(3)

勇者ボルグ様ッ‼」

 その時、聖女様が僕に駆け寄る。

 た……助かった……早く助け……あれ? いや、待てよ、僕が聖女様を助けようとしてたんじゃ……?

 まぁ、いいや、命さえ助かるなら……。

「消え去れ‼ 邪悪なる者よ‼」

 聖女様がそう言うと、能面人間が光に包まれ……。

「がががが……」

「うげげげ……」

「ぐえええ……」

 能面人間の体の能面が次々と消えてゆく。

 や……やった……助か……あ……あれ?

 ボト……っ。

 ボト……っ。

 ボトボトボト……。

 体の表面の能面が消えた事で、能面人間の体のあちこちに傷口が開き……そして、とうとう、腹から内臓がこぼれ出し……。

「げげげげ……」

「ぐげげげ……」

 ええええ?

 な……何だよ、あれッ?

 内臓の表面にも、無数の小さい能面が受かんで……うわあああ、キショい、キショい、キショい、キショい。

 おい、ナーロッパなのに白人が差別されてる世界だとしても、そんなの受け入れます。

 でも、流石に、これは無いッ‼

 何で、ナーロッパに、あんなキショいホラー映画みたいな怪物が……うわあああ……。

「そ……そんな……」

 聖女様の呆然とした声。

 能面人間を包んでいた光が消えていく。

「マズい、あたしらの世界で言うだ」

 謎の女(その2)の叫び。

「な……何?」

「その顔には、1つ1つに知能が有る。もちろん、並の人間よりも遥かに低い知能だ。でも、それが何十個も協力すれば……短時間で相手の魔法を無効化する魔法を編み出せる」

 ……そ……そんなの有りかよッ⁉

「聖女様、とりあえず、僕を回復……」

「はいッ‼」

「だからマズいってッ‼」

 何言ってんだ、このままじゃ戦うどころか逃げる事さえ……。

「おい、その女は攻撃するな」

 その時、サイコ女から能面人間への指示。

 攻撃?

 どんな……攻撃だ?

 とりあえず、聖女様の魔法で回復した僕は立ち上がり……。

 その瞬間……能面人間の体の無数の能面が、同時に何か呪文のようなものを唱え……。

「うわあああああッ‼」

 いたい、いたい、いたい、いたい、いたたたたたた……。

 僕の全身から血が吹き出す。

 体中に、無数の小さな傷が……傷が、傷が傷が……。

「馬鹿野郎ッ‼ そいつは、あんたの回復魔法を元に……を編み出しやがったんだッ‼」

 解説ありがとう。謎の女(その2)さん。

 でも、その解説、何の役に……た……た……た……。

「うわああああッ‼」

 聖女様の絶叫。

 血は止まり、傷口が塞がり……体に力が漲り……手にしていたハンマーが輝いている。

「こ……これしか……方法が……早く……あの怪物を……」

「えっ?」

 何か、強力な魔法を使ったらしく……聖女様は、地面に膝を付く。

 顔には冷や汗、目は虚ろだ。

「一撃で仕留めなければ……あの化物が……この魔法を破る魔法を編み出す可能性……」

「はいいいッ‼」

 僕は火事場の馬鹿力を発動。

「おりゃあああッ‼」

 もはや人の形をしていない能面人間に、僕は光るハンマーを叩き込み……。

「ぐえ」

「ぐえ」

「ぐえええ……」

 能面どもは次々と消滅していく。

 中には……例の白くて@#$%っぽい臭いがする液体を吐く奴も居るが……構っていられない。

 気付いた時には……能面人間の能面に寄生されてなかった……肉や内臓や骨の残骸だけが残っていた。

「次だ‼ 次‼ その魔法の効力が消えない内に、次のをブッ倒せッ‼」

 気を失なっている聖女様に、いつの間にか駆け寄っていた謎の女(その2)が、そう叫んだ。

「おい、この女を助けんのも……あたしが魔法を1回使うのに含まれんのかッ⁉」

「まぁ、いい、それは大目に見てやろう。ああ、そうだ、次は……こいつだ」

 サイコ女が、そう言うと……体の表面に血管みたいなモノが浮き出てる男が前に出る。

 けど……その血管みたいなモノは……緑色だった。

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