⑤ハイツフェルマータ_4

「見つけたよ。火鳥って奴の顔が完全に一致した」

 加神と間宮が片付けで食器を洗っていると、小走りでひなたがやって来た。

「本当にそんなことができるもんなんだな」

「ネットに繋がっている機械類に、片っ端から潜り込んでみたの。そしたら、あるパソコンのウェブカメラに、火鳥と同じ顔の人が映ってた」

「さすがだね、ひなた」

「トーゼン! E7に十階建てのマンションがある。そのマンションの802号室だよ。今も奴らはそこにいるはずだよ」

「よし! すぐに向かおう! 邪魔したね、ひなた。捜査の協力、感謝するよ」

 間宮は濡れた手を振って水分を払うと、先立って部屋を出て行こうとする。

 当然加神もそれに続こうとするが、その手をひなたが握り締めた。

「待って!」

 思いがけない行動に息が詰まる。

 ひなたは不安そうに目を落していた。

 この後に起こることを心配しているような、そんな表情をしていた。

「……気を付けてね」

「あぁ、当然だ。……ありがとな!」

 加神はその不安を吹き飛ばすように、努めて明るく振舞ってみせた。


 ……マーリンが一緒だし、そんなことになるわけがない。

 一人残されたひなたの不安は、膨らんでいく一方だった。

「本当に気を付けてね……」

 ポツリと呟き、間もなくして――バイクの音が遠ざかっていった。

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