第15話 リリアとレイ
「へー、ノアって言うんだ。私はジュリア!よろしくね」
「うん。よろしく」
幹部会合が終わり、自由になった俺とノアだったが、どこから聞きつけたのか新しい仲間が増えたってことで好奇心旺盛な十代の若者たちが家に押しかけてきていた。
バイタリティーがすごい。
そんな会話を一階で行っているのがノアだ。じゃあ俺は今何をしているのかって?
二階で人目に付かないように部屋に引きこもっています。
ちなみに目の前にはリリアがいるよ。幹部の監視が必要だって結論が出たからね。しょうがないね。
未来視が出来るリリアだが、何も四六時中能力を使っているわけではない。そのため俺の行動すべてが読まれているとかそういう感じは全くしないので過ごしにくいとかはないのだが、それでも魔物である俺に対する警戒心が少し感じられる。
俺としてはもっと気を楽にしてほしいんだがなあなんて思うのだが、それも無理な話か。リベラートの説得によって八割くらいは納得しているっぽいのだが、残りの二割で警戒しているという感じ。
「ホントに襲ってこないのね」
呆れたというか拍子抜けしたみたいな感じでそんなことを言ってくる。
当たり前だろう。俺が襲ったところでメリットが全くない。
「ま、分かり切ってたことだけどさ。アンタ、なんでそんなに確固たる自我を持ってるわけ?普通に意味わかんないんだけど」
そんなことを言われても俺も意味わからん。
転生と言う事象自体意味わからんものだし、今の俺に説明する能力は備わっていない。リベラートに文字を教えて貰うまでは無理だ。すまんね。
「魔物の癖に能力者って事実も意味わかんないし、アンタはほんとにイレギュラーって言葉が似合う魔物よね」
いやーそれほどでも。
「褒めてないわよ」
なんで俺が照れてるって分かったんだよ。
「なんで分かったのかって言いたげね。そんなの簡単よ。なんかそんな雰囲気だったから」
まさかのフィーリング。
十代女子の第六感と言うのは案外侮れない物なのだろうか。俺に表情なんて無いから俺が言いたいことを察するのはかなりハードル高いぞ。
「リベラートはアンタに関することは慎重に進めるみたいだけど、アタシはあんまり心配してないわね。むしろ楽観的に捉えてるかも」
ほうほう。それはまたどうして。
俺のそんな気持ちを知ってか知らずか、リリアは勝手に話を進める。
「だってまともな考えがあるのなら態々敵地に単独で入ろうなんて思わないもの」
それはそう。ほんとにそう。
「幹部でもアンタについては概ね認めてるだろうし。魔物っていう前提がちょっとあれだけどね」
まあ、俺が魔物であるという事実自体に忌避感がある人物もいるのだろう。幹部の人間やリベラートはそこら辺を割り切って考えることが出来る人たちだったというだけで。
「それに、アタシとアンタがタイマンで戦っても勝てはしないけど負けもしないと思うし。アタシ一人相手でそれなら対処のしようはいくらでもあるしね」
うーむなんとも手厳しい評価だ。ただまあ事実でもある。
未来視を持っているリリア相手に魔法を当てられるかと言う問題が出てくるのだ。
リリアの攻撃は俺には効かない。と言うかすぐに回復してしまうので実質無効。そして、俺の攻撃はリリアに当たらない。正に千日手だ。ここにツバキなんて加わったら一気に形勢が偏ってしまうだろう。
「ノアっていうメンバーも増えたし、彼女が入る班を決める必要があるわね。ウィルが単独で行動しているし、彼と組ませるのが無難かしら。今ノアと友人になろうと頑張ってるジュリアもいいかもしれないわね」
守護者は基本的に三人一組。または四人一組で魔界を巡回する。
ウィルは特例として新人であるにも関わらず、その実力と能力の危機回避性を評価されて単独での任務も許可されているが、何も単独であるのが良いという訳ではないのだろう。
「ノアがどれくらい戦えるのかも知りたいわね。リベラートに戦術訓練の開催を提案しようかしら」
なんか。リリアって真っ当に幹部してるよな。
桃色の髪を肩らへんまで伸ばして、釣り目をしている彼女の見た目は完全に古き良きツンデレ美少女と言う感じなのだが、言動はたまにギャルっぽい時があるけど。
ちなみに、戦術訓練と言うのは南部境界守護者たちがグループに分かれて行う模擬戦である。
地形の使い方、味方との連携の取り方、自分の能力がどれくらい使えるのかなど。
自分の力量とチームでの立ち回りが求められるものだ。
ノアという新メンバーが増えたことで、班の割り振りだとか現在の戦力の把握だとかが必要になってきたため、戦術訓練を行うのは理にかなっていると言えるのかもしれない。
まあ、多分だけどノアのメンバーはジュリアになると思う。
下から聞こえてくるのだ。なんとも楽しそうな会話が。
基本的に受け身な姿勢を取るノアに対して、圧倒的光属性のジュリアは意外と相性がいいのかもしれない。
どの世界でも根明は強いってことなのかもしれないね。
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