(7)
あっさり捕まった僕は、聖女様と引き離されて独房送り。
太陽の光に当たるとエラい事になる体質になってしまった(って、吸血鬼か⁉)僕にとってはありがたい、薄暗い部屋。
僕の固有能力らしい「火事場の馬鹿力」を使ってもブチ破れそうにない金属製の扉に頑丈そうな壁。
えっと……この世界に転生して……何日目だったっけ?
せいぜい3〜4日目にして、僕の2度目の人生、はい、詰んだ〜ッ。
一生、ここに居るか……あのサイコ女に生きながら解剖されるの……どっちがマシだろう?
って……聖女様は……大丈夫なのか?
「おい、飯だ。食え。食い終ったら、この穴から外に出しとけ」
その声と共に、金属製の扉に有る小さな穴から錆び付いたプレートに乗った食事が入って来た。
あれ?
米……と言っても、東南アジアやインドの日本の米より長いヤツ……少なくとも、そう見える穀物を茹でたのが主食で、あとは、野菜9割以上、肉か魚か良く判んない細切れが申し訳程度の料理……いや、料理なのか? 料理と言えるのか、これ?
味がしない。
異様な薄味。
塩味しかしない。その塩味も有るか無しかだ。
ああ、きっと、ネット上で「不味い」って事になってるイギリス料理って、こんな感じなんだろうなぁ……。
いくつかの種類の野菜と……肉っぽいモノを煮込んでるのに……味も歯応えも均一・平等・全て一緒。色んな絵の具が並んだパレットじゃなくて、筆洗い用のバケツみたいな料理。
ポリコレだ。
この世界は、ポリコレ配慮世界か……ポリコレ逆転世界だと思ってたけど……一番ポリコレなのは、囚人用の食事らしい。
あらゆる材料を平等に不味くしてる。
涙が出て来た。
転生者になって……チート能力を得た時は……文字通り「なろう系」小説の主人公になった気分だった。
けど、次から次へと無茶苦茶な目に遭って……そして、大怪我はするわ、こんなロクデモない体質になるわ……。
更に、僕の他にも転生者や転移者が、この世界には何人か居て……どうやら、僕は転生者・転移者としては「外れ」だったらしい。
もう……僕の存在価値は……聖女様を守る事だけ。
でも、その聖女様も守れなかった。
『あと、私がお前の立場だったら……この状況では、あの女を逃がす事を最優先にするね』
サイコ女の当然の指摘が脳裏に蘇えり……。
あ……少しだけ食事の味がマシになった。
ダラダラと流れる涙と鼻水が食事にかかり……ほんの少しだけ塩味が増した。
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