第16話 別に君をまた好きになるくらい君は素敵な人だよ
【登場人物紹介】
笹井七瀬(ななせ)…主人公。24歳。カップルユーチューバーをやっていて良太と結婚予定だったが自分自身を繕うことに疲れてしまう。そんな時に昔の恋人、山口明人と再会してしまい、気持ちが戻っていく。良太との結婚式当日に結婚式をブッチし、明人と会っていたことで大炎上。ネットの世界から姿を消し、良太との関係も解消された。
河原良太(りょうた)…七瀬の元カレ。高校時代、陰キャだった七瀬と違って根っからの陽キャ。七瀬とは結婚予定だったが結婚式当日にブッチされる。その後、同じユーチューバーの早川美波に告白されるも気持ちが落ち着くまで待ってほしいと頼む。
早川美波(みなみ)…グループユーチューバー、シックスラインズのメンバー。兼ねてから良太に好意を寄せていて定期的に相談に乗っていた。前回の話でついに告白をする。
立花楓(かえで)…高校時代から七瀬の友達で今は七瀬の同居人。昔の七瀬を知ってる数少ない人物。
山口明人(あきと)…高校時代の七瀬の元カレ。いきなり姿を消したが6年越しに七瀬と再会する。七瀬のことが忘れられず、栞からの告白は2回断っていた。
黒川栞(しおり)…ホームヘルパー。精神的に不安定になった明人を6年間サポートしていた。しかし、明人に恋愛感情を持っており、自分と付き合うつもりがないならもう会いたくないと言い、出て行った。
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〜笹井七瀬の視点〜
結婚式ブッチの大炎上から1ヶ月が経過した。七瀬は相変わらず引きこもっている。一応ユーチューバー時代の稼ぎが残っているのと楓と同居していたため、生活に困ることはなかった。明人が好きで良太と別れたはずなのに自分から明人に対して何かアクションを起こすことはなかった。明人の方からもネットの炎上を見ていたからなのか連絡してくることはなかった。
「あんたさ、今何がしたいの?」
「わからない。考える気力もない」
「でもずっとこのままでなんかいられないでしょ?」
「YouTube再開することはない。というかできない。あんな騒ぎ起こしたんだし。落ち着いたら仕事探すよ」
「それもそうだけど明人のことは?明人のことが忘れられなくて良太と別れたんでしょ?」
「そう、、だけど」
「じゃあ何かアクション起こしなよ。明人、人気者だし早くしないと取られちゃうよ?」
七瀬は悩んだ。あんな騒ぎ起こした自分が幸せになっていいのか悩んだ。それでも楓に背中を押され、明人を食事に誘ってみた。返事はオッケーだった。
甘かった。明人との食事は決行したが、七瀬は街行く人の目が凄く気になった。軽い変装はしていたが周りの人が自分を見て何かネットに書いているようだった。七瀬は炎上をきっかけに世間の人が全員自分の敵に見えた。
「大丈夫?具合でも悪い?」
「ん、大丈夫!」
「でも久々にまた七瀬とこうやって話せて嬉しい。スキャンダル出ちゃったから心配してた」
「迷惑かけちゃってごめんね」
「俺は大丈夫。そんな顔ガッツリうつったわけじゃなかったし。」
やはり会話中も周りの目が気になった。明らかに自分を見てる人もいる。絶対バレてると確信があった。それが原因で七瀬は過呼吸になった。明人はすぐに救急車を呼んだ。
目が覚めると七瀬は病院にいた。明人と楓が心配そうに七瀬をのぞく。
「私、どうして」
「倒れたからだよ。それですぐに救急車呼んで」
「そう。ありがとう」
「大丈夫?」
「多分。ストレスからなのかも」
「ゆっくり休みな。」
明人は七瀬の身体を触ってサポートする。楓は空気を読んだのか、病室を出た。
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〜立花楓の視点〜
楓が病室を出て少し廊下を歩いていると前から良太がやってきた。
「あ、良太さん?」
「あー!七瀬の同居人の楓さん!」
「何で病院にいるんですか?」
「ネットの書き込み見たんです。七瀬がカフェで過呼吸になって倒れて病院運ばれたって。病院まで公表されてなかったんですが近くの病院ならここかなって思って。心配で様子だけでもと…」
「行かない方がいいですよ?」
「え?」
「七瀬、今、元カレと一緒にいます。行ったらあなた、気まずいと思います」
「いや、元同じ仕事仲間として倒れたってのは心配で、、」
「七瀬のイチャイチャ見てあなたが何も思わないなら行ってもいいと思います」
良太はその言葉を聞いて病室に行くのを躊躇った。
「そうですよね。すみません。帰ります」
「やっぱりまだ未練はありますか?」
「断ち切ったつもりだったんですけどね。七瀬と元カレのイチャイチャ見たくないって思っちゃったからあるのかもしれないですね」
良太はそう言って病院から立ち去った。楓は良太の後ろ姿を複雑そうな表情で見つめていた。
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〜河原良太の視点〜
病院を引き返した良太は自分の家の近くの公園のベンチに座って考え事をしていた。
………吹っ切れたと思ってたんだけどな。七瀬が元カレとイチャイチャしてるの想像するだけで吐き気がしてくる。七瀬をまた好きになることなんてあり得ないと思ってたけど、、まだ好きだったんだな俺。七瀬をまた好きになるくらい君は素敵な人だったよ。………
「どうしたの?」
美波が通りかかった。
「あ、美波!何でもない。ちょっと考え事」
「そう」
気まずい空気が流れる。
「じゃ、私、もう行くね!明日も撮影よろしくね」
立ち去ろうとした美波に良太は「待って」と声をかけた。
「美波、この前の話なんだけどさ」
「え?ああ、、」
「俺と付き合ってほしい!」
「え!?」
………不誠実とかそんなのどうでもいい。七瀬を忘れるために俺は美波と付き合うんだ………
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