第31話 1級フラグ建築士
日が落ちかけた頃、追跡を終えたヒーロー達は、水着から着替えるため星宮ウォーターランドに戻ることとなった。
凜音達が駐車場に着陸すると、既に私服に戻った結城たちの姿があった。
「お帰り、メール見たぞ。うまくいったみたいだな」
「あったりまえじゃん」
「パパのアドバイス通りでうまくいきました」
結城はよくやったと二人の頭を撫でる。
「パパ、下着取り戻せた? ないとあたしスカートだから困るんだけど」
「私もです」
「いや、事故で全部燃えちまったな」
「そっか……こっちも下着ドロが逃げてる最中に全部落としちゃって」
「間の抜けた泥棒だな。まぁ水着のままで帰るしかないな」
「しょうがないな~」
「そうだ、パパアドバイスの中でわからないことがあったんですけど。水道管壊して道路凍結させるのはわかるんですが、もう一つのテレビを見るなというのはどういう意図があったんですか?」
「ん? あぁあれか、まぁまぁあまり気にするな」
「「?」」
二人が首を傾げていると、一緒に追跡していたSMガイズがやって来る。
「見事な逮捕劇だった」
「ありがとうございますSMガイズ。事故大丈夫でした?」
「ああ、あの程度なんともない。今度から木馬の頭が収納できる、可変式三角木馬カーを作ることにする」
「な、なるほど」
凜音はびっくりでどっきりメカみたいと苦笑う。
「これは我らが経営しているSMキャバクラと優待券だ。機会があれば来るといい。君達はいい女王様に……いや、君等二人共マゾか」
「「違いますから!」」
「フフフ、数々のマゾを見てきた私が言うのだから間違いない。そちらのオーナーが飼い主かね?」
「「違いますから、もう帰って!!」」
SMガイズは無理やり優待券を手渡し、三角木馬カー2号機に乗って去っていった。
「ヒーローって変な人多いですね」
「全くよ」
二人が性癖バラすのやめろと怒っていると、報道カーから矢車が降りてきた。
「ヒーロー! 良かったわ、凜音たちとスカイバニーのチェイス。迫力があって最高」
「そりゃ良かった」
「神村オーナーとグレースのライブ映像は視聴率爆上がり。私の下着を盗まなかった下着ドロにキレそうになったけど、これだけ数字稼がせてくれたから感謝してるわ!」
「えっ、パパライブしてたの?」
「してないしてない」
「見たい見たい! ネット上がってますか?」
「今夜のヒーローハイライトに上げるから、楽しみに待ってなさい」
「「はーい」」
矢車はご機嫌でテレビスタッフの元へと向かう。どうやら結城の命も今日の夜までらしい。
なんとか事務所のテレビぶっ壊せないかなと考えていると、ウェスタンハットのカウガール姿のグレースが現れる。
「ヘイ、ガール」
「グレースさん、お疲れ様です」
「聞いたわ、下着ドロ捕まえたって」
「グレースさんも活躍されたって聞きました」
「イエース、ミーとユーキのスーパーコンビで逮捕したわよ」
グレースが陽気に結城と肩を組むと、凜音と律がちょっと離れてもろて、乳当てるのやめてもろてと引き剥がす。
「ミー達のチェイス、今日の夜放送らしいから見てね」
「「絶対見ます!」」
「あー凜音、律、今日は飯食いに行こうか。多分矢車さんからボーナス貰えると思うし」
「じゃあピザとか頼んで事務所で食べようよ」
「いや、外に食いに行こう外に。テレビのある場所から離れよう」
「パパ、我々貧乏なんですから、そんな無駄遣いしちゃダメですよ。事務所で食べましょう」
「あっ、どうしますグレースさんも来ます?」
「いいのかしら?」
「「どうぞどうぞ」」
結城は、なんとかテレビを見させないように試みるがどうやら無駄のようだった。
しかも当事者のグレースまで一緒に食事をとることになり、もはや笑うしかない。
「あ、あの……」
話を終えるタイミングを待っていたのか、スカイバニーのモカとバニラがおずおずと近づいてくる。
「あ、あの……グレースさんから、わたしたちの指輪はオーナーさんが持っているかもと」
「あぁあるよ、これだろ?」
結城は2つの指輪と、ウサギのぬいぐるみを取り出す。
「「それです!」」
「これがなくなったら本当に我々どうしようかと思って」
「そりゃ良かった。なにかジンクスでもあるのかい?」
「はい、この指輪は運命の指輪なんです」
「ほぉ、運命の指輪とな?」
「ええ、この指輪にはお姉ちゃんのおまじないがかかっていて、我々の運命の相手が触れると光るようになってるんです」
「それは面白いね」
「いつかこれを光らせてくれる人がいると信じて、大事に10年以上持ち続けているんです」
「そりゃ大切なものだ」
結城はバニラに指輪を手渡す、その瞬間ピカッと指輪が輝いた。
「「…………」」
「ゆ、夕日で光ったように見えただけだよ」
「で、ですかね? 気持ち青い光だった気がしましたが」
「気のせい気のせい。はい、モカちゃんこれ」
モカに指輪を持ったウサギのぬいぐるみを手渡す。
すると指輪とウサギの目がピカッと光った。
わりと言い逃れできないレインボーの光り方をする。
「……このぬいぐるみは、そういうギミックがあるのかな?」
「な、ないです……ただこのぬいぐるみは、わたしの能力を浴びているので指輪と同じ性質をもっちゃったかも……」
「「…………」」
10年沈黙を続けた指輪があっさり光り、モカ、バニラ、結城の間に変な沈黙が流れる。
「ご、ごめんなオッサンが光らせて」
「「い、いえそんなことは!」」
バニラが気まずさを打ち消すように、声を張り上げる。
「オーナーさん何か欲しいものありますか? 感謝の印として我々なんでも差し上げますよ」
「ミーもよ、なんでも言っていいわ」
「パパ、常識の範疇でね」
「わかってるよ。そうだな……君等のスーツの秘密が知りたいかな」
「こ、これですか?」
「そう、そのバニースーツ。具体的には価格とかサイズとか、製造会社とか」
「ユーキ、そんなのでいいのかしら?」
「えっ、いいのか?」
「で、では後ほど着替えましたら」
ヒーロースーツの情報って、普通シークレットだと思うのにいいのだろうか?
バニーとカウガールは、一旦更衣室へと戻った。
そして数分後、私服に着替えたバニーは紙袋を結城に手渡す。
「「ど、どうぞ」」
「なにこれ?」
「スーツの秘密です」
結城が紙袋を漁るとバニースーツが出てきた。
生地を確認してみるも、ごくごく普通のバニースーツ。
「あれ? もしかしてこれヒーロースーツじゃない?」
スカイバニーたちは、今日は腰部ロケットブースター以外はごくごく普通のバニーコスチュームで来ていた。
これではただ着ているバニースーツを要求した変態である。
「ユーキ! ミーのもあげまーす!」
グレースからも紙袋を受け取ると、彼女の着ていた赤い水着が入っていた。
「「パパ?」」
「違うぞ! 俺はスカイバニーの飛行スーツがどんなのか気になって言っただけで!」
「「パパ?」」
「そんな目で俺を見ないでくれ!」
その日の夜、結局グレースとスカイバニーたちも呼び、事務所で祝勝会が開催される。
お待ちかねの下着ドロとのチェイスシーンがヒーローテレビのハイライトで放送された。
おっぱいリロードからグレースにキスされるところまで全部映っていた為、凛音と律が反抗期に突入。
ご機嫌取りに、焼けてしまった下着の購入を一緒にするという約束をとりつけられてしまうのだった。
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