは来れないわよ?」
えー。
「駄々を捏ねてもダメなものはダメ」
だからなんで俺の言わんとすることが分かるんだよ。
未来視か?
もしかして駄々を捏ねた未来が見えたのか?
うんまあ俺ならやりかねんけれど。
『話は終わったか?』
どうやら痺れを切らしたらしい。一階から催促の声が聞こえてくる。
「じゃあ、アンタは留守番ね」
「行ってくるね」
と言うことで、俺はノアが戦うところが見れない。残念だ。
まあ、今度魔法の手ほどきとかしよう。
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