おばあちゃん子のお嬢様とピンクの服

清瀬 六朗

第1話 着る服、交換しよ

 わたしがまだ小学校六年生に上がったばかりのころのことだった。

 体育の時間のあと、体育館のロッカー室で着替えていると、植戸うえと倫恵ともえが声をかけてきた。

 「なあ幸子さちこ、着る服、交換しよ」

 わたしは何を言われたかわからなかった。

 植戸倫恵は五年生のころに委員長も務めた優等生だ。成績もいいし、行いもいい。自分から目立ちたがらなくても自然と目立ってしまうタイプだ。

 すごい金持ちのお嬢様だと聞いた。

 行いのいい子がなんでそんなことを言うのか?

 それても、お嬢様の言うことやから、きいておかないとあとが怖いのか?

 トリあえず

「えー? なんで? 体育終わってから二人で着てる服が入れ替わってたら、すぐばれるやん? みんなに、何があったんやろ、って思われるけど、それでも、ええ?」

と反応する。

 あ、今回はもう普通に「とりあえず」でいいのか。

 そこで、とりあえず、わたしがそう反応すると

「そうやな」

 倫恵は残念そうに言って、おとなしく自分の服を着た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る