(13)
「大丈夫ですか、
「あ……聖女様……こ……こ……ここは?」
暗い……臭い……湿気が凄い……どこだ、ここは?
「町の地下下水道です」
「えっ?」
「正確には……その中に有る我々の町だ」
闇に目が慣れて……確かに、地下のダンジョンのような場所。
正確には……すげ〜臭いドブ川が流れてるダンジョン。
そのダンジョンを流れるドブ川の中のゴミか何かが集って出来たような小さな「島」に僕は居た。
1DKぐらいの広さの……台所らしいモノや、何か良く判んないものが詰め込まれた棚まで有る「島」。
「と……ところで……誰?」
「医者じゃよ」
小柄で痩せた白人……まぁ、白人と言っても、元の世界の白人には有り得ないような……
金髪……と言っても緑がかった金色だけど。
頬は
瞳はライム・グリーン……白目の部分は異様に黄色みがかっていて、端の方にはドス黒い血管が浮かんでいる。
よく見ると、左右の目の大きさが違う。
格好は……ふんどしみたいな下着と、革のエプロンだけ。あ……一応、雑な作りの革手袋と革のサンダルも着けてるけど。
2〜3日は@#$が勃たなくなりそうな「裸エプロン」だ。
「医者?」
「ああ、大変じゃったぞ。太股の太い動脈を断ち切られていて、口は切り裂かれ、腹には刃物が刺さったまま、しかも、刃物の柄が折れて無くなっているので、体の中に入った刃を取り出すのも一苦労」
「え……えっと、どんな苦労をしたの?」
「まず、鎧を脱がせて、腹を切り裂き……」
「やめて」
「あ、すまんが、腹に刺さった刃を取り出す時に、肝臓をちょっとな……」
「待って……」
「まぁ、少しぐらい減っても大丈夫だ。当分は酒を控えろ」
「飲まない」
「あと、傷だらけの状態で、黴菌だらけの下水に落ちたんで……そっちの処置も大変だったぞ。お前の命を助ける為に、副作用の強い薬も色々と使ったんで……」
「あああああ……聞きたくない、聞きたくない、聞きたくないッ‼」
「お前、『自分に都合の悪い事は知りさえしなければ存在しない筈だ』と思ってしまうタイプか? 上の町の人間だったら、税金の催促状が来ても放っておくような奴だろ?」
思い当る事は山程有るけど聞きたくないッ‼
「と……ところで、何で、こんな所に?」
「お前が、この地下の町の天井を砕いてしまったらしい」
「
地上から見たか、地下から見たかで、この自称「医者」が言ってる事と、聖女様が言ってる事は同じなんだろう。
「ああ、そう……ところで……あの宿屋の娘は?」
「あっちを見ろ」
「え……?」
そこには、顔を何か固いモノで打ったらしい……ああ……。
ドブ水で汚れている以外は……あの宿屋の娘の着てた服にそっくりだ。
背格好も、あの娘とほぼ同じだ。
顔は……潰れ……。
とんだ「裸エプロン」で性欲が減退した後は……食欲も減退。
まぁ、こんな臭い所で、何か食物を食う気にはならないけど。
「あと……」
「ああ、お前の、もう1人の連れも生きてるぞ」
ちっ……。
あっ……舌打ちを聖女様に聞かれてないよね?
そして、自称「医者」が指差す方向には……妙にやつれた感じの……ん?
「お……おい、スナガ……お前、何食ってる?」
「あ……あの、これは……そこの藪医者に喰えって言われただで……喰ってるだけだ。オラの意志じゃ……」
「僕が訊いてる事に答えろ。何を食ってる?」
「あの……それは……その……」
「仕方ないだろう。精を付ける為だ。お前を助ける為に、体力を消耗したのでな……」
「僕が知りたいのは理由じゃない。あいつが何を食ってるかだ」
「そりゃあ……儂が間違って切り落してしまった
……。
…………。
……………………。
何が、どうなってんのか、さっぱり判らないが、理解不能クラスの異常事態が進行してる事だけは、はっきり判った。
「はあ? 何でだよッ?」
「だから、あいつが、お前を助ける為に、体力を消耗したからだ」
「だから、何が起きた」
「ぐはははは……」
えっ?
更なる異常事態が発生。
自称「医者」が狂ったように笑い出した。
いや、待て、元から狂ってて、今まで正気のフリをしてたのか?
「絶望しろ、傲慢な人間よ」
「へっ?」
「お前は人間を代表して、人間が我々を白豚と見下し続けた罰を受けたのだ。ざまぁ♪ ざまぁ♪ ざまぁ見ろッ‼」
「だから、何だよッ⁉」
「ぐははは……お前の体を流れる血は、最早、卑しい豚の血だッ‼」
「もういい、もういい、もういい。たのむから、まわりくどい言い方じゃなくて、あんたが何をやったか、僕の身に何が起きたか、簡潔に説明して」
「
ことばのひとつひとつのいみは……りかいできた。
でも……ぶんしょうぜんたいがりかいできない。
あ……なんか……めまいが……。
「でへへへ……これで……オラと御主人様は他人じゃねえだ。もう、血を分けた兄弟だ……」
あわわわ……。
ばばばば……。
じょ……じょうだんじゃない……なんで……こんなやつのちが……ぼくのからだのなかに……。
こんなきょうだいいやだ。あなきょうだいは、もっといやだ。
「見ろ、聖女を名乗る愚かな白雌豚よ。こいつは、我々の救世主などでは無い。他の人間と同じく、我々を見下しているのだ。その証拠に、我々の同族の血が、自分の体内を流れていると知っただけで、ここまで取り乱しておるッ‼」
「違います‼
「そうか……では、こいつは、これでも正気を保っていられるかな? 見よ、これが、儂が人生をかけて作った……
毒?
ああ、ようやく……理解出来る言葉が……ん? 毒?
「あ……あのさ、まさか、地震とかが起きた時に、井戸なんかに、その……」
「ああ、同族どもに治療費をまけてやる代りに、人間どもの町の飲料水に混ぜさせているがな。もっとも、濃度が低くなり過ぎて、効き目はイマイチだが……この濃度で、この量、そして、我々の同族から輸血を受けたばかりのお前なら、我々そっくりの醜い姿に変るだろう……げへへへ……お前は、これから、我々と同じ、白い肌に、金色の髪、そして青い目という醜い姿で生きていくしかな……な……な……」
「な……」
「な……」
自称「医者」の長台詞の途中で……当の自称「医者」を含めた僕以外の3人がポカ〜ン状態。
え……えっと……何が起き……ん?
ずるっ……。
3人の視線の方向を見たら……。
「あんた……医者なのに……死亡確認してなかったの?」
「あの状態で生きてるとは……誰も思わんわ……」
完全に顔が潰れてる……宿屋の娘がゾンビのように立ち上がり……。
「どうざんど……があざんのがだぎぃ〜ッ‼ ごろず〜ッ‼」
何が「父さんと母さんの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます