第37話 光の弾丸

「ハエはミー達、ワイルドガンズがなんとかしマース! 今のうちにコアへ行くデース!」

「ありがとうグレース!」


 凜音達はワイルドガンズの援護を受け、雄しべに向かって飛行する。

 あともう少しで取り付けそうというところで、突如ツタが伸び、凜音達全員の体に絡みつく。


「まずい蜜の中に落とそうとしてます!」


 モカとバニラはロケットブースターを全開にしてツタを引き千切ろうとするが、植物とは思えないほど強度が高く一本も千切れない。

 凜音と律はスカートの下に装備しているナイフを抜き、肉感のあるふとももを締め上げているツタを切ろうと試みる。


「かった! なにコレ全然切れないんだけど!」

「ナイフの刃が欠けました。金属ワイヤーより頑丈ですよ、このツタ!」


 ブースターがパワー負けし、ジリジリと蜜の中へと引きずり込まれていく。


「まずいです、引きずり込む力の方が強いです!」

「こ、高度が維持できません!」

「無理しないで、蜜の中に落ちたって泳いでいけばいいんだから」


 その時、凛音のスカートのポケットからスマホがこぼれ落ちた。

 蜜沼の中にポチャンと落ちたスマホは、ジュッという音とともに白い煙になった。


「「「「…………」」」」

「やばい、あれ蜜じゃない! 消化液だ!」

「ほんとに食虫植物じゃないですか!」

「お、落ちます……」


 モカとバニラのロケットブースターがオーバーヒートしかかっており、けたたましい警報が鳴り響く。

 このままじゃまとめて落ちてしまう、凛音は全員落ちてしまうくらいなら、自分がなんとか雄しべに飛び移って重量を軽くできないか考える。

 その意図に気づいた律が大きく首を振る。


「凜音先輩、ダメですよ。まだおしべまでは15メートルくらいあるんですから!」

「このまま落ちて死ぬくらいならやらなきゃ! スーツの力があればあれくらい飛べる!」

「私達足にツタが絡まってるんですよ! ジャンプした瞬間引っ張られて、消化液の海にドボンですよ!」

「でもやらなきゃ!」


 意を決して飛ぼうとした時、彼の声が響く。


「凜音飛ぶなよ、お前の体重じゃその距離は飛べん」

「誰がデブだって! ……パパ!!」


 遅れてきた結城がロケットブースターを使って、彼女たちの元に猛スピードで飛行してきていた。


「凜音ナイフ貸せ!」


 凜音がナイフを放り投げ、結城は空中でキャッチ。

 刃に雷の力を与えると、ナイフは元からそんな機能があったかのように、レーザーブレードの如く光り輝く刀身が伸びる。

 青白い輝きを放つ光剣は、高電圧を帯びヂヂヂヂヂと唸りを上げる。


「プラズマカッター!」


 結城は金属ワイヤー並みのツタをやすやすと切り裂く。

 自由になったモカとバニラは、即座に高度を上げる。


「パパ遅いよ!」

「すまん、ブースターでトラブってた」


 メタンフラワーは、よくも獲物を逃がしてくれたなと今度は結城を襲う。

 彼は追ってくるツタを、稲妻のような直角的な空中軌道でかわし、襲い来るツタを青の光剣で容赦なく切り払っていく。

 本当に前世は鷹だったのではないかと思うほどの空中軌道を見せ、凜音達は感嘆の息をつく。


「パパすごっ……」

「あれだけの空中戦をできるヒーローなんて、見たことありません……」

「律、コアは!?」

「そ、そこの雄しべみたいな奴の中です! でも解析によると、コアは凄く硬い外皮で守られてて並の攻撃じゃ歯がたちません!」

「なら俺の電気で……」

「ダメです、強い電気で攻撃すれば電気エネルギーが細胞を伝って爆発します!」

「導火線みたいな奴だな!」

「なんとか攻撃による電気エネルギーを遮断しないと……奴の細胞組織を凍らせられれば引火はしないかも」

「なら凛音出番だ、お前の力で雄しべを凍らせるんだ!」

「で、できるかな」


 凛音は雄しべに向かって、両腕を突き出し最大出力で氷結能力を使用する。

 だが威力が足らず、完全に凍るには至らない。

 律はサードアイで、メタンフラワーの温度が下がっていないことに気づく。


「ダメです内部温度上昇! 凜音先輩の能力だけじゃ足らないです!」

「無理だって質量が大きすぎるもん!」

「ミー達に任せなサーイ!」


 意図に気づいたワイルドガンズが、グレネードランチャーから次々に液体窒素弾を打ち込む。


「凍れーー!!」

「全弾持っていきなさーい!」


 パワー全開の凜音のアイスブリザードと、グレネードを両手持ちして連射するグレース達ワイルドガンズ。


「ダメです、まだ足らない……」


 コアの内部は依然として熱が残っている。

 その時、ヒュンヒュンとヘリのローター音が響く。


「ふははははは! やぁ貧乏人、貧乏人らしく戦っているかね!」


 マイクで大声で叫ぶのはオーヴェロン。

 彼は逃げたと聞いていたのに、なぜこんなところにいるかわからず結城は面食らう。


「お前逃げ出したんじゃ?」

「はーっはっはっはっは僕が逃げ出す? 冗談はよしたまえ、僕はヒーローを束ねるオーナーだぞ。今さっき新たな戦闘ヘリを20億で買ってきたところさ! そして、これが1発3000万する液体窒素入りミサイル、ホワイトファングだ!!」


 オーヴェロンはヘリからミサイルを8発発射。

 雄しべに全弾が突き刺さり、氷の牙を突き立てるようにカチカチと凍結させていく。


「どうだ、これが2億4千万の力だ! 鏡魔だろうと金の力には勝てんのだよ! はーっはっはっはっは!」


 しかしメタンフラワーも最後の力を使い、弾丸シードでヘリを撃ち落とす。


「ぐわあああ20億のヘリがあああああ!」


 再び旋回しながら墜落していくが、オーヴェロンはパラシュートで脱出した。


「パパ、コア内内部温度マイナス180度! これなら電撃を使っても引火しません!」

「オーヴェロン、いい仕事したぞ。お前もヒーローだ」


 結城はコアが凍結しても、自動で襲ってくるツタを切り払い、己の速度を加速させる。

 光纏うその様はまるで雷光のようで、無限湧きするツタですら動きを捉えられない。


「すまない葉山教授」


 鏡魔に寄生された、なんの罪もない彼を殺めることへの謝罪。

 握りしめたプラズマカッターが出力を上げ、青い光を放つ。

 結城は光剣を突き出すようにして更に加速。己の体全体を光り輝く弾丸にしてコアへ突撃。


「いけええええパパー!!」

「やっちゃええええ!!」

「ゴーゴーレッツゴー!!」

「うおおおおおおおおお!!」


 雷の翼がその背から伸び、雷鳥の一撃は体ごとコアを貫通。

 雄しべには人型の大きな穴が開いていた。

 コアを失ったメタンフラワーは、ゆっくりと黒茶色に変色して枯れていく。

 ツタたちも完全に機能を停止し、ヘビが頭を下げるように枯れ落ちていった。


「鏡魔ども、俺達ヒーローの勝ちだ」







――――

勝利して次回はエピローグ

次で多分書籍1冊分となり一区切りです。

こいつ怪我してるのに能力使いすぎじゃね?という感想は聞きたくありません。

あと正体隠す気あんの?という話も聞きたくありません。

(∩゚д゚)アーアーキコエナーイ

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