第19話 希望はどこにある 生まれ変わる瞬間
〜笹井七瀬の視点〜
七瀬は帰宅して考えた。栞に言われたことを。そして明人と本当に結ばれるためには自分自身が変わっていく必要があることを。そのためには世間の目を恐れてはいけない。良太にもしっかり謝って前に進まなければならない。
………今こそ生まれ変わる瞬間なんだ………
そう決心した。
「今度の日曜、良太が漫画返しに来るから」
「え!?」
楓にそう伝えると楓はびっくりしていた。しかし、七瀬の前向きな気持ちを応援してくれた。
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〜山口明人の視点〜
明人が目を覚ますと栞が部屋にいて言った。
「もう二度と七瀬ちゃんに会わないでね」
「え、なんで!」
「あなた、自分の状態わかってるの?七瀬ちゃんがあなたの鬱を受け入れられるわけないでしょ?あの子はそんなメンタル強くない。絶対に先に潰れる。明人を受け入れられるのは私だけなんだよ?」
栞はそう言って明人を抱きしめる。
「七瀬ちゃんを負担にさせちゃうから。本当に会わないで。もし会ったら私、本当に七瀬ちゃんのこと殺すから!刺すから!」
栞は本気だった。明人も栞が冗談で「殺す」等という言葉を使わないことを知っていたため、本気なのを理解した。
「だったらせめて七瀬にもう会えないって伝えたい。勝手にいなくなったらまた6年前と同じになるから」
「私がもう伝えてある」
「なんで!何で勝手なことを」
「そうしないと明人も七瀬ちゃんも壊れるからよ。お願い。私の言うことを聞いて、、」
栞は必死に明人に訴えた。不服ではあったが栞の本気の思いに明人は何も言い返すことができなかった。
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〜笹井七瀬の視点〜
日曜日になった。楓は空気を読んだのか、買い物に出かけてくれた。そして七瀬の家に良太がやってきた。
「久しぶり」
「久しぶり」
「元気だった?」
「まあ元気ではなかったかな」
「そっか」
「良太は?」
「まあYouTube活動をぼちぼち。最近動画みてる?」
「全く見てないなぁ。見れなくなっちゃった。キラキラしすぎてて」
「そっか」
気まずいのか気まずくないのかよく分からない空気が流れる。
「はい、これ!借りてた漫画!すっごい面白かった!」
「ほんと?気に入ってくれたら嬉しい」
「うん!すっごく気に入った!また読みたいって思った!」
次の言葉が出てこず、沈黙が流れた。
「俺たち、別れてるって事でいいんだよね?」
「そう、、思ってるけど」
「はっきりしてなかったなぁって思ってさ。俺も七瀬もきっぱり次に進むためにはっきりしておこうって」
「別れてるよ。私のせい、、本当にごめん」
七瀬は涙が溢れてきた。
「あ、ごめん!謝ってほしかったわけじゃないんだ」
「ううん。私が悪いから仕方ないの。周りが見えてなさすぎた。明人のこともちゃんと分かってなかった。あれからずっと引きこもってる。でもね、また仕事しようって決心したの。もう世間から逃げない。明人を支えるために私は働かないといけないの」
働く理由が明人のためという言葉に良太は悔しい気持ちを覚えた。しかし、我慢した。
「仕事何するの?」
「まだ決めてない」
しばらくの沈黙の後、良太は提案した。
「俺のとこで働かない?」
「どういうこと?」
「YouTubeの編集だよ!七瀬ならできるだろうし。それに世間の目も怖がる必要もない。ピッタリだと思うけど」
確かに名案だった。仕事がない七瀬にとって良い誘いでしかなかった。しかし、すぐに了承することはできなかった。やはり『元カレ』の元で働くということが七瀬を躊躇わせた。結局、後で答えを出すといってその日は別れた。
七瀬はその夜、必死に考えた。まずは良太との出会いを回想し始めた。
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〜七瀬と良太の出会い〜
七瀬はYouTube活動がうまくいってなかった。tiktokも同時にやっていたため、tiktokerの集まりに呼ばれた。そこで河原良太と出会った。出会いは本当にふとした瞬間だった。たまたま席が隣になったのだ。七瀬は心の中で自分とは違う世界に住んでいる人だと直感で思った。しかし、有名インフルエンサーとして活動していく以上、過去の陰キャな自分を変えていきたかったため勇気を振り絞って話しかけた。
「はじめまして!笹井七瀬です!」
「河原良太です!」
結婚予定のカップルユーチューバー、昔の恋人に再会する…! yama @yamu1222
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