第18話 本気で忘れるくらいなら泣けるほど愛したりしない
〜河原良太の視点〜
良太はシックスラインズとのコラボ撮影をしていた。七瀬がいなくなって以来、一人でYouTubeを続けている良太だが個人の人気は高かったので再生数はそれなりに取れていた。さらに世間からの同情の声も寄せられて良太の人気は高くなっていた。シックスラインズの他のメンバーにはまだ美波と付き合ってることを伝えていなかったが、撮影中でもこっそりと美波がイチャイチャしようとしてくるため、バレないかヒヤヒヤしていた。
シックスラインズのメンバーは七瀬を悪く言う人もいた。しかし、良太は七瀬のことは悪く言わないで欲しい、俺たちのことだからとお願いした。美波は複雑そうな顔で良太を見ていた。
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〜笹井七瀬の視点〜
七瀬は退院し、家で寝ていた。ネットのアンチやその他諸々の影響で外が怖くなっていたため、家から一切出ないようになった。楓はあまり自分を責めないようにと七瀬に言うが七瀬は自分の過去を反省していたため、あまり聞き入れなかった。楓の仕事行ってる時にたまに明人が来て七瀬と性行為をしたり、一緒にゲームやったりしていた。今の七瀬にとって明人と過ごす時間だけが唯一の救いだった。しかし、明人が急に来れなくなる日もあった。その時は七瀬は一人で何もせずに引きこもっていた。幸せなのかと聞かれたらそうではなかったのかもしれない。ただ今まで無理してきた反動なのだろうか、明人と一緒にいるだけで安心感を覚えた。
そんなある日。明人から連絡がきた。
『今度の日曜、借りてた漫画返しに七瀬の家寄りたいんだけど大丈夫?』
心の中で踏ん切りをつけなければならないと感じていた七瀬はそれを了承した。
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〜黒川栞の視点〜
栞は再び明人の家を訪れていた。飲み屋で茂さんに「好きになっちゃいけない人なんていない」と言われたことで自分の気持ちと向き合った結果、やっぱり自分はまだ明人が好きだと気づいたのだ。
_____ピンポーン
チャイムを鳴らす。明人はすぐに出てきた。
「久しぶり」
「久しぶり」
気まずい空気が流れる。
「最近どう?」
「どうって。別に普通だよ。」
「七瀬ちゃんとは?」
「会ってる。俺の脳が大丈夫な時は七瀬の家に行って色々してるよ。今日はちょっとダメな日で行けてないけど」
「鬱の症状でダメな日があってその日は家で何もできないくらいになることは七瀬ちゃん知ってるの?」
「いや、まだそこまでは伝えてない」
「言えるの?」
「いつか言おうと思ってるけど」
「いつかっていつ?」
「そんなの、、わかんないけど、、」
「七瀬ちゃんに心配かけるかもしれないけど言えるの?」
「何が言いたいの?」
「無理だよ明人には。6年前もそうやって逃げてたじゃん。今度だって鬱の症状、詳しく話すことはできないと思う。結局、明人のそういうの一番理解してるの私だからね?」
「無理じゃない。今度はちゃんと話すつも、、」
明人はそう言いかけてその場で倒れてしまった。栞は慌てて明人を支えて家に入った。そして明人のスマホを勝手に操作して七瀬にラインを送った。
『ごめん。鬱酷くなってきた。もう会えないかも』
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〜笹井七瀬の視点〜
七瀬は明人から『もう会えないかも』というメッセージが送られてきたことにより、いてもたってもいられなくなって明人の家に向かった。世間にバレないように軽い変装をして。
明人の家に着くと栞が出迎えた。
「久しぶりね。七瀬ちゃん」
「栞さん。明人は?いますか?」
「いるけど会える状態じゃないわよ?倒れたからね」
「大丈夫なんですか?」
「まあよくあることじゃない?今日は脳がダメな日って言ってたし」
「脳がダメな日?」
「え、知らないの?明人は鬱の症状のせいで一日何もできない日があるの。そういう日は無理させちゃうとさらに症状を悪化させちゃうから無理させちゃいけない。もし一緒に住んでいたらその症状が出てる日をちゃんと見極めて適切な対処をしないといけない。相手に気遣わせないために。あなた、そういうことできる?」
「何が言いたいんですか…?」
「明人はあなたの知ってる高校時代の明人とは違うの。今の明人は私しか扱えない」
「そんなの!わからないじゃないですか!」
「鬱の症状もロクに知らなかったくせにそんなこと言えるの?」
「これから知ってくつもりです」
「あんた、今、仕事してないよね?YouTubeの貯金だけで一生食べていけるの?明人は脳の状態のせいで仕事できない日もあるの。そういう時、あなたは明人を養ってあげることができるの?そしてそれを明人に負担に思わせないこともできるの?」
「それは、、」
「その覚悟がなかったらもう二度と明人には近づかないで」
突き放された。それと同時に七瀬には強い反発心が芽生えた。
「覚悟あります!」
「じゃあまずは仕事見つけることね。」
「わかりました。仕事見つけます。私、本気ですからね?」
七瀬はそう言い切って明人の家を後にした。
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