(14)
「
「はいいいいッ‼」
って、この宿屋の娘、本当は何者だよッ⁉
この世界、こんな訳の判んね〜糞強いのが、一般人のフリしてるのがフツ〜なのかッ⁉
僕は大剣を手にして……
「ばががぁ〜ぞのげんあづで、おばえのいばじょがわがっだ
あっさり避けられた。
そして……宿屋の娘の口から……いや、もう、どこが口か判んないような
そして……抜けない。
宿屋の娘に避けられたせいで……床だが地面だか……ともかく何と呼んだらいいか判んないゴミの山に刺さってしまった剣が……。
「うがあああああッ‼」
でも、僕はチート能力持ちの転生者の筈だ。
何としても……。
抜けた。
力づくでやれば、抜けるんだ。
信じれば、必ず願いは叶う。
正義は常に勝つんだ。
でも……。
残念なお報せが1つ。
どうやら、この世界の物理法則は……元の世界と似たよ〜なモノだったらしい。
剣が抜けた反動だか勢いだかで……僕は後ろに転び、尻餅を付き……。
「うげっ……」
そして、剣も手から抜け……誰かに命中……したらしく……男の悲鳴が……。
スナガだといいな♪
「き……きさま……せっかく……たすけて……やったのに……」
あっ……。
声のする方を見ると……僕の大剣が胴体に突き刺さったせいで、どう考えても、助からないような傷を負った自称・医者。
「お……おのれ……これでも……くらえ……」
えっ?
自称・医者は……最後の力をふりしぼって……僕の方に、例の白人化薬を投げ……。
「あ……あじいいいいッ‼」
命中……毒が入ってた瓶が割れ、僕の顔面に、白くてドロドロして独特の臭いが有る液体がBUKKAKEられ……。
そして、反対方向からは……僕の悲鳴に反応して……もう、ホントに生きてる人間なのか、実はゾンビか何かと化してるのかも判んない宿屋の娘が、ジリジリと……。
「うわああああ……」
僕は、自称・医者の体が突き刺さったままの剣を取ると……横殴りに……。
あ……。
大剣の起こす剣風を察知した宿屋の娘は……飛び上がり、あっさり回避。
「えええええ?」
そして、大剣に飛び乗り……。
どげしッ。
僕の顔面に、宿屋の娘の
僕は……再び……倒れ……。
あれ?
息が出来……。
みしみしみし……。
宿屋の娘が僕の首を裸絞&僕の胴体を足で胴締め……。
どうやら……僕は……無意識の内に、この無茶苦茶にも程が有る宿屋の娘から逃げようとしていたらしい。
しかし、下手に背を向けたのがマズかった。
首と内臓が圧迫される嫌な感覚……気が遠く……ここで……。
死んでたまるかぁ〜ッ‼
ぶひゃひゃひゃひゃ〜。
その時、再び、火事場の馬鹿力が発動ッ‼
僕は、僕の首を絞めていた両手を無理矢理外し……。
「死ぃ〜ねぇ〜ッ‼」
続いて、足も外し……。
宿屋の娘を地面(と呼んでいいのか?)に叩き付ける。
顔面にパンチ・パンチ・パンチ・パンチ。
ドゴオっ‼
僕の拳が、宿屋の娘の頭蓋骨を叩き割り、脳に届いた感触……。
うげっ?
この状態で……股間を蹴られ……。
何で、脳味噌まで破壊されて攻撃してきやがるッ?
「この野郎がぁぁぁぁぁぁッ‼」
ドゴォッ‼
落した大剣を再び手にして……宿屋の娘の体を串刺しにした……。
ざまあみろ。
男に逆らう女は、こうなる運命だ……。
けけけけ……僕の完全勝利だ……。
まだ生きてたとしても、これなら、流石に動け……動け……動け……。
何だ……これは?
大剣の刀身に写ってる……この顔は……誰の顔……?
状況証拠からして……それは……僕自身の顔の筈だった。
でも……僕の脳は……その事実を認める事を拒んだ。
勝利?
これが……勝利なのか?
僕の顔の左半分は……元のまま。
でも……右半分は……。
これが……あの藪医者が作った……白人化薬の効果なのか?
それとも……たまたま、BUKKAKEられたのが……顔の右半分だったせいで、こんな事になったのか?
『でもね、本当の多様性ってのは色彩豊かな絵の具をパレットに並べる事であって筆洗いのバケツの方では無いんですよ。1つ1つは綺麗な色でも混ぜると汚なくなるんです』
あの糞間抜けな……自称・画家の脳天気な台詞が聞こえたような気がした。
でも……。
今の僕は……「色彩豊かな絵の具が並んだパレット」なのか?
それとも……「筆洗いのバケツ」なのか?
クソ……多様性なんて言葉は……ポリコレに毒された阿呆どもが言おうが、アンチ・ポリコレのマトモな人間が言おうが……クソなワードだって事だけは良く判った。
いや、「1人の人間の顔の中に多様性が有る」なんて状況は、狂ったポリコレ野郎どもも、正気の人達も想定してなかっただろうけどさ……。
けど、こんなの有りかよ……?
大事な事だから2度言います。
僕の顔の左半分は……元のまま。
でも……右半分は……緑っぽい金髪に……ライム・グリーンの瞳……白目の部分は異様に黄色みがかっていて、端の方にはドス黒い血管が浮かんでいる
そして……肌の色は……白……。
それも、元の世界の白人の肌の白さと言うよりも……
どうやら……宿屋の娘に切り裂かれたらしい口の傷は、雑に縫い合わされ、傷口はふさがっているが……傷跡がはっきりと残っている。
更に……僕の顔の上半分は泣いてるのに……下半分……特に口の辺りは……笑っていた。
不自然な笑みが……顔の下半分に貼り付いていた。
とっても、とっても、とっても、とっても、嫌な笑みだった。
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