(4)

 その時、僕は、いい事を思い付いた。

 何も、相手が押し付けてきたルールになど従う必要は無い。

 そして……聖女様の魔法で強化された、この状態に時間制限が有るなら……その制限時間の内にやるべき事は……ただ1つ。

「死ぃねぇ〜ッ‼」

 僕は思いっ切りジャンプし……そして……狙うは……。

 こいつさえ殺せば……。

 僕は、次の対戦相手じゃなくて、全ての元凶であるサイコ女の脳天を狙って……。

 僕の両手に衝撃……。

 けど……。

 サイコ女の脳天を砕いた衝撃じゃない。

「ぐ……ぐへ……」

 呼吸が出来ない……。

 サイコ女は、無事も無事。

 傷1つなく、余裕の表情で、僕の横に立っている。

 代りに、僕の喉には、カウンターでサイコ女の手刀。

「阿呆か? この世界の物理法則も化学法則も魔法の法則も

 そう言うと、サイコ女は(おそらくは)北の空を指差す。

「お前が阿呆過ぎて、今まで気付かなかったのか? それとも、この世界に異世界転生して日が浅いせいで、ちゃんと観察していなかったのか?」

 サイコ女の指差す先に有るのは……北斗七星と小熊座。

 サイコ女は、次の対戦相手の方を見た。

「おい、ブチのめせ。さっさと終らせないと……

「@#$%&ッ‼」

 対戦相手の口からは……意味不明な……でも、恐怖の悲鳴である事だけは判る絶叫。

 次の瞬間、対戦相手の両方のてのひらの皮膚が破れる……それも内部から……。

 そして……緑色の触手?……いや蔦?……ともかく、そんなモノが飛び出して……どんどんと伸びてゆき……。

 僕の手足に巻き付き……ん?

 何か変だ。

 巻き付いたのは両足と左手だけ。

 罠の気がする……でも……。

 僕はサブウェポンの短剣を抜いて、蔦だか触手だかを切り落し……えっ?

 ブシュウ……。

 蔦だか触手だかの切り口から緑色の液体が吹き出し……地面に落ちていく。

 な……何か……キショいけど……ともかく……手足は自由になった。

 僕は、武器を大型ハンマーに持ち替えると……。

「おりゃああああ……ッ‼」

 次の瞬間……コケた。

 って、何でだよッ‼

 うわああ……地面を顔に打ち付けたせいで……鼻血が……って、そんな事気にしてる場合じゃ……。

 何が起き……あっ……。

 地面から、対戦相手の体から生えてるのと同じ……蔦だか触手だかが生えてて……僕の足を……。

 その時……対戦相手と目が合った。

 悲しそうな目だった……。

 飼い主に捨てられた仔犬のような……。

 そして……奴の手から生えた蔦触手が僕の首に巻き付き……。

 クソ……こうなりゃ……僕が窒息するのが先か……それとも……ッ‼

 一か八かだッ‼ うきゃきゃきゃきゃ〜ッ‼

 無理矢理立上り、体を回転させ……。

 僕の足を拘束していた蔦触手が千切れて、緑色の液体が更に飛び散り……液体が落ちた所から更に蔦触手が……。

 でも……勢いは十分……僕も目も回ってるけど……狙いは付けられ……。

「うりゃあああッ‼」

「ぐおおおお……」

 体を回転させる事でスピードを増したハンマーの先端が対戦相手の胸に命中。

 そしてッ……⁉

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