(8)
「そいつと、そいつが感染してる魔法の細菌兵器の最大の弱点は熱だ」
謎の女(その2)が、そう解説してる内に、細菌兵器人間の体は……あっさり灰になった。
「え……えっと……これで……終り……?」
「そう、終り」
あっけない。
あっけなさ過ぎる。
「病原体も感染者も灰になった。もう大丈夫だ……が……」
「じゃあ、次は……?」
「その前に訊きたい事が有る」
謎の女(その2)は、サイコ女に声をかける。
「何だ?」
「何でガスマスクを取らない?」
「お前は馬鹿じゃない。でも、その頭の良さは『ひらめき』や『直感』だ。想定外の事が起きた時に、瞬時に対応策を思い付くのは得意でも……『相手が、こう来たら、どうするか?』『こっちが、こういう手を打てば、相手はどうするか?』そんな事を何手先までも何通りも根気良く考えて、相手を罠にハメる事に関しては……私に数段劣る」
……えっ?
罠?
どういう事?
「で……でも……あんたには、さっきの奴以上に兇悪な手下は居ない筈じゃ……?」
「おい、ガキ、お前……数学苦手だろ?」
「えっ?」
「あと、注意力も散漫だ」
「な……何を言ってるの?」
「そ……そう来やがったか……しまった……。
ちょ………ちょっと待ってよ……どういう事? 何が起きてんの?
「お前の味方になってる私の片割れは、お前を魔法で支援する権利は、さっきの1回しか行使しない、そう明言した。残念だが、そいつがそう言ってしまった時……魔法用語で言う『誓言』が成立した。そいつが、その『誓言』を破る事は出来ない。いや、不可能じゃないが……『誓言』を破れば……私達『魔法使い』にとって、とんでもなく恐ろしいペナルティが発生する」
「な……でも……」
「そして……さっきの奴の脅威や兇悪さについて……『以上』と言ったのはお前だけだ。私や、そいつは、さっきの奴が、どれだけタチが悪いかについて『以上』『以下』って言葉は使わなかった筈だ」
「え……?」
え……えっと……どう云う事?
な……何……何か罠にハマったらしいけど……その罠の正体が……判らな……。
「
「へっ?」
「まだ気付かねえのか、馬鹿ッ‼」
謎の女(その2)の罵声。
「じゃ、お前の最後の対戦相手を紹介しよう。敵とは言え、健闘を祈るよ。祈ると言っても、多分、私達ほど……神サマってのはクソったれしか居ない、って事を思い知らされてきた奴らも、そうそう居ない以上、どんな神サマに祈ればいいか、見当も付かないけどな……」
サイコ女の……その言葉と共に……前に出た奴は……。
「あ……」
しまった……。
サイコ女は……さっきの奴より兇悪な強敵を作れない。
でも……「以上」と「より」はビミョ〜に意味が違う。
「芸が無くてすまんな。さっきの奴と……」
さっきの奴が一番兇悪だってのは……さっきの奴を一体しか作れない、って意味じゃなかった。
「同じ能力の持ち主だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます