第12話 どうして二人出会ったの
明人の話を聞いて七瀬はしばらく言葉が出なかった。何と声をかけていいのかも分からなかった。
………知りたくなかった………
率直な感想だった。突然姿を消した理由を知ってしまったことで明人への熱が戻ってしまうことだけは避けたかった。今は婚約者までいるのだから。
「でもさ、別に気持ち戻るわけじゃないでしょ?今の彼氏のこと好きなんでしょ?」
「うん。だから今は明人は好きじゃない。」
明人は悲しそうな顔をする。
………何でそんな顔するの?………
「見つかったか?」
その時、良太が七瀬の元へ来た。
「うん。見つけてくれたの明人が」
「あ、ありがとうございます」
気まずい沈黙が流れる。
「じゃ、行こっか」
良太は七瀬を連れて花火大会へ戻ろうとする。七瀬は明人のことが気になって仕方なかったが我慢して後ろを振り向かなかった。
良太と花火大会の会場へ戻ると再び良太は仲間たちの元へ行った。良太は明人と会ってたことに対して何も聞かなかった。七瀬もそのまま楓と合流し、花火大会を満喫した。
家に帰ると七瀬はふと考える。もしあの日、明人の母親が自殺しなかったら今頃どうなっていたのだろう。もし当時から明人の悩みに気づいていればどうなっていただろう。そして…
………気付けなくてごめん。明人、そんなに悩んでたのにくだらないことで怒ったりしてごめん。信用させることができなくてごめん、、………
七瀬は何度も布団に包まりながら心の中で謝った。その様子を楓は心配そうに見ていた。しかし、七瀬に直接理由を聞くことはしなかった。
………こんな思いをするなら初めから出会わなければよかった。再会しなければ良かったよ。恨むよ、神様………
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〜山口明人の視点〜
明人は七瀬に過去を全部話したことを栞に伝えた。
「え!話しちゃったの?」
「うん。自分でも何故かわかんない。けど七瀬を見たら話したくなっちゃって」
「結局、苦しめるだけじゃん」
「そうかもだけど!」
栞は何も言わずに明人を抱きしめた。
「お願い明人。もう七瀬ちゃんには会わないで。明人も七瀬ちゃんもお互いにとって良いことないから」
「そんなこと言ったって。どうすれば、、」
「過去の恋を忘れる方法がね、一つだけある。それは新しい恋をすること。明人。私が忘れさせてあげる」
栞はそう言うと明人にキスをして服を脱いだ。
「しよっか?エロ…」
栞は明人を誘惑した。二人はそのまま身体を重ねた。
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〜河原良太の視点〜
花火大会の帰り道。良太は考え事をしていた。七瀬が明人と会って何を話していたのか。それがとにかく気になった。でも七瀬に聞いて苦しめたくなかったため、何も聞けないでいた。それが本当にもどかしかった。
「やっぱ不安なんでしょ?七瀬ちゃんの件」
美波が茶化す。
「そんなこと、、あるんだよなぁ」
「やっと素直になった!いいよ。私に話してみな!」
良太は公園のベンチで美波に不安な気持ちを相談した。
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〜笹井七瀬の視点〜
翌日。撮影の休憩中に七瀬は美波に話しかけられた。
「ねえ、七瀬ちゃん、良太のこと今どう思ってる?」
「え?どうって?」
「結婚。前向きに考えてる?他に邪念とか一切入ってない?」
「も、もちろん」
「ならいいけど。私、良太のこと好きだからさ。もし七瀬ちゃんが少しでも結婚躊躇っていたりとかあるなら私、奪うつもりだからね?」
いきなり美波にそう言われて内心ドキッとした。それでも七瀬は良太と向き合うと決めていたため、はっきりと答えた。
「そんなことは絶対ないから。私は良太のこと本気で好き。良太とはお互い高め合える良いパートナーなの。YouTubeでもプライベートでも。だから絶対結婚する。渡さないからね」
美波はそれを聞いて少し笑った。
「よかったぁ!それ聞けて安心。お幸せにね」
美波はそう言って立ち去った。一人になった時、美波は少し複雑そうな顔をした。
その日の夜。七瀬は良太に次の休みの日、結婚式場を決めるために一緒に見に行こうと言った。さらに指輪も買いたいと話した。七瀬は明人の過去を聞いた後でもちゃんと良太と向き合うと決心していた。
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