第2章「彷徨」

「南城メソッド」を確立した南城は、世界を舞台に投資活動を展開することを決意する。彼は、AIに支配された市場で、人間ならではの直感と勘を武器に戦うため、まずはアジア各国の市場を視察することにした。


最初の訪問国は、活気あふれる香港だった。巨大なビル群が立ち並ぶ中環(セントラル)の金融街を歩きながら、南城は市場の空気を肌で感じようとしていた。


「ここは、世界でも有数の金融都市だ。相場の動向が凝縮されているはずだ」

そう呟きながら、南城は香港取引所を訪れた。取引フロアでは、ディーラーたちが大声で叫びながら取引をしていた。その光景に、南城は人間の熱気を感じずにはいられなかった。


香港での視察を終えた南城は、次に上海へと向かった。上海証券取引所を訪れた南城は、AIによる取引の浸透度の高さに驚かされる。


「ここでは、AIが取引の主役になっているのか……」

上海では、AIトレーディングシステムの開発者たちとも面会した。彼らとの議論の中で、南城はAIの可能性と限界について深く考えさせられた。


「AIは膨大なデータから最適解を導き出すことができる。でも、未知の事象に対する創造的な対応は苦手だ」と、ある開発者は語った。

南城は、AIにはない人間の強みを再確認した。


上海を後にした南城は、シンガポールへと飛んだ。シンガポール取引所では、AIと人間のトレーダーが共存している独特の環境を目の当たりにする。


「ここでは、AIと人間が互いの長所を活かし合っているのか」

南城は、AIと人間が協働する可能性を感じ取った。


アジアの主要都市を回った南城は、次に欧州へと向かう。ロンドンでは、歴史あるロンドン証券取引所を訪問し、伝統と革新が融合する市場の雰囲気を肌で感じた。

「ここには、相場の英知が凝縮されている」

南城は、ロンドンの地で、投資哲学を磨き上げていった。


ロンドンの次は、フランクフルト、パリ、ジュネーブと、欧州の金融都市を巡っていく。各地で出会ったトレーダーたちとの対話を通じて、南城は自身の投資哲学を進化させていった。


「相場は、人間の欲望と不安の反映だ。それを読み解くことが重要なんだ」と、ジュネーブで出会ったベテラントレーダーは語った。

南城は、人間の心理を深く理解することの重要性を再認識する。


欧州を後にした南城は、いよいよニューヨークへと旅立った。ウォール街に立つニューヨーク証券取引所は、世界の金融の中心地だ。そこで南城は、AIトレーディングの最前線を目の当たりにする。


「ここでは、AIが人間を上回る成果を出し始めているらしい」

そう聞かされた南城は、改めて危機感を抱いた。彼は、ニューヨークの地でも、人間ならではの投資の在り方を模索し続ける。


ニューヨークを最後に、南城の世界行脚は終わりを迎えた。世界各地の市場を巡り、様々な人々と出会い、議論を重ねた南城は、確かな手応えを感じていた。


「人間の直感と勘は、AIでは決して真似できない。それに、相場の本質を理解する力も人間ならではの強みだ。AIは過去のデータに基づいて判断するが、相場を動かすのは人間の感情だ。その本質を見抜く力が、俺たちの武器なんだ」


南城は、世界を旅して得た学びを胸に、日本への帰路についた。彼の脳裏には、新たな投資戦略の青写真が浮かんでいた。


帰国した南城を待っていたのは、AIがさらに台頭した日本の金融界だった。多くの証券会社が、AIトレーディングシステムを全面的に導入し、人間のトレーダーは次々と職を失っていた。


「こんな状況だからこそ、俺にしかできないことがあるはずだ」

南城は、世界の市場で得た学びを武器に、AIに奪われつつある人間の領域を守るべく、新たな戦いに身を投じる決意を固めた。

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