(8)

「御主人様、助けに来ただ」

 その時、金属製のブ厚い扉の向こうから……おい、待て、嫌な予感しかしないよ、この助け。

「今、牢屋の鍵を開けるだ」

 罠だ。罠だ。どう考えても、罠だ。

 あいつが僕を罠にハメる意図が無くても、絶対に良くない事が起きる。

「くそ、届かねえだ。あ〜、人間用に作られてるだから……オラじゃ背が足りねえだ」

 開けるな、一生、開けるな。

 そこでKKKもどきに見付かって、お前の人生終れ。

 ガチャン……ギイイ……。

「御主人様、さあ……逃げるだ」

 そこに居たのは……スナガだった。

「い……いや……いい、僕は、ここに居るよ」

「じゃ、聖女様を見捨てるだか?」

 クソ、スナガの癖に痛い所を突いてきやがる。

「判った……行くよ。聖女様の牢屋の鍵は?」

「有るだ」

「場所は?」

「教えてもらっただ」

 ……。

 …………。

「その鍵、誰にもらった?」

「人間にしては親切な人だ」

 ……………………。

「聖女様が入ってる牢屋がどれかも、そいつに教えてもらったの?」

「んだ」

 ……………………。

 底抜けのマヌケか、こいつは?

 何だ、この即オチ?

 エロゲなんかで良く有る「即『堕ち』た」じゃなくて、話が急展開したと思ったら、もうオチが付いた。

「鍵くれた奴が近くに居るなんて事は……」

「そこに居るだ」

「やあ……」

 そこに居たのは……。

 何で、こいつが生きてる?

 しかも、かなり厄介な固有能力持ち……。

 そこに居たのは……元相撲取りに吹き飛ばされて、どっかに消えた筈の……洗脳能力持ちだった。

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